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【練習記録】1000字程度のショートショート

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書くことを習慣にしたい。 1000文字前後で書く練習のショートショート。 ■ 練習作品のテーマにはお題サイト「腹を空かせた夢喰い」による100セットお題を引用しています。htt…
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2023年10月の記事一覧

13、「見えないでしょ?」「見えるよ

 田舎のショッピングモールとは思えない盛況具合に軽く目眩がする。今日は日曜の朝に放送して…

三山 重
8か月前

12、ガスマスク越しに空を眺める

 パジャマを脱いで、制服に腕を通す。前髪を整えて、薄くリップを塗る。先週からコンタクトに…

三山 重
8か月前

11、キーボードを叩き割る勢いで綴る

「読まれた!」  ラジオネーム『影踏み単語』の名前がイヤホンから流れ込む。僕の名前だ。心…

三山 重
8か月前
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10、アイの輪切り

 見た目や行動は人間と遜色ない。食事は必要ないが、同じように食べ物を体内に取り込むことが…

三山 重
8か月前

【短編小説】 隠して

 隣の席の藤森菜々子さんはマスクを外さない。学生証の集団撮影の日はお休みで別日に撮影だっ…

三山 重
8か月前
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9、拒食症とカニバリズム

 爪を噛む。親指から順番に噛んでいたが、中指のターンでぺり、と音がして長く伸ばしていた爪…

三山 重
8か月前
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8、固まった絵の具と君の心を解く方法

 放課後の美術室には絵の具の重く甘い匂いが沈んでいる。窓を開けると風が匂いを床から持ち上げ、埃と混じる。たまらなくなって廊下へ続く扉を開けると同じクラスの七瀬と目があった。  美術室は校舎の中でも少し離れた場所にあり、美術室に用事がない生徒がここにいるのはかなり珍しい。部員の誰かに用事があるのだろうかと考えたが、生憎今日は部活が休みの日で、そんな日にも絵を描きたい病気に苛まれている私しかここにはいない。 「何しているの」  見つめあうのも気まずくて、ただ疑問をぶつけたが

7、焼却炉で見た夢

 お別れなんだと思ったのは、一ヶ月経ってもLINEに既読がつかなくなってからのことだった。少…

三山 重
8か月前
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6、〇〇を□□とするならば

 もしもの話である。  頭に「仮」がつく話をどこまで鵜呑みにすればいいだろうか。  明日…

三山 重
8か月前
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5、マスクに隠した劣情

 隣の席の藤森さんは、新学期の直前に左足を骨折して入院していた。聞けば階段から落ちたらし…

三山 重
8か月前
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4、ほんとどうしようもない

 左手に指輪の痕を見つけたのは、二時間前のことだった。指輪を着けている姿なんて見たことが…

三山 重
8か月前
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3、ありがちなおはなし

 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは山へ芝刈りに、お…

三山 重
8か月前
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2、個性。

 僕は身体の形がほとんど存在しない状態で産まれた。肉体が十分に形成されることなく、どろど…

三山 重
8か月前
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1、楽しくて死んでしまうわ

 頭の奥がきゅうとなって、じわじわと指先の感覚がなくなっていく。心臓の音がうるさくて、かき消すように大きな声を出した。全身がふわふわと軽くなって、羽が生えたみたいだ。目の前がちかちかしてキラキラして綺麗。これが現実だなんて嘘のようだった。 「気持ちいいでしょ」  マサトの声がする。私は「うん」と答えたはずだったけれど、なんだかよくわからない音になってマサトの鼓膜を揺らした。だらりと垂れた唾液がベッドを濡らす。昨日シーツを替えたばかりだったがどうでもよかった。 「マサトも