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私小説

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わたしがいて、虚構のわたしがいて、嘘に嘘を重ねて真実にたどりつければ、もしかしたら……
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記事一覧

私小説の終わり わたしの場合

 嘘か本当か知らない。しかし、ある有名な小説家が、三島由紀夫の作品には視点の乱れがあると…

Karla
1年前
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私小説 愛される条件、あるいは死刑台への階段

 愛される条件は、もちろん従順であることだ。言われたことには素直に従う。しかし、それだけ…

Karla
1年前
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私小説 先走る感情

 要するに感情の世界なのだ、福祉業界というのは。それも豊かすぎる感情の世界。それは何も男…

Karla
1年前
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私小説 檻の中の愛と性

 前の勤め先に就職が決まったとき、親戚が真顔でわたしに、大丈夫と訊いてきた。 「何が、大…

Karla
1年前
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私小説 真実の瞬間

 それはこんな感じで起きると思ってもらえればいい。  たとえば夜勤。あなたはひとりで就床…

Karla
1年前
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私小説 仮想の善人

「善意の搾取」という言葉を聞いたことがある人もいると思う。「やりがい搾取」ともいう。善意…

Karla
1年前
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私小説 出口のない家

 あるイメージがわたしの中にある。それは家だ。その家は日本中にある。その家にはサービスを受ける者とサービスを提供する者がともに暮らしている。一見、両者は異なるもののように見えるが、共通点がある。ともに家の外に広がる社会では生きることが難しかった者たちだという点だ。  その家には入り口はある。大きな入り口で、誰でも入ることができる。しかし、出口はない。自分が暮らし始めた家が嫌になれば別の家に移る。その家々に出口はないが、全て通路でつながっていて、外に出ることなく、別の家に移るこ

私小説 弱者に向かう怒り

 いったいどこからが虐待になるのか。そう質問をした障害者施設の職員がいた。その職員は、障…

Karla
1年前
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私小説 虐待と愛護の間

 この私小説を書きはじめたとき、私小説である以上、わたしのことを小説に書いてやれという思…

Karla
1年前
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私小説 わたしの体験 8

 しかし、虐待というのは、わたしたちの問題を相手にぶつけているだけだという気がする。とい…

Karla
1年前
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私小説 わたしの体験 7

 わたしは正しく、あなたは間違っている。人間が陥りやすい最大の罠。わたしはいつだって正義…

Karla
1年前
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私小説 わたしの体験 6

 剥き出しの人間関係。結局そういうことだ。福祉の世界にあるのは、それ以外には何もない。わ…

Karla
1年前
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私小説 わたしの体験 5

 繰り返すが、これは小説だ。現実の話ではない。私小説、私事を書いてはいても、現実そのもの…

Karla
1年前
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私小説 わたしの体験 4

 ひとりの職員が虐待を行なうまでに追い詰められる。と、このように書くと、虐待を行なうのは、職員の資質ではないかという声が聞こえてきそうだ。はっきり言っておくが、それをいうのは、障害福祉の関係者であっても、本当の意味で現場に出たことがない人間だ。  資質だけで虐待を起こすことはまずない。絶対に起きないということでは、もちろんない。危険な、暴力的資質を持った職員は、確かにいる。しかし、危険な資質をもった職員であっても、虐待はリスクが高いことを知っている。それは、傷害罪だ。しかも絶