ペルソナ5 ザ・ロイヤルのペルソナ図鑑を100%にして思うこと

2023年9月29日 15:34

佐倉惣治郎はヘッダーのように発言していました。主人公に言い聞かせているし、本人もそう信じて生きてきました。3月まで物語が進むと、彼も変化します。

ペルソナ5 ザ・ロイヤル（以下P5R）で、ペルソナ全書を100%にしました。やり込み要素はまだ尽きませんけれど、一つの目安ではあります。

所持金が786万1222円なのは、900万以上貯めて2周目に入ったからです。お金も装備も持ち越せるので。「水晶髑髏」は、なかなか出なくて苦労しました。宝魔と呼ばれる9種いる特殊な敵です

謎の転校生との一年の物語
普通は1人に1つのはずのペルソナを、切り替えて使用できるワイルドという素養を持つ
優しさや器用さなど、RPGの戦闘とは異なる、アドベンチャーパートで必要になる人間パラメーターで物語が変化する
ペルソナは心の力だから、他者との人間関係の構築も（タロットのアルカナごとに分類されたペルソナへ）影響を与える
周回要素があり、2周目で解禁される要素がある
偶然集まった仲間と、3月を迎えるまでにチームワークや信頼関係が育つ（多くの危機を共に乗り越えたから）

ペルソナシリーズの中興の祖、ペルソナ3はデザインと音楽や、成長システムや人間パラメーターなどの導入を行いました。スタイリッシュなデザインと、高いやり込み要素、複雑な戦闘など、現在のペルソナシリーズの根幹になっています。死を思うことや、大人の思惑の責任を少年少女が引き受けて跳ね除ける理不尽なストーリーも、支持を集めたと思います。

ペルソナ4は、ペルソナ3の路線を踏襲改善し、人気を不動のものにした作品だと思います。こちらは、「大人には分からない」と要約出来るかもしれません。都市伝説のようなマヨナカテレビの噂から、連続殺人事件を追いかけるミステリーが生まれました。

ペルソナ5は「囚人・囚われの身」がコンセプトです。主人公は、冤罪で前歴のある立場で、渋谷近くにある架空の進学校へ転校してきました。「傷害事件のマエがあってナイフを持ち歩いているらしい」と、噂を流され、身元を引き受けてくれた喫茶店のマスターは「マエがあるっていうのは、こういうことだ」と学校でのことを受け止め、物置きとして利用していた屋根裏で暮らすよう促しました。

頼りにできる大人は誰もいないし、学校に君臨している、元オリンピックのメダリストである体育教師に目をつけられ、退学を迫られます。

体罰や女子生徒へのハラスメントなどを、教師も親も生徒も黙認して従う環境だから、「マエのある少年」が対処できない状況です。

鴨志田の人物造形は見事で、「それは反撃するの無理ない」と、主人公達に感情移入しやすく出来ています。救いようがないし、自分の実績のために陸上部を潰しています。ハラスメント以外にも、問題のデパート。

ここに、転落した元陸上部のエースや、体育教師に関係を迫られているモデルの女子高生と、猫のような生き物（「ねーわ」と泣きます）が集まって、即席パーティが出来ました。彼らは、心の怪盗団として全国を騒がせることになる事件へと、飛び込んでいきます。

証拠を残さず、悪党の心の歪みの核（オタカラ）を奪うことで、罪の意識から悪党が改心して自白をします。
また、冒険をすれば、仲間も増えます。

P3から「総攻撃」はありましたが、P5Rはバトンタッチなども含めて、より戦術を豊かにしました。いかに、相手の弱点を突いて何もさせないかが大切。反対に、弱点を突かれると、一気にピンチになります。

降りかかる火の粉を払うこと、理不尽な現実を変える力を持った時に、泣いている人を放ってはおけないこと、戦う理由は様々です。抱えた葛藤も同じく。共通するのは社会に居場所がないこと。例えば、事故死した生徒を虐待していた保護者に強請られる教師、上司の医療事故を押し付けられた開業医、裏社会から足を洗いたいけれどしがらみがあるモデルガン職人、黒い噂のある資産家の一人娘で政略結婚を決められている高校3年生など、立場や状況は異なるけれど、多様な孤独や諦めの中にいます。

日中・放課後と、夜の2コマをやりくりして、冒険・人間ステータス上げ・コープ上げ（人間関係を育てるサブストーリー）を進めます。手帳が寄木細工やテトリスみたいになるし、容赦ないバッドエンドもあるので、２周目の引き継ぎ要素・強くてニューゲームが行えるのは、救済措置でもあります

諦めることはない、という化学変化を起こす触媒が主人公かもしれません。喫茶店で修行し、コンビニや花屋や牛丼屋でバイトし、政治家の演説の手伝いもし、挙げ句の果てには異世界と現実を繋ぐ場所の住人とも縁を持ちます。

前向きな良い話であり、爽快感もあります。だけど、P5で終わらせず、完全版のP5Rで「他者の心を変える力を、悪用せず、善意と理想で用いること」は、どういうことなのか、ユーザーに突きつけました。娯楽作品の枠の中で、ギリギリの表現だと思います。

思想信条や内面の自由や人の悪意の問題は、古代ギリシャの昔、それより前から議論され、今も哲学で答えが出ていないし、答えが出ない可能性もある問いですよね。そんな、身近な難解な問題を、インタラクティブに体験させることに、P5Rは成功しました。

ヤンキーだけど気持ちの優しい少年とか、容姿が整っていて目立つことで不利益を被る少女とか、大人の言いなりの生徒会長、そして訳ありの転校生など、記号や類型にならないように、注意深く生み出されたキャラクターが魅力的です。かつ、ダメで残念な大人達を描くことで、作品の輪郭がはっきりしました。

ペルソナ5がやりたくて、何年も待って、PS4とセットで買いました。2周目に入る前に、コントローラーが壊れて、放置していました。P5Rを0から遊びましたが、結果的に無印と完全版の両方を遊ぶことができました。

P5Rは、単なる反抗に終わらせず、大人を批判するだけではなく、非日常・超常・異世界の力を使った後で、きちんと、まともな大人の出番を描いた点も、本書の希望だと思います。Steam版があるから焦ることは無いですけど、今だと家庭用ゲーム機で選択肢が多いので、試すことを薦めます。気に入ったら、P4GとP3Pも安くなっているので、セットで是非。「良い奴ら」「良い子（聞き分けがいい・管理しやすい意味ではなく、心根の話）」が出てくるから。漫画とアニメもありますが、原作から入ることを勧めます。