空上タツタ

経歴:元女子大生→会社員→趣味で小説書く人。ここにはお酒飲んでる話ばかり書きます。こち…

空上タツタ

経歴:元女子大生→会社員→趣味で小説書く人。ここにはお酒飲んでる話ばかり書きます。こちらはネットで書いてた小説→https://mypage.syosetu.com/8026/ こちらはツイッター→https://twitter.com/sorauetatsuta?s=17

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「ヒモ女師匠とお守り役のボク」あらすじ

 強く、なによりも強くありたい。  窮地に追い込まれてそう願った日に、僕を颯爽と救ってくれた人がいた。  戦う彼女の強さはまっすぐで、輝いていて、「僕もこんな風になりたい」と強く決意をさせるに足るもので。その場で僕は、弟子入りをお願いしたのだった。  あれから1年。  あの日の師匠の輝きに、僕も少しは近づけたかと思ってたんだけど── 「稽古? 師匠二日酔いなの──うっぶ」  ──当の本人の方が、あまりにも耀きがくすんでいた。ていうか要お守り係で、それはイコールで僕だった。  

    • 「ヒモ女師匠とお守り役のボク」第3話

       右城蔵荘の入り口脇にある管理人室。名前札で「火枕沈」と下がっている。  沈が「月刊 秘奥伝」を読んでいる。表紙には『幻の伝書、見つかる!』『合法に熊と戦う方法』『冬場の滝修行スポットランキング』など変な見出しばかり。あくびしている沈。 沈 「番付、更新か」 「あいかわらずあの馬鹿はトップ」 「そんであの不出来な弟子は」 順 「ぐえっ」窓の外から響いてくる悲鳴 可耶 「はい順くん負け~」  沈が窓から見ると、空手着姿の男が正拳突きの姿勢であぜんとしている。視線の先には殴ら

      • 「ヒモ女師匠とお守り役のボク」第2話

         過去回想。1話目冒頭、弟子入りを受諾した直後。可耶が痛みを覚えた様子でうずくまる。駆け寄る順。 順 「! まずい、【点穴】を衝かれてる」 可耶 「……【点穴】?」 順 「いや、でも【死結】は逸れてる」可耶の問いを聞いてない、必死 「これなら死にはしない、けど……」申し訳なさそうな顔  話している二人の背後で、順の追っ手のうち一人だけが立ち上がる。 追っ手1 「武術家としての力の何割かは奪った、ぞ」  すっと目を向け、戦闘の意志を見せる可耶。しかし痛みではない違和感に

        • 「ヒモ女師匠とお守り役のボク」第1話

          順(──『死』に、追いつかれた。) (僕の命はもう、残り十数秒だろう)  脚に刺さる針を見て、須川順はそう思った。  地面にうつぶせになった小柄な身体は重い。ショートジャケットとシャツを着た胴からのびる七分丈のカーゴパンツを穿いた左太腿に、針が突き立っている。そこから這い回る茨のように神経図が全身へ伸び、彼の身体の自由を奪っていることを示唆する。 順 (【点穴】を衝かれた!) (神経がやられて脚が動かない) (全身も──重い) 追っ手1 「てこずらせおって」吐き捨てるよう

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          6本

        記事

          「ヘンゼルとグレーテル」事件

           私の飲み友達でヤバい奴だと待ち合わせ場所に現れて即挨拶すら抜きで「ごめん今日の飲み代貸して!」と金の無心をかましてきたウワバミ女とかがいるが、まあそれを除いてもけっこう大概な経歴の奴らが揃っている。  イカレたメンバー、紹介するぜ。 「8%のチューハイと6%のチューハイ飲んだから14%」と驚異の理論をぶっぱなした理系のF。 「吐いたら胃の中身が減ってまた飲める」リアルローマを体現したN。 「岐阜で飲んだあと電車で寝過ごして名古屋で降りられず豊橋へ。あわててタクシーで

          「ヘンゼルとグレーテル」事件

          平成初期までの「お祓い」および「拝み屋」のやり方を聞いた話

          むかし聞いた話だけど 本物のお祓い・拝み屋というのは大体が2人組で、その手法は「呪いがある」と深く信じ込ませてコトに当たる場合と「呪いはない」と否定してカウンセリングする場合の2パターンに分かれるそうな。 そして1人目として依頼人に当たった奴がそいつの性格・性質・傾向を見て「無い」と否定した方が良ければその場でカウンセリングをはじめる あるいは、1人目が既に「お祓いが生業のひと『らしすぎる』振る舞いをしていた」場合は2人目にカウンセラー役を投げて「こちらの方に依頼される

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          その場限りの関係だからと思うとテキトーなこと言えちゃうときあるよね

           以前バーで隣に座った女性から「さいきん友人がマルチかなにかにハマってしまったのか、ことあるごとに物を売りつけてくる」という話を聞いた。  ふんふんとうなずいていた私は思い付きで「じゃあこっちも同じことやり返してみたら向こうも気持ちがわかるんじゃないすか」と言った。  そう、たとえば 『――このグラスね、スピリッチュアルなパゥワーがエクイップメントされてて注いだ水を毎日テイスティングしてるだけで見る見るうちにエナジーがハイになってきてライフイズビューティフルになるの! 

          その場限りの関係だからと思うとテキトーなこと言えちゃうときあるよね

          設定だけつくって没にした話

          本の中の世界に行ったら外の世界の人間からはメタ視点で物語を見ることができた、という話 主人公  大罪者という人間たちを倒すため、この世界に呼び出された。裏通りにある怪しげな本屋で手に取った本〝ローリングサーガ〟の中に落ちる。現代日本で高校生してた。  スキル: 〝鋼玉の眼《コランダム》〟  熟語に好きなルビをふることができる。二字熟語にしかかけられない。一日三度の発動が限界。呪文には属性や攻撃方法攻撃範囲などを明記して正々堂々と相手に情報をさらして戦わねばならないが、これを

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          まだ出会ったことのない未知なる味との遭遇を求めている。

           新宿の「朝起」に行ってきました。  なにやらその筋では有名なお店のようで以前から気になっていたのです。  そう、基本的に私はこれまで食べたことのないものを頼む。  どんなときも最優先するのは好奇心。  なぜならそこには、まだ出会ったことのないものすごく自分に合う食があるかもしれないから。  適合食材かもしれないから。  めちゃくちゃおいしいかもしれないから。 「食べたことないなんて人生半分損してるよ~」とか通っぽいひとに言われるかもしれないから。  まあ実際「人生半

          まだ出会ったことのない未知なる味との遭遇を求めている。

          【創作】独断と偏見による戦闘シーンの書き方

          『……対決の時間がやってまいりました。実況は私、田中がお送りいたします!』 『解説の佐々木です。本日はよろしくお願い致しますー』 『ハイよろしくお願い致します』 『早速ですが今回、とくに前置きなどもなく戦闘シーンに入るようですね』 『そのようですね。疑似三人称視点でキャラが目覚めるところからです!』  近藤が目を開けると、そこは等間隔に無骨なコンクリート柱が立ち並ぶばかりの、殺風景な廃墟だった。  広くは、ない。大股で十歩も進めば、もう壁にぶつかるくらいだろう。影

          【創作】独断と偏見による戦闘シーンの書き方

          壁は走るものではなくよじ登るもの

           壁走り  といえば個人的にはやっぱ「マトリックス」だと思う。世代ですかね。  さて今日は壁よじ登るお話。  初挑戦したボルダリングの話です。  いつも行くバーのマスターに「ここのところ運動不足である」という旨を雑談の折に話したところ、「さいきんよくボルダリングやってるけど一緒に行く?」とお誘いをいただいたのです。  ボルダリング。  なんとなくどういうものかはみなさんも想像ついていると思います。  壁から出た突起物をつかんだり足場にしたりして上を目指すアレです。

          壁は走るものではなくよじ登るもの

          【掌編】契約

          「ああ、ひどい会社勤めで働くの嫌になったけどニートにも飽きた。もう現世に飽きた。寿命でもなんでも売ってやるからすんごい超能力が手に入るとか、そういう面白い話はないだろうか」 「お呼びかな」 「だれだよお前」 「悪魔だよ。契約の話っぽかったから出てきましたよ」 「おお、悪魔か。じゃあさっそく、寿命売るからすんごいのを頼む」 「了解です。じゃあ残りの寿命を5秒まで削るということで」 「ちょ、ちょっと待った。せめて1日は残して欲しい」 「1日残すなら時間を2秒止めると

          【掌編】契約

          お酒の味を通っぽく語ってカッコつけたい。

           好きなお酒の吟醸工房が豊田市の山奥にあるのを知ってて友人になにも伝えずそこまで遠距離ドライブに連れて行き、 「あ! 吟醸工房だって!」と、さもいま見つけたかのように振る舞い一目散に駆け込んで試飲をがっぱがっぱ飲みハンドルキーパーを押し付けたことがありますが、まあそんな話は関係なくお酒の銘柄っていろいろありますよね。  でも正直、お酒の味ってうまく覚えられない。  そもそも私はさほど鋭敏な舌を持っていないのだ。 『一度飲んだ味は忘れない!』とか『ハッ、これは〇〇の……!』

          お酒の味を通っぽく語ってカッコつけたい。

          掌編【切るキル見切る】

          「――――我は『切る』神だ。お前たち七人それぞれに我の能力の欠片として『なにかを切る』能力持つ刃物を与えた。存分に力を振るい、最後のひとりになるまで戦うがよい」 「クソ雑なデスゲームに巻き込まれた」「雑過ぎますわね」「もうちょっとなかったの?」「なかったんでしょうなぁ」「勘弁してほしいっす」「帰りたい」「……ぬふう」 「あーとりあえず現状把握するか。お前、お前は能力なんだった?」 「『大見得を切る』ナイフですってよ」 「ハッタリで勝ち抜くタイプか……お前は?」 「僕

          掌編【切るキル見切る】

          掌編【かっこいい女性の定義】

          「ねえせんぱい。わたし就活してるうちに思ったんだけど、かっこいい女性ってどんなひとかしら」 「そうだな……たとえば、」  二行連作  かっこいい女性 そのいち 物おじ 「物おじしない女性ってかっこいいと思うぜ」 「この辺りにカチコミかけられそうなとこあったかしら」 そのに 謎の過去 「謎の過去がある女性ってかっこいいと思うぜ」 「三年分の日記を書いてきたわ。脚色交えてるけど」 そのさん 勉強 「勉強出来る女性ってかっこいいと思うぜ」 「ねえいま気づいたんだけど、力と強

          掌編【かっこいい女性の定義】

          行きつけとか好きなお店ほど周囲に教えたがらなくなるのはなぜなのか。たぶん秘密基地気分なのだ。

             自炊歴が4年目に入ったこの頃、怪現象が起きました  朝目が覚めて冷蔵庫を開けると――知らない炒め物が入っている。  食べてみるとなんだか知らない味付けを感じます。  細君の味付けでもない。近所に住む我が母の味付けでもない。  まさか、私の知らぬ間にだれか家に上がってつくっていったのか……? と一瞬不安にさいなまれましたが、左手の指に残る真新しい切り傷がすべてを思い出させてくれました。  ――そういえばなんか、切ったような気がする――  と。  辻斬りを神速の

          行きつけとか好きなお店ほど周囲に教えたがらなくなるのはなぜなのか。たぶん秘密基地気分なのだ。