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「はじめに」を #全文公開 !『サッカー「BoS理論」』

ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法


ご好評頂いている
ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論「BoS(ベーオーエス)理論」(Das Ballorientierte Spiel:ボールにオリエンテーションするプレー)を説いた
サッカー「BoS理論」 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』(河岸貴 著)

ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した著者が、日本のサッカーの現状を直視しながら、「BoS理論」におけるボール非保持時の部分、「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」の道筋をつける。

本書「はじめに」を全文公開します!気になっている方は、ぜひご一読を!

はじめに

 もし、本書を手に取った方が日本のサッカーに満足しているならば、本書を読む必要はないでしょう。しかし、例えば、日本のサッカーと海外のサッカーの間にある歴然とした相違を感じている方には、その違和感の解消に役に立つかもしれません。
 私はこれまで何人かドイツのサッカー関係者を日本でアテンドしたことがあります。彼らがJリーグの試合を視察した際、攻撃には一定の理解を示すものの、彼らが口を揃えて言ったのは、「一体、守備はどうなっているんだ?」。私自身も一時帰国するたびに、同じような思いを抱いてきました。本書はそんな守備(ボール非保持時)への感情を綴った一冊とも言えます。
 「BoS(ベーオーエス)理論」は、日本人にマッチするサッカー理論だと確信しています。なぜなら、ボール非保持時では、11人全員が連動し、集団でボールを奪いに行くからです。お互いが協力し、規律正しく、集団行動ができる「フォア・ザ・チーム精神」を顕著に持つ日本人にとって、うってつけのサッカーではないのかと考えています。しかし、本書の1章でも記述したように、田中碧選手の言葉、「局所局所で1対1をしている」のが日本のサッカーの現状ではないでしょうか。
 2023年9月10日に行われたドイツ代表対日本代表の親善試合は、ドイツにとって22年のカタール・ワールドカップのリベンジを果たすべき機会でした。しかし、周知のとおり、結果は1対4で返り討ちにあっています。敗因の理由の一つとして、この親善試合の2カ月前に元ドイツ代表のバスティアン・シュヴァインシュタイガー氏が低調なドイツに対し、「我々は価値観を失った。他国は常にドイツ代表は非常に戦うチームであると認識していたし、我々は最後まで走り切っていた」とすでに指摘していたように、ドイツのサッカーの「基本的なプレー態度」が欠落していたことが挙げられます。この欠落は「BoS理論」の根幹を揺るがします。チームとして、チームのために戦い、そして走る。この基本的な態度は選手一人ひとりがプレーする前提として持たなければいけません。
 「BoS理論」は局面を攻撃と守備に分けず、ボール保持時とボール非保持時と捉えます。ボール保持時はみなさんの想像するいわゆる攻撃であり、またボール非保持時も「ボールを奪う攻撃」であるという大胆な切り口です。常に攻撃している状況、つまり「常時攻撃態勢」を基本としています。攻撃の目的は、当然ゴールを決めることであり、したがって、本書はボールの位置が相手ゴール近くにある場合のボールを奪う攻撃から解説しています。章が進むにつれてボールの位置は自陣ゴールに近づいていきます。サッカーは相手より多くゴールしたチームが勝つスポーツです。ゴールとは「ボールがゴールに入ること」。だからこそ、「ボールを中心に考え、サッカーをする」、それが「BoS理論」です。
 最後の8章は、季刊誌『フットボール批評』の休刊により、残念ながら連載に入れ込めなかったトピックを追加した章です。ボールロスト以前に考えるべき、実行すべきことなど、ボール保持時の攻撃の留意点について触れています。これはボールを奪う攻撃の前段階として非常に重要です。
 本書によって、ボール非保持時が決して守備というパッシブ(受動的)なイメージではなく、選手がダイナミックに、アクティブ(能動的)にボール非保持時を攻撃として楽しんでくれるようになれば幸いです。それでは、ボールを奪う攻撃の世界をお楽しみください!

河岸貴

「はじめに」

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