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神崎翼の創作小説

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投稿した創作小説をまとめてます。短編多め。同名義で「pixiv/小説家になろう/アルファポリス」にも投稿しています。
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#青春

はじめての味|短編小説

はじめての味|短編小説

 食事には厳しい家だった。
 礼儀作法は一般家庭レベルだったと思う。だけど、何を食べるか、何を飲むか、いつ食べるか、どう食べるか、そういうことにとにかく厳しい家だったのだ。
 健康への執着が激しい母は、あらゆる健康食品を食卓に並べ、本棚に健康食の特集が載った雑誌を詰め込むことを至上としている人だった。それとは真逆に食事に頓着のない父は出張続きなこともあり、食卓につくだけでご飯が出て来る環境を尊び、

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無意識ボーイズ|短編小説

無意識ボーイズ|短編小説

 これは私がファミレスで目撃した男子二人の話である。

 そのときの私は来週学校で行われる期末テストのためにファミレスで問題集に対して孤独な戦いを挑んでいた。お供はフリードリンクと山盛りポテトのみ。共に戦う予定だった友達は急遽バイトが入ったらしい。あの子テスト大丈夫なんだろうか。
 それはさておき。私が悠々と座っている四人掛け用の席から通路を挟んで反対側。同じく四人掛けの席で二人の男子高校生がいた

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透明なヒーロー|短編小説

透明なヒーロー|短編小説

 死のうと思ったことがある。
 誰しもが一度は考えたことがあると思う。私にとってはその日がそうだった。何もかもが嫌になった。逃げ場がなくて、でも一矢報いたくて、必ず人目に触れる駅で死ぬことにした。通学のためにいつも一人で通っている駅だった。何も関係がない駅関係者各位には徹頭徹尾迷惑なだけの話だっただろうけど、私は家族も、学校の人間も大嫌いで、助けてくれない他の人間もまとめて嫌になっていた。迷惑をか

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砂浜を歩く彼女|短編小説

砂浜を歩く彼女|短編小説

 夕陽が海面にまぶしい反射光を全面に散らして目も開けられないぐらい眩しい。というのに、知ったこっちゃないと言わんばかりに彼女は半端に足に掛かるさざ波を踏みつぶしながら砂浜を歩いていく。じゃりじゃりとした砂浜の上は不安定で、白くて細い足では真っ直ぐ歩くのですら大変そうだ。こちらは彼女の足元に波が来るたび攫われるのではないかとひやひやしている。だけれど彼女はそれもこれも知ったことかと、肩を怒らせて、よ

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