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無意識ボーイズ|短編小説

 これは私がファミレスで目撃した男子二人の話である。

 そのときの私は来週学校で行われる期末テストのためにファミレスで問題集に対して孤独な戦いを挑んでいた。お供はフリードリンクと山盛りポテトのみ。共に戦う予定だった友達は急遽バイトが入ったらしい。あの子テスト大丈夫なんだろうか。
 それはさておき。私が悠々と座っている四人掛け用の席から通路を挟んで反対側。同じく四人掛けの席で二人の男子高校生がいた。青いブレザーを着ていることから、おそらく隣駅の男子校の生徒だろう。テーブルの上には私の机と似たような有り様、つまり問題集や筆記用具、ノートや教科書に、フリードリンクらしきドリンクが二つに山盛りポテト、あとから揚げが載っている。まあ、そこまでいい。
 問題なのは、四人掛けの席なのに隣同士で体を寄せ合って座っているということだ。
 普通向かい合わないだろうか? 狭いだろう。ちなみに反対側の席は荷物置きになっている。ちなみにソファ席ではない。私の席もそうだが、四つの独立した椅子が向かい合って置かれているタイプの座席だ。真横に隣同士だと狭いだろうに。
 しかし、表情を垣間見る限りごく自然にノートを見せたり、問題の解き方について考えている。頻繁に「ここわからん」「まってほんとにわからん」とわからんという言葉が飛び交っているのには同じ立場としてエールを送りたいけれど、その以前になんかもう、距離が近いんだよお前ら!
 ふと、隣り合って、というかもはや密着してしていた男の片方、私から見て手前にいる方の男子高校生がテーブルの真ん中に置かれたから揚げを手で一つ摘まんだ。それを、まだ問題集とにらめっこしている方の口に放り込んだ。いわゆる「あーん」である。
 思わずシャーペンを握った姿のまま凝視してしまった。あーんである。隣り合って密着してあーん。お前ら実は恋人なのか?
 あーんされた方もごく自然に口を開けて、咀嚼しながら問題集を睨み続けている。あーんした方は自分の口にもから揚げを放り込んでから、同じく問題集に向き直った。恥ずかしがったり、特別リアクションは何もない。手を差し出されたから握り返したぐらい、ごく自然なやりとりだった。熟年夫婦か?
 男子校の男子ってみんなこうなのか? 本当に?
 そればかりが気になって、シャーペンが進まない。結局、その日問題集は半分も解けず仕舞いであった。

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即興小説リメイク作品(お題:無意識のボーイズ 制限時間:15分)
リメイク前初出 2020/05/19
この作品は(pixiv/note/小説家になろう/アルファポリス/カクヨム)にも掲載しています。

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