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神崎翼の創作小説

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投稿した創作小説をまとめてます。短編多め。同名義で「pixiv/小説家になろう/アルファポリス」にも投稿しています。
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#恋愛

木彫りのゴリラ|短編小説

木彫りのゴリラ|短編小説

 ここに2つのゴリラがある。2匹ではなく2つと表現する辺りで、日本では主に動物園に生息しているあのゴリラではないことは察してほしい。木彫りの置物だ。
 木彫りの熊ならまだしも、ゴリラである。謎にリアルタッチの木彫りの置物。夜中にリビングに置いてあったら条件反射でビビってしまう。泥棒避けにはいいかもしれないが、ごく一般家庭のインテリアにするには迫力がありすぎる。しかもサイズがデカい。高さにしておよそ

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最後は消費者金融|短編小説

最後は消費者金融|短編小説

 最近、友達がいなくなった。といっても、惜しい友達じゃない。いわゆる引き立て役? 暇潰しに遊んだことはあったけれど、泥棒の罪を擦り付けるのも、パシって何秒で帰って来るのか計る遊びにも飽きていたところだ。それに最近どんどん反応が薄くなってつまらなくなっていたから丁度良かった。また遊びたくなっても、次の「友達」を探せばいいし。
 そんなことよりも、聞いてほしい。好きな人が出来たのだ。本当にイケメンで、

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タンポポの花束|短編小説

タンポポの花束|短編小説

 初めて君に恋を告げた十の頃、渡せた『それらしい』贈り物といえば、道端で摘んだタンポポぐらいだった気がする。週に百円しかお小遣いのなかった時期だったし、そのお金もだいたいが漫画かガチャガチャに費やされては消えていた。そもそも、小学校のたった十分の休憩時間に運動場へ駆け出すような、遊ぶことしか頭になかった時代である。女の子に贈り物をしようと思ったところで、持っているのはほぼ空の財布と「女の子はお花が

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砂浜を歩く彼女|短編小説

砂浜を歩く彼女|短編小説

 夕陽が海面にまぶしい反射光を全面に散らして目も開けられないぐらい眩しい。というのに、知ったこっちゃないと言わんばかりに彼女は半端に足に掛かるさざ波を踏みつぶしながら砂浜を歩いていく。じゃりじゃりとした砂浜の上は不安定で、白くて細い足では真っ直ぐ歩くのですら大変そうだ。こちらは彼女の足元に波が来るたび攫われるのではないかとひやひやしている。だけれど彼女はそれもこれも知ったことかと、肩を怒らせて、よ

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