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VOL.23【 どうして売れないのだろう? 】 --- どうして「売れない」のだろう?---

「どうして(この商品は、この売場は、このセールスマンは)売れないのだろう?」という問題と、私は40年前からお付き合いが続いている。
 
売上を上げる企画を立てる。売れない売場の売上を上げる。売れない外商セールスマンの売上を上げる。という部署に40年前に配属されて以来だ。
 
しかし、普通の人たちが、この疑問をほとんど無視していたことも、身にしみてよくよく解っている。私は、よく似た疑問とも付き合ってきた。

「そのやり方で、本当に売れるのか?」
 
「どうしたら、本当に売れるようになるのか?」
 
「売れるパターンに持ち込む」
 
「これで売れるようになる」

40年前、百貨店のマーケティング(販売支援企画)部門に配属されたものの最初のころは「どうしたら売れるようになるのか?」まったくわからなかった。
 
35年前に「売れる実践マーケティング塾」というセミナーに半分身銭を切って参加したら「そのやり方で、本当に売れるのか?問い続けろ」という課題が出た。
 
「そのやり方で、本当に売れるのか?」その問いに「YES」と答えられないような仕事は「販売支援の企画」になっていない。つまり仕事になっていない。
 
周りの先輩や、上司に、その答を持っていそうな人がいたら、しっかり話を聞いて勉強してきなさい。その答を探すという半年を過ごすことになった。
 
実際に「そのやり方で、本当に売れるのでしょうか?」と聞いてみると、そんな質問はタブーだ。その質問をするのは「失礼」になると答える先輩もいた。
 
日本の企業は縦社会だから、目上の先輩や上司に「この質問」を大っぴらにしてはいけない。売れようが売れまいが、指示されたことを必死でやれば良い。
 
日本においては「売れない商品」を作ったり「売れない売場」を作ったりしても「必死にやりさえすれば、誰の責任でもない」というルールがある。
 
この「責任の所在を曖昧にする慣習」が「そのやり方で、本当に売れるのか?」という問題を「失礼」という別の次元の問題にすり替えてしまう
 
売れるということを、大っぴらに話題にしてはいけない世の中。そんな世の中で、私は、その「タブー」を題材にして、このnoteという場でレポートを書いているという話になる。
 
私も20年前まではサラリーマンをしていた。日本の企業においては、上司には絶対に逆らってはいけない。これは鉄則と言い切っても良い。
 
上下の立場の違い、権限の違い、言葉の強さの違いは絶対だ。だからこそ「ごますり」が横行して、迎合、忖度、妥協、忖度が、組織の中に蔓延していく。
 
数年前、ある大手中小企業の会議にオブザーバーとして参加することになった時の話だ。課長を中心に、その部署の人達がミーティングをしている。
 
結局「こうやれば、売れるようになるのではないか?」という私の提案に対して「それでは売れないに決まっている」ということを全員が言っている状態になった。
 
そこに「本部長」が登場して「こうやれば、売れるんじゃないか?」と、私の提案と、ほぼ同じ核心の意見をスッと言ってのけてしまった。
 
すると、たった今の今まで「私の提案したやり方では、売れるワケがない。絶対に売れない」と先頭を切って主張していた課長が、こう返事をした。
 
「やってみましょう。それをやれば売れるようになると思います。」
 
上司が言うことは、正しかろうと、間違っていようと、正しいのだ。正しくなくとも「正しいと考えるべき」というのが日本企業の当然なのだ。
 
上司が間違っているということが見え見えであっても「それは違う」「それでは売れない」などとは、決して口にしてはいけない。それが組織の掟だ。
 
こういう空気、雰囲気、風土の中からは「どうしたら売れるのか?」といった疑問を追求していく「発想」も「行動」も育ってはいかない
 
「こうしたら売れる」という提案をする人も出てこない。また「これじゃぁ売れない」と批判をする人も出てこない。そういうことを言うと「出る杭」になる。
 
「出た杭」は打たれる。これが「普通の社会環境」だ。しかしながら、私は非常に「幸運な部署」に配属されていた。当時、本当に珍しい実力評価の部署だった。
 
純利益=売上ー仕入れー固定費
 
この純利益が高い「企画(販売支援)」をした人が「高評価を得る」という実に単純明快な評価のある部署だった。数値はウソをつかない。数値=評価。
 
純利益の式は、もう少し詳しく分解することができる。なぜ?そんなことを考えたのか? 高い給料と高いボーナスをもらいたかった。理由も単純明快だ。
 
純利益=〈 売上 - (仕入れ+変動経費)〉- 固定費 - ロス

この式から、いろいろなことが見えてくる。

1)売上を上げる=チャンスロスを減らせないか?
 
2)安く仕入れて、高い価値をつけることができないか?
 
3)売れる呼び水となる変動経費を売れるところまで使っているか?
 
3’)売れないものに変動経費を無駄に使っているのではないか?
 
4)固定費の最大値は人件費。勤めているのに利益を生み出していない人がいるのでは?
 
4’)お金を生み出すのに、使わないまま放置しているモノがあったりしないか?
 
5)最大の無駄は「ロス・廃棄」。売れない商品・使えない備品があるのでは? 

この5つ から 7つのモノサシを持って「儲かっているところは やっているが、売れていないところが やっていない肝心なこと。」を探す。
 
「儲かっているところは やっていないが、売れていないところが やってしまっている余計なこと」を探す。そこを見つけ出していく日々の微差が、日が経つにつれ大きな差になっていく。

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