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ショートショート:「RPGと悪魔」

【前書き】

皆様、お疲れ様です。
カナモノさんです。
今回は〝悪魔〟と〝青年〟の何気ない会話です。
僕が生んだ物語の中で大好きな二人です。
少しの間でも、お楽しみ頂けていることを願います。
※こちらの話は、この作品とリンクしております。


【RPGと悪魔】

作:カナモノユウキ


『おいキツネ、教えて欲しいことがあるんだが。』
「……どうしたんだい、改まって〝教えて欲しい〟なんて。」
『そのな、〝ゲーム〟ってやつを、俺様にも教えてくれよ。』
「え、ゲームを?なんで?」
『お前さんが寝不足になる程やり込むってことはよ、相当楽しいんだろ?……俺様もやってみたいじゃねーか。』
……急にどうしたんだろう、人間の娯楽に一切興味を持つことも無かったのに。
『キツネさんよぉ、考えたことは俺様にも伝わるんだからな?』
「あぁそうだった、忘れてたよ。」
『もう三年も一緒なんだ、そろそろ慣れろよなぁ~。』
「いいかい心の悪魔、人間はそんな簡単に心を読まれることに慣れることは無いんだよ?」
『にしてもだなぁ~…まぁそんなことはどうでもいいんだけどよ、そのゲームっつーのはそんなに面白いのか?』
「面白いし…楽しい…かな、何だか別の世界を追体験してるみたいでさ。」
『ほぉ、追体験ねぇ~。今やってるゲームは何なんだよ。』
「〝RPG〟ってジャンルだよ。」
『なんだその〝RPG〟ってのは、何かの略か?』
「ロールプレイングゲームって略で、キャラクターを操って成長しながら物語を進めるゲームだよ。」
『ふーん。』
「ふーんって酷いな、君から聞いてきたんだろ?」
『だってよ、お前ら人間は日々成長する生き物じゃねーか。同じようなこと、ゲームにしてやって楽しいのか?』
「え、君ってそんな風に人間のこと見ていたの?」
『え!?人間てそういう生きもんだろ?』
……正直、そんな風に思って生きてこなかった……そうか、そういう考え方もあるよね。
『何驚いてるんだよ、当たり前すぎて忘れてたか?』
「いや、そう言うことじゃないんだけど。……君たちってそんな風に人間を認識していたんだね。」
『なんだよ、俺様たちの認識が間違ってるとでも言うのか?』
「いや、間違ってない。寧ろ正解過ぎて驚いてるくらいだよ。」
『まぁお前ほどの〝成長レベル〟ともなると、そんなことも気にしなくなるんだな。』
「その〝成長レベル〟って…何?」
『人間のレベルだよ、あーそうか!お前ら見えないのかぁ!』
「どういうこと?」
『俺たち悪魔は、人間の感情や経験値を見極めて取り付いたり契約したりすんだけどよ。それを見極めるために人間の成長レベルを俺たちは可視化できるようにしてんだよ。』
「へぇ……何か凄いね。」
『お前も見てみるか?』
「え!?見ること出来るの!?」
『おお、ホレ。』
 ―ポンッ―
「……何これ、メガネ?」
『悪魔の眼球を加工して作った、特性メガネだぁ。』
「え?……気持ち悪いな。」
『何だよ、見たくないのか?』
「……見たいから、頑張る。」
フレームが若干生暖かいのは……〝生きてる〟…のかなぁ……なんかドクドクしてる気がするし。
……おぉ、視界は意外とクリアだ。……鏡に写る自分の胸元に、数字が浮き出てる。
『その数字がレベルだ、キツネはスゲーレベルなんだよ。』
「……ごめんね、この数字が高いのか低いのか全然分からないんだけど。この〝260〟は高いものなの?」
『高いってもんじゃないぞ!普通の人間のレベルは平均50~100だからなぁ。そのレベルの人間は大体1000人に一人ぐらいで、俺たち悪魔でもめったに出会えないんだからよぉ。』
「へ、へぇ。」
『なんだよ!凄いことだろ!?』
「す、凄いんだろうけどさ……実際にレベルが高いとどう凄いのかが分からないからさ。」
『そうだなぁ、基本的にはそいつが供給できるエネルギー量が多いってとこが先ずスゲーかなぁ。身近に居んだろ〝一緒に居ると元気になれるヤツ〟、ああいう他人にエネルギーを供給できる奴がレベルが高い。あとは人生経験が豊富ってことかなぁ~、まぁキツネの場合は俺様と同居してる時点で経験豊富ってことだなぁ。』
「説明されても分かんないや、とりあえず僕は君たちの尺度で見ると凄いってことなんだね。」
『俺らの尺度じゃねーよ!コレは言わば神様が決めたスゲー数字みたいなもんだからな!』
「何でも良いけど……成程ね、こういう数値を見ながら人間を観ていたんだね。」
試しに映したテレビ番組に出演している人たち、みんな数字が浮かんでる…この人は〝86〟でこの人は〝46〟か。
「なんか、RPGゲームみたいだね。」
『だからよぉ、日常的にゲームみたいにレベル上げて生きてるお前たち人間が、それをゲームにしてやってんだろ?人間はやっぱ変だよなぁ、んなことして楽しがるんだからよぉ。』
「でも、君はゲームをやってみたいんだろ?」
『まぁな!俺はキツネが楽しむもんに興味があんだよ!』
「僕がやってるゲームは大半がRPGゲームだから、教えられるのはこれぐらいだけど……他のゲームにする?」
『いや!お前が楽しんでんなら俺様も楽しんでみたいだろ!RPGとやら!俺に教えてくれぃ!』
「分かったよ……アレ?ねぇ、悪魔にはレベルは無いの?」
『ん?俺らは成長とかはねーからな、そのレベルって感じのもんはねーよ。』
「そうなんだ……、でも僕の好きなものを知りたいとかいう気持ちは…〝成長〟とかって言わないのかなぁ。」
『それは……そうなのか?』
「僕はだけど、相手を知って学んで、関係を深める行為も…〝成長〟だと思うよ?」
『ん?……っつーことは、俺も成長してんのか!』
「まぁ、多分ね。」
『そりゃあいい!何か楽しいぞ〝成長〟!』
「フフ、良かったね心の悪魔。」
『成長がこんなに楽しいてことは、このRPGってゲームはそりゃ楽しいんだろうな!』
「うん、多分気に入ってもらえると思うよ。」
『そうかそうか!楽しみだなぁ~ガハハハハ!』
どれだけ長く生きて来たか知らないけれど、なんか……子供みたいだな。
あんまり考えてこなかったけど、〝成長〟っていい言葉だったんだね。
『当たり前だろうが!このレベルが高いってことは、どんな奴にも優しくできるってことなんだからよ!お前のその成長した優しさに、俺様は成長させられたって訳だな!ガハハハハ!』
「たまには、頭の中の言葉を拾わなくてもいいんじゃない?」
『イシシ、一人語り始めるお前がいけないんだろ?会話しようぜぇ、キツネさんよぉ。』
「そうだね。さぁ、ゲームやろうか心の悪魔。」
『おうやろう!』
……あ、悪魔のレベル見えた。
『え?マジ?』


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

RPGゲームの〝レベル〟って、現代に置き換えたらどういう感じになるのかなぁ~っていうのを自分なりに書いてみました。

レベルを考える基準が「何ができるか」とか「どれだけお金を持っているか」「スキルがあるか」より、「他者に何ができるか」というレベルの方が平和かなぁ~とか考えたりして。

それを悪魔が見極めているって構図に夢を感じて、このような話を妄想しました。

またこの二人で、色々お話書こうと思います。

次の作品も楽しんで頂けることを、祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


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