見出し画像

ショートショート:「僕と悪魔の同居」

【前書き】

皆様、お疲れ様です。
カナモノさんです。
今回は以前書いた気に入っている二人の話を書きました。
〝悪魔〟と〝青年〟の話で、何てことのない日常会話風ですが、
「どこか変であってほしい。」という妄想をしながら書きました。
少しの間でも、お楽しみ頂けていることを願います。
※こちらの話は、この作品とリンクしております。


【僕と悪魔の同居】

作:カナモノユウキ


『キツネさんよぉ、毎日飽きもせずによく妄想ばっかりするねぇ。』
「それが趣味なんだ、……別にいいだろ。」
『ふてくされんなよ。別に馬鹿にしちゃいねーんだぞ、俺様からしたらスゲーなって思ってるだけよ。』
「悪魔は妄想しないの?」
『妄想したら実現したくなっちまうからしねーな。』
「実現したくなるって、妄想は妄想でしょ?実現できないからするもんじゃないか。」
『おいおい、人間と一緒にするんじゃねーよ。俺様には実現できる〝力〟があるからな。』
「……そうなんだ。」
『おい、今心の中で〝変なの〟って呟いただろ!』
「あ、そうか。こういうのも伝わるのか。」
『当たり前だろ、俺様の今の寝床はお前の心の中なんだからよ。』
僕の同居人…いや同居悪魔は、僕の心の中に住んでいる。
この悪魔とは、僕が精神的に弱っているとき。
自殺未遂をした後に、夜中の公園で一人途方に暮れているときに出会った。
僕のどうしようもない心に住み着いてくれた、とても優しい悪魔。
いつもは実体化して、僕の部屋でサブスク三昧の自堕落な悪魔になっている。
『自堕落じゃねー!これが本来の悪魔なんだ。』
「ちょっと、勝手に人の心覗かないでよ。」
『仕方ねーだろ、聞こえてくるんだからよ。んなことより、依頼された記事は書けたのかよ。』
 「まだなの分かって言ってるだろ、もう少しで終わるから待っていてくれよ。」
『早く終わらせれよ~、腹が減ってペコペコだ。』
「何か適当に食ってればいいだろ、僕のことなんて気にせずにさ。」
『何言ってんだ、飯は一緒に食ってこそ意味があるんだぞ。』
「なんか実家の父さんみたいなこと言うな。」
『間違ったことは言ってねーだろ?待ってるから、早く終わらせてくれよ~。』
仕事を辞めて、思い切ってライターに転職してみたけど。
僕はマイペースだから、こう締め切りのあるような仕事……正直向いてないのかな。
気持ちが焦って、上手く言語化できないときがある。
はぁ……時間が止まったらいいのになぁ。
『〝時間を止めたい〟ってか、なら止めてやろうじゃねーか。』
「え?止められるの?」
『ああ、んなもん指鳴らすだけでお茶の子さいさいよ。』
――パチンッ――
「……止まったの?」
『ほれ、スマホ見てみ?』
「時計が止まってる……外は?」
――ガララッ――
すごっ、3階建てのアパートから見える外の景色。
夕方の買い物終わりの主婦とか、子供にカラスも静止してる。
『どうだ、スゲーだろ!』
「凄いけど……、熱いね。」
『そりゃどうしようもねーな、8月だし。風も止まっちまってるから。』
「……時間、動かしてもらってもいいかな?」
『ん?何でだよ、パパッとやっちまえば良いだろ?』
「……熱いの嫌だし、そんなズルで書いたらまた甘えてしまいそうで。」
『何と言うか、真面目だねぇキツネは。』
――パチンッ――
おぉ、皆いっせいに動き出した。
悪魔って、本当に何でも出来るのか。
何か漫画に出てくる猫型ロボットみたいだ。
『おい、ドラえもんと一緒にすんじゃねーよ。』
「どう考えてもドラえもんだよ、こんな便利な能力。」
『だから言ったろ?俺様はな、〝妄想を実現できる力〟っつーのがあるのよ。』
「なら試しにさ、コレ出来る?」
【無限に湧き出るコーヒー。】
『おぉ、お茶の子さいさいよ。ホレ。』
――パチンッ――
パソコンの脇に置いていた空のマグカップの中から、コーヒーが湧き上がってくる!
『こんなもんだろ。』
――ゴックッ――
「え、すごっ。さっき入れたコーヒーの味まんまだ。…氷も入ってる。」
『ガハハハハハ!これが悪魔の力だ!』
「なら……コレは?」
【世界の平均気温を2度下げる。】
『ほぉ~、良かろう!2度でいいのか?』
「2度でいいよ、がっつり下げると寒いし。」
『分かったぞ、ホレ。』
――パチンッ――
……2度下げても、よく分かんないな。33度が31度になっても、体感が変わらないもんなのか。
『まぁ2度は誤差の範囲内だからな、こんなもんよく分からんのは当然だな。』
「……変わらないなら、悪いけど戻してもらってもいい?」
『これはこのままでもいいだろ?』
「……そうか、ならこのままで。」
『キツネは本当に真面目だな、他の人間なら【無限に金の湧く財布が欲しい】だとか【夏を冬にしてほしい】だの。自分勝手なことしか言わんぞ?』
「僕はそういう身勝手なお願い事には向いていないからさ。無限にお金が湧いたら、その出所にビクビクしそうだし。夏を冬に入れ替えたら、夏が好きな人たちから反感買いそうで怖いし。」
『ガハハハハハ!そんなこと考えるなら確かに向いてないな!まぁ俺様はお前のそんな所も大好きだからいいがな。』
「……ありがとう、さぁ頑張って原稿上げるとしますかね。」
『そうだぞ!遊んでる暇なんてねーからな!』
「遊び始めたのは君だろ?」
『あ?そうだったか?』
「君はまるで子供みたいだね、無邪気と言うかなんというか。」
『褒めても何も出ねーぞ、まぁ無限にコーヒーは出てるがな!ガハハハハハ!』
「コレは何か嬉しいから、しばらくこのままでいいや。」
『本当に小さな欲だな、キツネはよ。』
「欲とかそういうことよりも、君とこうして会話できるだけで僕は幸せだから。これ以上は望まないよ。悪魔にこれ以上助けられたら、バチが当たりそうだしさ。」
『バチじゃねーよ、これ以上は〝対価〟ってヤツだな。』
「それこそ怖いじゃないか、魂を貰うとかそういう話だろ?」
『まぁそう言う事だが、今言ったのは冗談だ。俺様はこれ以上お前から要求することは出来ねーしな。その綺麗な金髪と、お前の心に住めるだけで対価は十分貰ってるからな。ガハハハハ!』
いつも優しい悪魔、僕の心に住むまでは〝夜更かしの悪魔〟という名前だったけど。
今は〝心の悪魔〟というらしい。
たしかに名前通り、怪しさと優しさを感じる。
人は孤独でいると、心に穴が空いて大きな音を鳴らす。
その音が鳴ると、不安で苦しくて、この世界から居なくなりたくて仕方なくなる。
そんな穴を塞いでくれたこの〝心の悪魔〟に、僕は毎日感謝している。
……ありがとう、悪魔。
『心の中でお礼を言うのも良いがな、直接口で言ってくれよ。』
「ありがとう、悪魔。」
『ぬあぁぁぁ!2度も言うな!くすぐったいわ!』
「なんだよ、直接言えって言ったのは君だろ?」
『そうだが……あーもうとにかく早く原稿終わらせて晩飯だ!』
「分かったよ、今終わらすから少し待ってて。」
これが、今ある僕の日常だ。
あの夜更かしをしてから、何とも不思議な毎日だ。
これ以上を望むなんて、ホント贅沢だよね。
妄想が現実にならなくてもいいや、僕の心は君で満たされているから。
だから、これからもよろしくね…心の悪魔。
『だから口で言え!口で!』


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

今日でちょうど毎日投稿100日目で、何か特別な作品を!なんて息巻いては居たんですが、何も思い浮かばず。
ただ以前から好きな〝非日常世界の日常会話〟というもの表現したくて、それを意識的に書いた初めての作品が「夜更かしの悪魔」でした。
それを思い返して、あの悪魔と青年は仲良くやっているのかなぁなんて妄想したらいつの間にか書いてました。

力量不足では当然あるのですが、
最後まで楽しんで頂けていたら本当に嬉しく思います。
皆様、ありがとうございます。

そして、僕の投稿を読んでくださる皆様。
本当にありがとうございます。
まだまだ頑張って書きますので、宜しくお願い致します。

次の作品も楽しんで頂けることを、祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


《作品利用について》

・もしもこちらの作品を読んで「朗読したい」「使いたい」
 そう思っていただける方が居ましたら喜んで「どうぞ」と言います。
 ただ〝お願いごと〟が3つほどございます。

  1. ご使用の際はメール又はコメントなどでお知らせください。
    ※事前報告、お願いいたします。

  2. 配信アプリなどで利用の際は【#カナモノさん】とタグをつけて頂きますようお願いいたします。

  3. 自作での発信とするのはおやめ下さい。

尚、一人称や日付の変更などは構いません。
内容変更の際はメールでのご相談お願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?