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ショートショート:「夜更かしの悪魔」

【前書き】

皆様、お疲れ様です。
カナモノさんです。
今回は孤独な青年と悪魔のお話です。
どうしようもなく〝孤独〟で苦しいときとか、嫌な気持ちで眠れない夜とかがあるときに「こんな出会いがしたいな。」と思って吐き出したんだと思います。
コレをもしも誰かに読んで頂けて、少しでも共感とかして頂けていたらとても嬉しく思います。
少しの間でも、お楽しみ頂けていることを願います。


【夜更かしの悪魔】

作:カナモノユウキ


夜風が冷たい午前1時、俺様はヤツを見つけた。
月明りに照らされたソイツの髪は黄金色に美しく輝いて、俺様はその理由を聞かずにはいられなかった。
「こんなところで何してるんだ?」
「……特に理由はない、……夜風に当たりたい時だってあるだろ?」
「俺様は毎晩夜風に当たっているからな、そんな気持ちはわからんなぁ。わからんと言えば、お前さんの髪は何でそんなに美しいんだ?そんな黄金色の髪なんて見たことないぞ。」
「僕にもよくわからないよ、生まれてこの方、毎日この髪色だから。」
不思議な奴だ、俺様の顔を見ても叫び声を上げやしねー。
「お前さん、俺様のこと見えてないのか?」
「ちゃんと見えてるよ。君、悪魔でしょ?見ればわかるよ。そんな大きな背丈に角と青い肌の人間はいないよ。」
「ガハハハハ!そしたら、なんで驚かないんだよ。ふつう怖いだろ?」
「驚くことでもないし怖くないよ、怖がって欲しいなら叫んであげようか?」
「ガハハハハハ、そんなこたぁしなくても大丈夫だ。望んじゃいねーし、そっちの方がおもしれー。お前さんはこんな夜中に何してんだ?考え事でもしに来たか?」
「考えることも無いんだけどさ、寂しいから、夜中は部屋に居たくないんだ。」
「だからって人気のない公園で一人で憂さ晴らしなんてよー。そっちの方がよっぽど寂しかねーか?俺様ならごめんだな。」
「“俺様ならごめん”って、じゃあ君はこんなところで何してるの?」
「俺は夜更かしの悪魔だからな、こうして夜更かしすんのが役割なのよ。」
「……“役割”って、他にやることないの?」
「うるせーな、いいんだよ。俺は寂しかねーし、理由があるだけマシなんだよ。」
「フフフ、理由にもなってない気がするけど、君が満足してることはわかった。」
こいつが何で“寂しい”なんていうのか、俺様には手に取るように理由が解っちまう。
「お前、自殺しようとしてミスったろ。」
「……何でわかるの?もしかして死神だったりとかする?」
「あんな縁起の悪いもんと一緒にすんな、俺様は悪魔だぞ?生き死になんてソイツの魂の強弱で解るわ。」
「……悪魔ってすごいんだね。ねぇ、人ってさ。寂しいとこういう手段で楽になろうとするんだ。笑えるだろ?」
「笑えるかどうかは知らねーが、情けねーな。寂しいからって死ねるのは楽で良さそうだけどよ。俺には今一わからねーよ、悪魔だし。そもそも“死ぬ”って選択肢が俺様にはねーからな、理解に苦しむわ。」
「……そうだよね、わかんないよね。毎日毎日さ、色んな人と喋って、色んな人と出会って過ごすのに。心が満たされないんだ、気付いたら心の真ん中に空いたドーナッツの穴みたいなのが、ピューピュー鳴るんだ。その音が響くと(あー自分はどうしようもなく孤独なんだ)って理解しちゃう。そうなるともうダメなんだ。どうにか穴を埋めたくなって、でもその穴は大きすぎて、埋めようとしても無駄なんだ。それで、無駄だと分かった時に悟ったよ。“自分から聞こえなくすればいい”ってさ。……でも出来なかった。ロープが解けてさ、ドン!って尻もち付いたとき、横の部屋の人から『うるせー!』って怒鳴られた。……最悪だよ、自殺未遂しておまけに横の部屋のおじさんに怒鳴られてさ。……ハハハ。」
「随分と空回りな自殺未遂だな!こりゃより一層情けねーわ!ガハハハハ!でもお前、ラッキーだったな。ソレのお陰で俺様に出会えたじゃねーか!」
「……ラッキーなのかは知らないけど、面白い出会いが出来て、嬉しい気がするよ。」
「お前さんのその髪が月夜に照らされて、悪魔の俺でも惚れ込む美しさの髪色よ。そんな髪の持ち主が、死なずに俺様の目の前に現れてくれたのは、俺様にとっては嬉しい出来事だ!」
「この髪をそんなに褒めてくれるのは、生まれてこの方おばあちゃんと君だけだよ。」
「なんだ!他の奴は気づいてねーのか!?見る目がね―やつもいたもんだ。」
「他の奴らはバカにするか、変な目で見るだけだよ。…外人みたいとか、女みたいとかさ。」
「ほうほう、まぁ悪魔の美的センスには凡人の感想はやっぱり分からねーが。俺から言わせればだが、お前さんのその髪は、悪魔も惚れ込む美しい黄金畑の色だぜ。」
「ありがとう、そんなに褒められたのは初めてだよ。」
「ガハハハハ!そりゃよかったな!夜更かしもいいもんだろ?」
「……フフ、そうかもね。」
…コイツまだ寂しそうだな、まぁこれも何かの縁だ。助けてやるか。
「お前さん、胸の中の穴を閉じたいか?」
「え?そりゃもちろん、閉じたいけど。そんなことできる訳ないだろ?」
「出来ねーってか!俺は悪魔だぜ?ちょいと失礼するぜ。」
俺様はそう言ってコイツの胸へ飛び込んだ。
「うわぁ!」
「どうだ?」
「え?“どう”って?」
「胸の音は聞こえるかって聞いてんだよ!」
「あれ……聞こえない。」
「そりゃよかった、俺様は夜更かしの悪魔だからよ!お前さんが夜更かしする時にはこの穴塞いでやるよ!そしたら死ぬなんて考えねーだろ!だからその代わり、お前の黄金色の髪、また見せてもらっていいか?」
「うん。」と言って照れくさいのか、それからコイツは黙っていたが、顔は満面の笑みで満月みたいに輝いてたよ。


【あとがき】

最後まで読んでくださった方々、
誠にありがとうございます。

只単に僕自身がそういう気持ちだった時に、「こういう悪魔が居たらなぁ。」って気持ちで書いたやつです。
自分、悪魔とかがキャラクターとして大好きで。
そういう存在がお話をもっと面白くしてくれると思うので、今後もこういうのちょいちょい上げますので気に入っていただけたら嬉しいです。

力量不足では当然あるのですが、
最後まで楽しんで頂けていたら本当に嬉しく思います。
皆様、ありがとうございます。

次の作品も楽しんで頂けることを、祈ります。
お疲れ様でした。

カナモノユウキ


【おまけ】

横書きが正直苦手な方、僕もです。
宜しければ縦書きのデータご用意したので、そちらもどうぞ。


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