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共に。



俺の田舎のいいとこなんて海くらいだよ。




彼と出会って恋に落ちてからもう3年以上経つ
緩やかに穏やかに愛を育ててきた。

私も彼も同い年で、もういい大人になった。
お互い東京の大都会の中で荒波に揉まれ
歯を食いしばって頭を下げたりしながらも
なんとか社会人として生き残っていた。



1年付き合って一緒に住むようになって
ああ、きっと最期まで隣にいるのは彼だな
なんて今までの歴代の彼氏に思ったことのない
感情が生まれたりもした。



この世には奇跡というものが
稀に起こる。
彼の中にも同じ感情が芽生えていたらしい。






付き合って2年のタイミングが少しすぎた頃
彼は仕事がとても忙しい時期で無理をしすぎ
高熱が出てしまった。

その夜、私もうつるわけには
いかないので完全防備で看病していた。
何とか少し食事をしてくれた彼に薬を渡し
解熱剤を飲んだあと苦しそうに眠りについた。



私も彼ほどではないが忙しい日が続いていたので
眠った彼のベッドの横に座り込んで、
少し休んで洗い物をしようなんて考えていたら


彼が、急に飛び起きた
私は驚いてうわ!っと叫び反射的に彼の腕を掴んだ


驚いたものの数秒で頭が動き出して
何か悪夢でも見たのかと尋ねようとしたら








"結婚してください!"
と彼は私の目を見て大声で言い放った
そして満足したかのようにまた眠りについた





残された私は呆然としていたが
おでこに冷めたいシートを貼って汗だくで
パジャマ姿で寝ている彼とマスクに
すっぴんメガネの部屋着の自分の姿
数秒前に起きた出来事を脳内で整理したら
せっかく眠れた彼の事なんて考える余裕もなく
大笑いしてしまった。

それはもう涙がでるほどに。





そんな珍事件を機に、後日きちんと
結婚して下さいの誓いをいただき
(その時も思い出し笑った私に彼は怒っていた)
私もきちんと "お願いします" と答えた。


未だにあのプロポーズを思い出すと
わらってしまう。その度あれはなんか、あれだよ
ほらちゃんとプロポーズしたでしょ!と
照れて怒る彼だが、


あの飛び起きて叫ばれた日が
忘れられない、大切な記念なのだ。
彼の言う"ちゃんとプロポーズ"は私にとって

おまけみたいなもんだった。



何度か彼の田舎に一緒に行ったが
今回はきちんと挨拶をする為に向かった
行きの新幹線でそわそわする私を横目に
息子さんを私にくださいってちゃんと
言ってね。なんて余裕ぶる彼に
腹が立ったが、先日私の実家に挨拶に
行くまえの彼の青冷めた顔を思い返せば

あなたに言われてもね。と和らいだ。



彼の実家に着けば、予想していたのか
ご両親もいつもよりよそよそしい姿に
私の緊張も溶け、終始柔らかく暖かい空間だった。


挨拶を済ませ、お母さんが泣いて喜び
私達よりも結婚式はどうするのだと嬉しそうに
聞いてくるので彼は逃げるように、またくるわ。
とそそくさと帰る準備をした。


またいつでもきなさいね!といつまでも
私たちに手を振るお母さん、
その後ろで優しく笑うお父さんの姿に
何年か後の未来が心から楽しみになった。



新幹線まで時間があるから
2人で海でも見に行こうか。


彼と付き合ってすぐの頃、彼はいつも
田舎の話や学生時代の話をしてくれた
海の綺麗な自然があふれる地元の話は
ずっと都会暮らしの私には魅力的だった。

それから何度も色んな思い出の場所に
私を連れて新しい景色新しい世界を
たくさん見せて、教えてくれた。


家から20分ほど、さっきのおふくろの顔みた?
泣きすぎなんだよ。おやじも嬉しそうだったな
なんて彼が話すのを聞いて歩いた。


何度も来ているこの海が大好きだ。
ちょうど夕日が沈みかけて、
なんだか、綺麗。と一言で片付けてしまうのは
物足りないほどいつもより綺麗に見えた




2人で砂浜に続く階段に腰かけた。
彼が私の手をゆっくりとそして強く握りしめた


"                            "



波音でかき消される程の小さな声で彼は言った
私にはしっかりと届き、くっきりと刻まれ
心の中の宝箱に大切にしまった。



照れ屋のくせにお調子者で優しくて
頑張りすぎるほどの頑張り屋のあなたと
死ぬまで共に生きていける喜び

私は、これからもっと幸せになります。
と目の前にある大きな太陽に誓いを立てた


あまりに、美しいこの景色も焼き付けて
私の中に大切に保存しよう。


これから先、宝箱の中から溢れる程の
大切なモノをこれから集めていこう。

私は、幸せを逃すまいと強く握り返した。













〜この間の四国水族館の帰りに
高松港まで友人を送った際に海をみたら
目が離せないほど綺麗で感動しました。
なんで女とこんな景色見なきゃいけないんだと
友人と言い合って哀れな目で周りにみられました笑〜





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