OHO KANAKO

写真が好きな人。 https://www.ohokanako.com/

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最近の記事

みんな傷ついていい。

夜中から長男が熱を出して、うなされる彼とリビングで過ごす。雨の合間に蝉がゆっくりと鳴く声が蒸し暑い部屋に響く。 毎年、次男の誕生日の頃に明けている梅雨もそろそろ明けるだろうか。疲れていないのに、大学のノートを開いていると気付いたら眠ってしまう。 昨日は3ヶ月ぶりくらいにスクールカウンセリングを受けに次男と三男の小学校に行く。 カウンセラーの先生は、離婚する前後、長男が二年間お世話になっていた。違う学校に異動になってからまた今年、次男と三男の学校に赴任してきた。長男の通ってい

    • わたし、死ねないんだわ

      昨日は次男の誕生日で、21時までの仕事を20時までに調整してもらって、仕事終わったあとに注文してたケーキを取りに行って、Uberで次男のリクエストのケンタッキーを家に届けてもらって、車の中に隠しておいたプレゼントを包装して、クラッカーを鳴らしながら玄関を開けた。 家に帰ると、行く前に作った数字の風船は割られていた。お腹を空かせた子どもたちと一緒に食卓を囲む。炭酸が飲めない長男はメロンソーダを飲んで悲鳴を上げていた。 アイスクリームのケーキにデコレーションをして、ロウソクに

      • そばにいて。

        鬱病と診断された。 たかが失恋くらいで情け無いとは思うのだが、3月のPTSD再発からずっと薬のコントロールも上手くいってなかったし、ただのもらい事故なような気がする。目下、自分を消してしまいたい衝動を抑えられればいい。からだを傷つけたくてしょうがない。もともと飲んでいた薬を二週間かけて倍量にする。四年前から始めた治療___あと一歩で完治だったのに、その治療の倍の薬を処方される。 喪失感に耐えられない。 誰もそばにいない感覚。 好きな人と過ごしている時だけ和らいだ。 ここ十数

        • I'll always love you.

          先日、子どもたちと行った銭湯のキッズコーナーに置いてあった絵本のタイトル。 「ずーっとずっと、大好きだよ。」 小さい時からいつも一緒に育ってきた愛犬が年老いても、毎日このタイトルのセリフを伝えてきた少年が、愛犬が亡くなった時も愛を伝えてきて良かったと思う話。 長男と三男は将棋を打っていて、わたしはお風呂上がりにこの絵本を読みながら寝ていた。 ずっと大好きでいたい。 ずーっとずっと大好きだよと言いたい。 でもわたしは夏の間にこの想いを断ち切らなければならない。罪滅ぼしのため

        みんな傷ついていい。

          傷ついてるあなたへ

          鏡の前で髪を乾かすわたしに彼が訊く。 「白髪とか生える?」 「ぜんぜん生えてるよ、内側だから目立たないだけで、おばちゃんだからね」 「おばちゃんじゃないよ。俺も生えてるよ。両側に2本必ず生える」 そう言って彼はわたしに髪をかき分けて白髪を探させる。左側の耳の上の方の髪がきらりと光る。 「うちの家系、白髪が多いんだよね。だから30代後半になる頃にはたぶん白髪だらけだよ」 十年後の彼の白髪姿をわたしは見ることがないし、わたしの白髪も一本でも彼には見られたくない。9歳年の離れたわ

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          傷ついてるあなたへ

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          人生何が起こるか分からないから楽しいんだよ

          はじめてニコンサロンで個展をした時、三男は生まれて2ヶ月、次男は二歳だった。 写真の搬入をしている時も胸には乳児を抱えて、次男は泣いていた。個展が終わったあとに次男の病気と障害が分かり、そこから一、二年は抱っこ紐で三男、背中には次男をおんぶしての生活だった。10キロ、20キロ、いつも背負っていた。障害児支援サービスを使うときも母から離れられず、わたしたち三人はいつもくっついていた。次男が4歳、通所施設に慣れ、やっと安心して他人に任せられるようになって、わたしの体はひとりになれ

          人生何が起こるか分からないから楽しいんだよ

          最後の悪あがき

          家に着いてエンジンを停めた途端、気絶するように眠った。気付いたら三時間くらい経っていた。慌てて印鑑と受給者証を持って市役所に向かう。 今まで低所得で障害児サービスも無料で使えていたが、8月からは有料に変わる。頑張って働いてきた証でもある。 正社員で働いている、養育費も支払われてる、児童手当ももらっている。 申し分はない。無一文になった4年前に比べたら、子どもと何不自由なく暮らせるようになった。 なのに、なんですべて壊そうとしてるの? 夜勤中、泣き疲れて椅子で眠っていると

          最後の悪あがき

          終わりの日

          好きな人の結婚が9月に決まったことを知る。 彼の前で泣く。 もう少し早く彼の気持ちを聞いていたら、何か結末は変わっていた? 「あの時、一緒に映画観に行けばよかったね」 9月になったら、彼のために伸ばしていた髪を切って、失恋したら開けると決めていたピアスを開けて、低用量ピルを飲むのをやめて、仕事もやめよう。 今日は市役所行ったり美容院行こうとしてたのに、身体が何も動かない。ゴハンも食べてない。目を閉じて、何も見ない、考えない。 夏。 一緒に海に行きたかった。花火が観たかった

          終わりの日

          恋愛とは毒だ

          茜色に染まった夕空に月が光り始める。 ストレスのかかった長男が、習い事から帰ってくると泣いている。どんなに幸せな状況で暮らしていても、人には時々、消化できない鬱屈とした感情が溜まる時がある。マズローの欲求?フロイトの自己防衛機制?人の欲の解消は難しい。 昨夜は人の悩みを聞いていて凹んでしまった。 特に恋愛の悩みにはゴールが無いように思う。 そして人間のいちばん欲が深い部分を浮き彫りにさせる。愛が欲しい。自分を満たすために相手を利用してる感さえある。話をきいていて、自分の姿を

          恋愛とは毒だ

          写真には残らない

          先週、メモ帳を買った。 表紙には感情的になって書き殴ったタイトルが書いてある。“これで終わりにする” 人に言えない思いをただ溜まったときに書き出す。今日は3ページくらい書いて、最後の1ページは黒く塗り潰した。 最近、日勤の時は自転車で通勤するようにしている。今の時期、クチナシの花が咲いていて、夜風の中にその香りを嗅ぐのが好きだ。 田んぼには水が張って、蛙が合唱するようになった。ただ30分、そうやって季節を感じながら漕いでいる。 メンタルクリニックの診察に行ってきた。 二年

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          写真には残らない

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          6月7日

          「いま、何してる?」 「家にいる」 「まだ帰ってないんだったら、ランチどうかと思ったけど帰っちゃったか」 「今から支度して行くよ」 ショッピングモールで鏡を前に洋服をあてていると、後ろに彼が立っていた。 3ヶ月ぶりに会うその人はだいぶ風貌が変わっていた。ブランド物に身を包んで、髪はワックスで固めていた。 「全身黒だね、ヤンキーみたいじゃん」 「うるせー、モード系っていうんだよ」 「どこ行くの?わたし和食の気分なんだけど」 「洋食!」 眩しい。前なら迷わず掴んで離さなかっ

          What do you want?

          久しぶりに映画を観た。 Amazonプライムで、スマホ画面での視聴だけどね。『きみに読む物語』 7年ぶりに再会して愛を確かめ合った二人だったが、婚約者の元に戻ろうとするヒロインに“きみはどうしたい?”と主人公は何度も言う。親や僕や婚約者のことなんかどうでもいい、そんなこと考えないで君自身はどうしたいのか? “So it's not gonna be easy. It's going to be really hard; we're gonna have to work at

          What do you want?

          白黒つけられない。

          岩礁に照りつける陽射しの割には、吹いてくる海風が冷たく肌寒い。江の島では海の家の建設作業が始まっている。 休日、朝から次男に急かされながらお弁当を作り、病み上がりの三男は学校に行きたくないと言い車で校門前まで送る。朝までソファで寝たのに子どもたちを送り出してまた昼まで寝てしまった。大学の提出課題の要項を見るのが怖くてメールが開けない。珍しく早く帰宅した長男に一緒に海に行こうと誘うも、友達と遊ぶと言い、結局いつもの面子で家で集まり出す。 よく子どもたちと江の島の裏側で、カニを

          白黒つけられない。

          深緑

          18歳のとき、フジタという男とよく一緒にいた。大学の同じ学科で、モデルみたいに派手な男女のグループのひとり。猫みたいな顔をして、痩せていて、いつも緑色のカーデガンと茶色いズボンにサンダルを履いていた。 フジタの部屋は薄暗くて、お香を焚いていて、音楽がかかっていた。フジタのお母さんは精神病で入院していて、フジタの元彼女は別れたあともストーカーのように部屋に入って洗濯物を畳んだりしていた。怖くて部屋に帰れないフジタはよく私のアパートに来て部屋の隅でうずくまっていた。 フジタの記憶

          今の限界

          紫陽花が色づき始めた。線路脇には鉄ちゃんが大きなレンズをぶら下げて季節の風物詩と小田急線をファインダーに収めようとしてる。案外好きな季節。夕方に延々と散歩をしたい。夏の夜の匂いが近づいてきている。スーパーには梅を漬ける氷砂糖が並び始めた。 やっと、いっぱいいっぱいだった5月が終わる。何も終わらなかった。大学の話。 入院前に履修登録を済ませ、自分が出来そうな科目を割り振る。蓋を開けたらすぐ入院。 退院後も体調は優れず、また扁桃炎になった。仕事も勉強もセーブしなければまた過労で

          今の限界

          暗室に行ったはなし。

          夜勤明け、長男と約束して暗室に行く。 昼食を食べたら意識が飛んで「あんまり気持ち良さそうに寝てるから起こさなかったよ」「なんで起こしてくれなかったの」と喧嘩になる。 3時間の予約が2時間になった。 一年前のネガをRCにプリントする。 過去の自分の目線が現像液の中から浮かび上がる。毎日毎日、光を追いながら撮りたいと張り付いた朝顔の蔓が、1秒1秒光の強さを濃くしていく。なぜ暗室が必要なんだろう。 この、過去の自分が注視していた瞬間に価値があるのだと思った。浮き出ていく。閉じ込め

          暗室に行ったはなし。