傷ついてるあなたへ
鏡の前で髪を乾かすわたしに彼が訊く。
「白髪とか生える?」
「ぜんぜん生えてるよ、内側だから目立たないだけで、おばちゃんだからね」
「おばちゃんじゃないよ。俺も生えてるよ。両側に2本必ず生える」
そう言って彼はわたしに髪をかき分けて白髪を探させる。左側の耳の上の方の髪がきらりと光る。
「うちの家系、白髪が多いんだよね。だから30代後半になる頃にはたぶん白髪だらけだよ」
十年後の彼の白髪姿をわたしは見ることがないし、わたしの白髪も一本でも彼には見られたくない。9歳年の離れたわたしたちは、今の一年間だけ同じ30代だ。
うちの子がよく言う、おばちゃんは40歳からだって。
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