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48歳、初めての神社実習に臨む|明治神宮で禊(みそぎ)の日々 2

神道文化学部のすすめ【神社実習編】
神社実習は、御神域での合宿であり、実習という名の修行だった— その体験を通して、神社の向こう側にある世界の一部をご紹介します。助勤(アルバイト)の話もあり。トップはこちら

早期退職後、47歳にして大学で神道を学ぶことになった私

48歳になり、無事前期の授業と試験を終えて迎えた、夏休みのある日。私は、25年ぶりのリクルートスーツに身を包み、朝の原宿駅に降り立った。

手には大きなスーツケース。中には、3泊4日分の装束が詰まっている。いよいよ初めての神社実習が始まるのだ。

駅から歩いてすぐの所にそびえ立つ、明治神宮の大きな鳥居。いつもなら、ここから参道に入る。

だが、今日の私は参拝者ではなく、実習生だ。

手を合わせて実習の無事を祈った後、脇にある車道から、重い荷物を引きずって研修所へ向かう。

「思ったよりも修行だった」と感じた、明治神宮での実習。ご神域で過ごす長い4日間が、これから始まる。

★前回はこちらをご覧ください。

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御神域での実習

さかのぼること1ヶ月余り前。大学で事前研修会があった。

その中で、参加の心構えの一つとして、身だしなみに気を配るよう、強く言われていた(その場でチェックもされる)。

髪を明るく染めたり、パーマをかけたり、マニキュアを塗ったりするのは厳禁。

下を向いたときに髪が顔にかかってはいけないなど、髪型にも細かい決まりがある。私は前髪が短いのだが、それでもピンで留める。

装束は白い着物(白衣)に白い袴。足袋はもちろん、下着もハンカチも全て白である。

神職は、御神前で奉仕する者として、穢れのない姿でいることが求められる。学生であっても、それは変わらないのだ。

さらに、神社実習では、御神域で寝泊りする。

そのため、寝巻きではなく、白衣で寝る。部屋から出る際には、お手洗いに行くのでさえ、必ず袴をつける。参籠の心構えが求められるのだ。

9時に研修所で集合すると、すぐさま装束に着替えて点呼。携帯電話は回収される。これから実習が始まるのだと実感する時間だ。

40名程が白い装束を着て、参拝者の中を2列になって進んで行く。一斉に手水を取り、本殿の方へ一礼する。珍しい光景に、写真を撮る方も多い。

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祓所(はらえど)で御祓を受け、社殿の中に入る。御神前で開講奉告祭が行われるのだ。その後は、社殿の前で集合写真を撮る。

少し前まで、神社には人一倍縁がなかった。そんな私が参拝者から見られる側になったのは、どこか不思議な気持ちである。

無言の食事

開講式、訓話が行われた後、昼食の時間になった。

神社実習での食事は独特だ。無言でいただくのである。

食前と食後には、姿勢を正し、一拝一拍手をした後、皆で本居宣長の歌(※)を斉唱する。神に感謝を捧げるのだ。

その後、白い装束を着た40名以上の人間が、一様に黙々と食事をとる。その光景は、まさに修行の始まりを感じさせられる。

「大勢での食事は、会話をしながら楽しくいただくもの」という固定観念が打ち砕かれるようだ。

正直なところ違和感が拭い去れない。だが、実習が進む中で、次第に心境が変化することになる。

***

昼食後。自己紹介の時間があった。

社家(神社の家)出身の子もいれば、一般家庭出身の子もいる。概ね二年生。19歳か20歳だ。

中には、一般企業で働いた後、神社を再興するために神職になると決めて入学した、30代ぐらいの子もいた。だが、最年長はもちろん私である。

夕方になると、禊行について説明を受けた。これから、ついに禊場へ向かう。

つづく

※本居宣長の歌

●食前感謝:
たなつもの
百の木草もあまてらす
日の大神のめぐみえてこそ
(五穀や全ての木草の育みは天照大御神の御加護のお陰である)

●食後感謝:
朝よひに
物くふごとに豊受の
神のめぐみを思へ世の人
(朝夕の食事の際には豊受大御神からの恵みを感謝しよう)

*天照大御神、豊受大御神は、いずれも伊勢神宮の御祭神

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