早期退職の理由は、神様が教えてくれた|第6話
神の島・久高島で観光ツアーに参加したはずが、スピリチュアル・レッスンのような展開になり、戸惑う私(第5話)
最後に、久高島で最も重要な聖地のひとつである、神聖な浜に案内された。
海岸と言うよりは御神域のような、清浄な空気が流れる場所。曇り空の下、ガイドの方とふたり。突然、彼女は言った。
「あなたは、神様事(ごと)を伝えて、困っている方を助ける人になるんじゃないですか」
………
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………
神様事って???
戸惑いは最高潮に達した。だが、私はなぜか、こう答えていた。
「それができたら、うれしいです」
頭を通過せず、直感に言わされたような感覚。すると、彼女は空を見上げて言った。
「ほら、神様も祝福してるわ」
雲が晴れて、太陽の光が射し込んでいた。
濃密なガイドツアーが終わり、私は呆然としていた。
神様事って、一体なんだろう。なのに、どうしてあんなことを言ったのか。
一方で、何とも言えない、わくわくする気持ちに包まれた。
思えば、早期退職前、インドの占星術で、生まれてきた使命を占ってもらった時も同じだった。
私の使命は、古代の叡智に関する知識を身につけ、活動を行い、人々が容易に暮らせるよう助けることだと書いてあった。
具体的に何をするのか分からないのに、なぜか心惹かれたのだ。
彼女の言ったことが、本当だとしたら・・?
私は、彼女が入れてくれた御嶽に向かった。他にも案内された聖地はいくつもあったが、あの御嶽のことが忘れられずにいたのだ。
夕方近くになり、辺りは閑散としていた。西日を背に受けて進む。
すると、不意に森の方から能管(のうかん)の音が聴こえてきた。能などに使われる横笛だ。大学時代に狂言を習っていて、聴き慣れた音。
沖縄の離島で聴くのを不思議に思いながらも、歓迎されたような気持ちになった。
心の中で「失礼します、入らせていただきます」とご挨拶しながら、静かに御嶽の中へ入る。
私は一心に祈った。
「私は、できることなら、彼女の言う『神様事を伝えて、困っている方を助ける人』になりたい。そのために何をしたら良いか、教えてください」
すると、突然、
「だったら、神様の言葉がわかるようにならないとね」
と言われた。
………
………
………
誰???
私は驚きのあまり、足早にその場を立ち去ってしまった。だが、神様の言葉だと直感した。だから会社を辞めることになったのだと。
「早期退職の理由は、神様が教えてくれた」
私はそう確信した。
再び呆然とする私。一方で、現実逃避の妄想ではないかという疑念もわき起こる。直感と理性。二人の自分がせめぎ合う。
だが、その夜、不思議なことが起こった。その後も直感を信じざるを得ないことが続いていく。
つづく
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