仮眠

慶應義塾大学在籍、理工学を専攻していて、作曲家としても活動してます。 基本は月に1回更…

仮眠

慶應義塾大学在籍、理工学を専攻していて、作曲家としても活動してます。 基本は月に1回更新します。 僕にとって、哲学とは、答えの出ない問いに答えの出ないまま考え続けることをして、それ自体をマゾヒスティックに愛する営みのことです。

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  • 哲学探究

    僕の随筆における哲学的側面がまとめられています。毎月の随筆がカジュアルなものだとすれば、このマガジンはお金をとるだけにフォーマルなものです。

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最近の記事

やさしさと暴力/信頼と契約

やさしさと暴力やさしさとはなんだろうか。受動的にやさしさを感じるときと、能動的にやさしさを行使するときで、僕たちはそもそものやさしさのあり方が異なるだろう。 ぼくは非常に消極的な方針でやさしさというものを「感じる側」、つまり受動者の側から考えた。その時に導き出した結論はこうだ。やさしさを恣意的に与えることはできない。やさしさは、ぼくたちが感じてやる必要のあるものだ。 例えば、やさしさというのはどんなに人がやさしくあろうと行為したとしても、そのやさしさに対し反発を受ける場合は絶

    • 生きる意味とはなにか

      生きる意味とはなにか、 人間、死んだらチリとなる。数百万年後、ぼくたちの意志は残らないだろう。有限なぼくたちよりも圧倒的に広大で無限な宇宙に対して、ぼくたちはほんとうに戦を仕掛ける必要があるのだろうか。 生きている間にその生の楔をうえつける。作品とは、自らの生を越えてもなお残存するぼくたちの生の記録だ。ぼくたちはそういった「彫刻的なもの」を大地に刻むことで、永久的な生を得る。ハンナ・アレントは『人間の条件』においてそんなことを書いている。 たしかに生は何かを残存させられる

      • めぐりめぐる2022年欧州21カ国完全制覇の旅

        訳あって、留学生活を終え、僕は日本に帰ることとなった。しかし、帰る前にできるならば、ヨーロッパを概観してみたい、そんな気持ちに動かされ、ぼくは先月から「ヨーロッパ21カ国完全制覇の旅」に出た。旅の趣旨は、とにかくいろんな国を訪れて、見て、話して、泊まって、食べることで文化的な差異を見つけることにある。そして、ただ国を適当に回るのではなく、世界的な知名度が高く、EUの基軸をになっている国家群であるところの西ヨーロッパ諸国を回る。それが今回の大きな目的である。 この文章を書きは

        • 英語圏のドラムンベースについて、ゆるく語る・ゆるく紹介する

          2020年初頭あたりから2021年にかけて、コロナ禍に入って人々がゆるやかに家に篭るようになった時期、ぼくはいくつかのきっかけによりイギリスや英語圏のシーンで流行ってるDrum'n'Bassというジャンルに興味をもつようになった。 きっかけはいくつかあったけれど、まず第一に当時からサークルで関わりがあったtellurさんからHospital Recordsの話を聞いたこと、第二にunder_freaksというアニリミ・ベース系イベントのtwitch配信を見ていたら、reje

        やさしさと暴力/信頼と契約

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        • 哲学探究
          1本
          ¥500
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        記事

          『愛と哲学 EP』に添えて

          ぼくは音楽を作っている人間ですが、同時に、理系大学生でもあり、フランスに留学している人間でもあり、西洋近代哲学が好きな人間でもあり、彼女のことを愛している人間でもあります。 そんな僕にとって、「自分の音楽で表現するもの」、というのは多様なかたちがあります。 人には人の歩んできた人生というものがあるわけなのですが、ぼくはその中で、音楽に関わるものをたくさん経験してきました。 その過程で手に入れたもの、失ってしまったもの、過去への憧憬や、今ある自分の技術と表現力で伝えられる限界

          『愛と哲学 EP』に添えて

          哲学的生活習慣の変更・実践

          すこし前に、右翼系国会議員の杉田水脈氏が「生産性がない」といった趣旨でLGBTを論じた際、各所で相当の批判がおきていた。そんな時、よく「LGBTに生産性はありますよ」みたいな根拠からひっくり返す批判というのをみることがあった。 ぼくは、こういうタイプの批判というものは、あらゆる議論において参考になるし、一考の余地が残される視点だな、と思っている。というのも、概してそういった批判は全く別のイデオロギーを後ろ盾として議論をすすめている。議論というのは、それなりの文脈と根拠というも

          哲学的生活習慣の変更・実践

          フランス紀行 10月編

          ぼくは2021年の8月末からフランスに滞在している。 留学のためにフランスのある大きな街で暮らしているのだが、しばらくここで生活して、色々と気づくことがあった。本稿は日記調で、短文の集積になるが、集めて眺めてみると、フランスでの特異な生活が垣間見えると思う。 暇な時に、布団の上で寝る前にでも読んでもらえれば幸いである。 10月A日滞在先の僕の大学は、しばしば不定期イベントが発生する。今週は、いわゆるイノベーションを考える思考法、「デザイン・シンキング」の実践をしつつ、イノ

          フランス紀行 10月編

          内輪ノリと意識高い系について

          本来であれば月に一回文章を書くと決めていたのであるが、7月分はしばらく出せていなかった。個人的な事情として、フランス留学が決まり、諸々の準備に忙しかった。しかし、それは別として考えていることというのが減ったわけではない。 ここ最近の日本の世情というのは目まぐるしく変わっていた。特にオリンピックが開催されるということもあり、多くのニュースがコロナの問題を中心に動いている印象だった。 中でも僕が非常にショックだったのは、小山田圭吾に関するニュースである。過去のいじめ自慢記事を

          内輪ノリと意識高い系について

          嫉妬を運ぶ仲介業者

          本稿は、やさしさの哲学の続編である。直接「やさしさ」という主題に取り組むわけではなく、周辺にあるものから少しずつ核心にせまっていく。 ぼくが今回の議論で念頭に置いているのは、音楽・ファッション・生活でのキーアイテム、そういったものに起きる流行やトレンドといわれる流れのことであり、そのようなものがどのようにして起きているのか、ということである。 古今東西、情報というものは大きな価値を持っていた。古来から戦争においても情報戦としてスパイを用意し、敵側の動かす駒を先読みして駒を

          嫉妬を運ぶ仲介業者

          ラブソング

          ラブソング ぼくは彼女のことがほんとうに大好きだ。本当に愛してるし、市井の複製可能な恋と一緒にしないでほしい。だから、ツイートでもストーリーでもこの気持ちは伝えられない。noteであっても表現することはできない。そもそも彼女という言葉ですら、僕は使いたくない。恋に優越感なんてないし、恋に時間なんてものはない。恋という言葉ですらない。愛していて、自分の一部である。信頼している。安心できる。好きである。一緒にいたい。息があっている。気持ちが通じ合う。溶けていく。 市井の歪んだ

          ラブソング

          LIBEREX楽曲制作の裏側

          このページを開いてくださった多くの方には恐縮なのですが、まずはいくつか感謝を述べさせてください。 2021年春のM3、自分としては売り子も出展も初めての経験で、その上でこのような素晴らしいコンピレーション企画に参加できたことを、とても嬉しく思っています。 企画の主催をしてくださったMonarXさん、全楽曲のマスタリングを担当してくださったごはんがかりさん、そしてアルバムジャケットを制作していただいたんがーさん、ありがとうございました。 それぞれの方々のアイデアが結集して初め

          LIBEREX楽曲制作の裏側

          シン・エヴァンゲリオンを観たので熱の冷めないうちに雑記

          シンエヴァを見たので、雑感を述べておく。 決して僕はエヴァの大きなファンではないけれど、その物語に描かれている孤独や葛藤や人生問題のとらえ方に共鳴する者の一人である。 良い作品というのは、細かなディティールにこだわる製作的側面と、価値観を我々に押しつけてくるような芸術的側面が同時に訪れる。ぼくは文章において庵野監督が作り上げた製作的側面、あるいは細かなディティール、雰囲気としての映画的道具の使い方、その全てを拾い上げる自信が毛頭ない。あくまで感じているだけにすぎないと思う。か

          シン・エヴァンゲリオンを観たので熱の冷めないうちに雑記

          やさしさとはなにか

          ¥500

          やさしさとはなにか

          ¥500

          夢と美学のあるオタクに名前を付けよう

          金持ちになりたい人というのは今も昔も多くいる。同様にして、なにかしらの試験を前に(それはたとえば大学入試を前に)その試験に合格したいと思っている人は多くいる。 世の中には恋愛をしたいと願う人が多くいる。そのような人は「彼女/彼氏がほしい」と叫ぶ。 金持ちになりたければ、意識を高くする必要がある。けれど、意識が高いことをプラカードにすることはダサいかもしれない。恋人が欲しいと叫ぶことはダサいことかもしれない。〇〇大学に入りたい、と意気揚々に宣言することも、なにかしらの興が失われ

          夢と美学のあるオタクに名前を付けよう

          疑うということへの陰謀論

          つい最近から、#clubhouseというサービスが流行しはじめている。 フォローしている人の話している(あるいは参加している)ボイスチャットがラジオ配信のように番組として僕たちのアプリ上に現れ、軽率にもその輪の中に参加できる。自ら配信のルームを作成してラジオ配信のようなものを行うこともできるし、視聴者はそこに挙手することで配信に参加ができる(可能性が生まれる)。コメント欄もなければ、視聴者数も確認しにくいような仕様になっており、音声以外のコミュニケーションは極力切りおとされて

          疑うということへの陰謀論

          人生をやり直す

          「人生は冒険や!死んだらアカン!」という言葉が小学生YouTuberゆたぽんのキャッチフレーズであるが、ゆたぽんの意志を離れてこの言葉には何かしらのメッセージがあると思う。 ぼくはときどき、コスパの面や自分にとってのメリットデメリットを考慮して行動を選択することがある。一方で、世の中には飲み会だとか、一緒にディズニーに遊びに行くだとか、大学の授業でメインの話からそれてクラスメイトと雑談するだとか、一見わき道にそれたような行動をとらなければならない時が幾度とある。そして、そのよ

          人生をやり直す