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LIBEREX楽曲制作の裏側

このページを開いてくださった多くの方には恐縮なのですが、まずはいくつか感謝を述べさせてください。

2021年春のM3、自分としては売り子も出展も初めての経験で、その上でこのような素晴らしいコンピレーション企画に参加できたことを、とても嬉しく思っています。
企画の主催をしてくださったMonarXさん、全楽曲のマスタリングを担当してくださったごはんがかりさん、そしてアルバムジャケットを制作していただいたんがーさん、ありがとうございました。
それぞれの方々のアイデアが結集して初めて成功したコンピレーションだと思います。僕のような駆け出しコンポーザーの楽曲が確かなネタツイの主催の元、強靭なマスタリングとクールなジャケットで販売できたこと、これはDTMer冥利につきます。また後援で宣伝にも一助してくださった胴元のDJPoyoshiさんには、もはや足を向けて寝られません。このようなMEGAREXをオマージュしたアルバム制作を許してくださる心の広さにはもう頭が上がらなすぎてヤバいです。

感謝の言葉は一通りさせていただきました。
さっそくですが、コンピレーションアルバム「LIBEREX」に上げた楽曲『Faust』の制作裏側をお話ししたいと思います。


1.MEGAREX、LIBEREX、そのきっかけ

LIBEREXとは、MEGAREXという最強のレーベルをリスペクトしたアルバムになります。
そもそもMEGAREXがなぜ最強なのか、MEGAREXをまだよく知らない方にも読んでいただきたいが故に(既に知っている方には煩雑な内容ですが)最強の理由を少しだけ説明させてください。

MEGAREXとは、DJPoyoshiさんがはじめられたクラブミュージックをfeatureしたfutureな音楽レーベルです。洗練されたアルバムジャケットとキャッチーな音楽性が瞬く間に多くのオーディエンスを勝ち取りました。所属アーティストの活動の幅は大変に広く、音ゲーから日本のクラブシーンまで様々です。大阪では毎年レーベル主催の「レイヴ大戦」というイベントが行われています(いきたいよー!)。FutureCore, TechCore, Hi-Tech(FullOn?)といった、いまや一般名詞になっているようなジャンルの発展にも大きく関わっているレーベルです。僕個人としては、今あるFutureサウンドと形容される音たちの多くはMEGAREXから生まれてきたもののように思えます。知名度は海外にまで達しており、今やMEGAREX楽曲のコンポーザーは国際色豊かです。

僕個人のMEGAREXとの出会いを語らせてください。
楽曲制作をはじめた2019年、自分の好きな音楽は何なのか、という問答を重ねながら音楽を聴いていたところに「FÜGENE 01」の『Mitomoro - Arcadia Bae』という曲を発見した時のことです。


「なんやこの展開の曲」という衝撃が僕の中に走ったものです。この時点で、僕はMEGAREXの新たな音楽を開拓していく精神性に共鳴している側面がありました。
その後もざっくばらんに聴いていた音楽の中で、実はMEGAREX所属のアーティストであった、ということが後からわかっていく例が続出しました。特に僕はlapixさん・PSYQUIさん・Synthionさんの楽曲をよく聴いていたこともあり、彼らがMEGAREXに多く楽曲を出していることに何よりも衝撃を受けました。未来感のあるサウンドとダンサブルなビートのミックスの仕方が他にないもののように思えたものです。未来感のあるサウンドのみならず、多くのアルバムで新たな形の音楽を提示しているところも魅力的でした。音楽に新しさを求める姿勢とそのクールさに見惚れてしまったのです。

こんな具合で、僕はMEGAREXに対する強い憧れがありました。確かな時期は覚えていませんが、PoyoshiさんがMonarXさんの「メガレでたいコンピ」に言及しているツイートを見て、これは乗るしかないと思い、参加を決意することとしました。

2.制作過程:リファレンス、コンセプト

僕にとってMEGAREXとは、音楽的にクールであり、かつ挑戦的なサウンドを欠かさないレーベルです。これは音楽制作以外アート全般でも言えることのように思うのですが、制作とは常にイミテーション(真似すること)エクスペリメンテーション(実験すること)に支えられていると思います。というのも、かっこいい曲は常に過去の伝統(ジャンル)に支えられた展開やサウンド感を踏襲しています。一方で、自らの楽曲のアイコニックな要素として新たな要素を実験的に取り入れる姿勢も、かっこいい曲には常に含まれています。僕はMEGAREXの実験的要素がとても好きです。だからこそ、リスペクトと自分のオリジナリティをかき混ぜて、クールな曲を作り上げようと思っていました。

まず僕の念頭にあったのは、「NEURO JOURNEY」の『PSYQUI - Architect』でした。

deep house的メロウサウンドで緩やかなビートから一変、PSYQUIさん節の効いた、グルーヴ感を失わない変則ビート。PSYQUIさんにしかできない展開のミクスチャーを感じます。PSYQUIさんのドラマー経験者の要素が感じられて本当に良いです。Fusion的な要素もあるでしょうか。とにかくかっこいい。初めて聞いた時から、こんな曲を作りたい!という思いが強くありました。穏やかな展開から一変して激しくなる、この展開は僕の一番好きなパターンでもあり、僕がPSYQUIさんを愛している所以でもあります(LOVE)。

ちなみにですが、僕の一番好きなPSYQUIさんの曲を貼っておきます。これもまた、Architectと同じグルーヴ感を失わない変則ビートが感じられます(MRXー026、再販してほしいっ)。

今回の僕の楽曲制作の裏テーマは、このようなグルーヴ感を失わない変則ビートを目指すことにありました。そのため、この曲を聞いて踊れるか?ということについてはかなり気を使ったものです。

同時期によく聞いていた楽曲として、Srav3Rさんの楽曲を挙げさせてください。

みんな大好きTechCore、中でもSrav3Rさんの「Zenith Falls」には度肝を抜かれました。ハードコアにLofiHipHopを混ぜるという前代未聞の楽曲です。後にSrav3Rさんの出されるアルバムにも、ハードコアにLofiHipHopを混ぜるという挑戦的なExtend Mixが収録されています。

2曲とも、Srav3Rさんのオシャレを彷彿とさせる楽曲構成に惹かれたものです。未来的なだけでなく、挑戦的な楽曲がMEGAREXの特徴です。僕なりにこれらを料理できないか、そういったことをこれらの楽曲から長いこと考えを回らせていました。

自身の楽曲制作において直接的なリファレンスにはなっていないのですが、他にも多くの楽曲から間接的に影響を受けています。特に僕は長くFutureBassと呼ばれるようなジャンルのサウンド感を(主にYUC'eさんやNorさんやFÜGENEから)吸収してきていたので、そのようなサウンド感が各所に見られるかもしれません。本当はたくさん紹介したいのですが、曲を絞ってイチオシのものを。

lapixさん+YUC'eさんとかいう伝説の曲です。本当に好き。

個人的に最高アルバムだと思っているNECROMANCEから1曲。テクニカルでありながらダンサブルなハードコアなのが、本当にすばらしいです(クラブで爆音で聴きたい!)。

さて、そんなわけで、僕の中には上にあげた2曲のテーマ性が念頭にありました。こうしたアイデアの段階から、楽曲全体の統一感を得るための指針を立てようとなったのです。色々と考えあぐねたのですが、ふと思いついたのが、「Lo-Fiのざらつき」というキーです。あえて、楽曲をLo-Fi的なまとめにして、Lo-Fi部分とDrop部分の差を演出する、そしてまたLo-Fiに戻る。このような展開はどうだろうか、そう僕の発想は落ち着くこととなりました。
Lo-Fiというジャンルは大変に広い領野であり、いまだに多くのジャンルとのミックスが進んでいるとは言えません。それは、Lo-Fiと相性の良いジャンルも限られているからでしょうか。なので、あくまでハードコアチックに、しかし、「Lo-Fiのざらつき」というキーワードでパートを繋げる。これができたら面白くなるのではないか、と思ったのです。

当時の僕は、Lo-Fi HipHopはアーメンブレイクと相性がいいんじゃないか、そして、同様にチップチューンとも相性がいいんじゃないか、そんなことを夢想していました。双方とも、あえて解像度を落とすことで良さを出しているサウンド感だと思います。そして、これをもとにハードコアのBPMで変則ビートを導入すれば面白くなるのではないか、そんな風に考えました。
ここまでアイデアが煮つまると、制作はあっという間に進んでしまいました。細かなミックスの調整を抜きにすれば、3日程度で大方の展開は決まったのではないでしょうか。普段の作曲はそんなにスラスラとコンセプトが決まるわけではないのですが、この時はあっという間に作りたい曲の構成が決まっていきました。

そして完成した楽曲が「Faust」になります(再掲)。

展開は
ボーカルを聴かせるイントロ→変則ドロップ→ローファイなハードコア(1stDrop終わり)
→LoFiHipHopな間奏→ボーカルチョップ(前ボーカルの素材で制作)→変則ドロップ→ローファイなハードコア(終わり)

という形になりました。こう書き出してみるとシンプルなものです。音や展開の新しさで聴衆をとどめさせられないか?ということに、やはり気を付けたいと思ったからなのでしょうか。今の僕はそんなふうに感じとれます。

3. おわりに


何度も言ってしまって恐縮なのですが、LIBEREXに参加できたこと、ありがたい限りです。
そして、個人的にも今回の僕の曲はお気に入りです。みんなに聞いてほしい!!! 心からそう思っています。

そして、是非とも皆さん、 M3に来れなかった皆さんは是非に、オンラインで買ってくださいっ!!!





以上

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