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新型コロナ時代こそ漢方(7) くわしすぎ!これが中国の新型コロナ完全医療マニュアル


なぜか知られていない「新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック」60ページ超、日本語版も

前々回の記事で、Noteを始めたかった理由を述べました。それは中国という新型コロナの先駆者が、経験に基づくたくさんの知識を2月には世界へむけて発信していたのに、どこの国にもいきわたった形跡がなかったからです。専門家にも、一般レベルにも。

そういった情報の出所は、政府や主な病院、有名な指導家など多岐にわたっており、現在も刻々と発信、更新が続けられています。

そのなかでも、中国のトップ医療機関である浙江大学院付属第一病院の臨床経験をもとに、世界の医療専門家、つまり病院、西洋医師、看護師、中医師向けに書かれた60ページもの小冊子「新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック」が秀逸です。今回は日本語版ダウンロード先とともに紹介します。

小冊子マニュアルは、中国のAmazon的存在の巨大ウェブ企業、アリババグループが運営する非営利プログラムGMCC(Global MedExchange for Combating Covid-19)を通して発行されています。プロの手で翻訳されたとみられる英語・日本語を含む10か国語バージョン以外にも、有志ボランティアによって、なんと12か国語が訳されています。

浙江大学院付属第一病院は、浙江省の委託で1947年に創立された初の国家地域医療センターです。国内外で名を馳せる名門で、中国全国病院総合ランキングでは浙江省では10年首位、また伝染病学の分野では6年連続で中国全土トップです。米国の名門スタンフォード大学、米国ジョンズ・ホプキンス病院をはじめとする世界の一流機関とも協力関係にあります。

新型コロナが猛威をふるった出版前の過去50日のうち104人の新型コロナ陽性患者を受け入れた結果、死亡者ゼロ、医療スタッフ感染ゼロを記録したとされています。

しかし3月18日付で発行されているのに、その存在および20か国語以上の翻訳版がだれでも無料ダウンロードができることすら、ほとんど知られていないようです。

小冊子はカラーPDFフォーマットでプロフェッショナルに製本されており、新型コロナのことを知らない人もこのマニュアルさえあれば治療できるのでは思えるほど、こまかい内容がていねいに記載されています。

よく散見する文章だけの論文やSNS拡散系のメッセージ記事とは一線を画しています。

これが無料で3月の時点で入手可能だったとは、と知らなかったのがもったいないような内容だと思います。日本の医療環境においてどのくらい応用があるかはケースバイケースの部分もありますが、医療関係の方はもちろん、一般の方にも参考文献としては十二分ではないでしょうか。

内容は:

1.予防と管理(全5章)
2.診療経験 (全17章)
3.看護経験 (全6章)
付録(全2章)

の三部構成です。

マニュアル内の漢方紹介


この医療マニュアルにおいては、世界共通である西洋医学的なアプローチに主眼があり、漢方薬の治療の言及は1ページ程度です。またこの中で紹介されている漢方処方5種類は、日本では実用がややむずかしい生薬の組み合わせです。

しかしこのような公式な形態の西洋医学マニュアルに、東洋医学のスペースが章立てられ、「漢方薬による治療効果の向上」と題されていることに、中国の西洋・東洋統合治療における漢方のプレゼンスが示されており、興味深いものがあります。

ところでこの漢方のページですが、やや残念なことになっています。材料の生薬の記述がカタカナ・ひらがな・漢字が混在しており、たとえば生薬の名前もキョウニンが「杏仁」「アーモンド」だったり、薏苡仁が「ヨクイニン」「ジュズダマ」だったりと、表記に一貫性がありません。

どうも日本の漢方名になじみがない方がこのページを担当されたようです。日本で漢方を専門とされていない方が読むと誤解をまねきそうなので、一応GMCCに連絡しておきました。

そういった問題はありましたが、他のページは私がざっとよんだ感覚だと問題はないようです。スピード重視で作成されたらしいので、細かくみるとよりよい言い回しや誤字がありそうですが、全体的には日本語版の翻訳はそのまま出版できるクオリティで書かれていると思います。ご一読をお薦めいたします。

東京エリアはすでに医療崩壊に入ってしまっていますが、これから医療崩壊リスクを迎える地方の医療従事者や行政指導の関係者、マスコミの方々への何らかの参考になればと思います。ご賛同くださる方々には、拡散していただけたら幸いです(本記事に言及いただけたら嬉しいです)。

ご参考までに、全て漢字に統一した、漢方(中医薬)5種類の処方生薬リストはこちらです。なお内容は漢方プロ向けで、服用と購入には漢方製剤資格を持つ方による診療と処方が必要になります、ご了承下さい

1)寒湿郁肺:麻黄6g、杏仁10g、薏苡仁30g、甘草6g、黄芩15g、藿香10g、芦根30g、貫眾15g、茯苓20g、苍术12g、厚朴12g。

2)外寒内熱:麻黄9g、生石膏30g、杏仁10g、甘草6g、黄芩15g、瓜蒌皮20g、枳壳15g、厚朴12g、肺形草20g、桑白皮15g、半夏12g、茯苓20g、桔梗9g。

3)寒熱錯雑:半夏12g、黄芩15g、黄連6g、干姜6g、大棗15g、葛根30g、木香10g、茯苓20g、浙貝母15g、薏苡仁30g、甘草6g。

4)疫毒内閉:安宫牛黄丸

5)肺脾気虚:黄芪30g、党参20g、炒白术15g、茯苓20g、砂仁6g、黄精15g、半夏10g、陳皮6g、山薬20g、蓮子15g、大棗15g。

ダウンロードの説明


リンク先(ページは英語です) 
https://gmcc.alibabadoctor.com/prevention-manual#prevention_manual

ダウンロード方法
1. 上のリンクをクリックし、「日本語」と書いてある四角いボタンを押す2.ブラウザ内でPDFファイルを開ける場合は、オレンジのボタン「Read Online」ボタンをクリックする
3. PDFをダウンロードしたい場合は、その横のふたつのボタン「Download Compressed Version(圧縮版)」「Download Standard Version (標準版)」
のどちらかを押す

参考1)
リンク先にある小冊子の説明文の抄訳
(by 私):

イントロダクション
エピデミック感染症との闘いに勝つためには、国際的な交流と協力が不可欠です。浙江大学医学院付属第一病院は過去50日で、104名の感染陽性患者を受け入れながら、奇跡の「死亡者ゼロ、診断ミスゼロ、スタッフ感染ゼロ」を達成しました。日々、前線に立つ医療スタッフ達は予防・コントロール・医学的治療における経験を書き留め続け、短期間でこの「感染対策ハンドブック」を出版することで、実用的なアドバイスと参考情報が世界中の医療スタッフに伝わることを願いました。本マニュアルは、出版を経るにあたり中国国内の他のチームによる経験を比較・分析してあり、患者の区分ルールや診断と治療のプロセスで起きうる様々な問題に対し、細心の注意を払った包括的な答えを提供しています。中国トップのエキスパートが最適と考える意見を集結してあり、臨床や看護、そしてその他の重要な部門にとって、良質の参考情報となるように作成されています。

主な内容:
· エピデミック感染症の予防と管理の技術的戦略
· 致命的疾患の診療計画
· 看護方法と経験

本ハンドブックは現在中国語、英語、イタリア語、フランス語、スペイン語、日本語、ドイツ語、ペルシャ語、バハサ語(インドネシア)、アラビア語の翻訳版があります。その他の言語もボランティアによって寄稿され続けています。本情報シェアセンターでは、さらなるエピデミック対策になる情報を配布し、実用的な提案と参考資料を世界中の医療スタッフに届けていきます。


参考2)
同リンク先ページの上の方にある、GMCCプログラムの説明の抄訳
(by 私)

GMCC(Global MedExchange for Combating Covid-19 )とは: 

情報シェアと協力こそが、この未知なる新しいウイルスに打ち勝つ一番の処方箋といえます。

ジャック・マー財団とアリババ財団の協賛で設立したGMCCことGlobal MediXchange for Combating COVID-19 は、アリババ・クラウド・インテリジェンスとアリババ・ヘルスの後援を受け、世界的な感染爆発が起きている新型コロナウイルスCOVID-19と戦うのが目的です。このプログラムは国境を越えたオンライン上でのコミュニケーションと協力を促進し、世界中で現場の最前線に立つ医療チームが、パンデミックの対抗において必要で実用的な経験情報のシェアを行える場を提供するために設立されました。本サイトは情報センターとして、海外の中国人同胞に対し第一線に立つ医師による予防と治療のコンサルテーションを提供し、科学的な医療リサーチ機構をAI、ビッグデータ、クラウド・コンピューティングを駆使してサポートしています。GMCCは以下の4つの情報センターで形成されています:

①リソース・シェアセンター
:パンデミックに関する権威ある情報シェア
②国際医療エキスパート交流センター
:各地の医療スタッフがリアルタイムで最新のエピデミック感染予防とコントロールの診療経験を意見交換
③COVID-19中国語コンサルテーションセンター
:海外の中国人同胞にリアルタイムで健康コンサルテーションとオンラインQ&Aを提供
④対COVID-19テクノロジーセンター
:革新的なアンチ・エピデミック技術のプレゼンテーション

「今や、このウイルスに勝つためには私達がお互いの情報手段、ノウハウ、痛みを通した教訓の共有が不可欠なのだ。」

ジャック・マー財団創立者 ジャック・マーのメッセージ


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