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サブカルこけしの日常

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30歳を過ぎてから男性→女性に性転換した人の徒然なる文章たちです。誰の役にも立ちません。
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#コラム

真っ白。

母から電話があった。

いつもの調子だった。いつもの口調で始まった。

いつもの内容の無い、遠回しに家にたまには顔を出せといういつものアレかと思った。

その電話はいつも、親不孝をしているな。という気持ちにさせられるから得意ではない。

普遍的な、意味の無い電話とはどれだけ幸せな事なのだろう。

電話を切るまで、当たり前に存在するものがどれだけ幸せなのか忘れていた。

いつもの母の声。いつも気にか

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手紙

とても内気で、でも笑顔が印象に残るお客様でした。

ある日、お見送りに出たわたしに。

「これ。受け取ってください。」それはうすむらさき色の便箋でした。

男の方からお手紙を頂いたのは初めてでした。

美しい文字とは言えませんでしたが、わたしの事を考え思い出しながら筆を進めて下さったと思うと心が温かくなりました。

筆圧高くちょっと歪んだ文字も朴訥な人柄そのものでとても嬉しく思いました。

メール

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女にしか見えない男。

わたしは週に2日くらい所謂、ニューハーフBarで働いている。

そこには性別を変えたりすることは考えていない、趣味で女装をする男性「女装子/じょそこ」と言われる人達やゲイ・レズビアンなどの性的少数者/セクシャルマイノリティと言われる人達、その他ノンケと言われる一般の男女など様々な人が訪れる。

セクマイの人達と出会い、友人にもたくさん増えるようになってからわたしはマイノリティ(少数派)と言われる人

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ブスの戯言。

2016年。わたしの事を好きだという男性が現れ始めた。

奇特だ。

そして揃いも揃って皆、不器用だ。

たった一人を除いて。

先ず。不器用チーム。

みんな、わたしの何を知って好きになるのだろう。その理由が見えてこないし伝えてもくれない。

お店のカウンター越しに見てるわたしは…24時間×365日のほんの一部分だよ。

ならば顔なのだろうか?顔なら顔と言って欲しい。

わたしは自分の顔が好きで

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家族。

春の強い風が吹く。桜も散った。空は夏に向かって高く青く、雲は白く早く千切れ流れていく。

女性化しようと決意し、それから女性ホルモンを投与し二年が経つ。明確な勝算があったわけではない。むしろ諦め半分、それでも諦められなかったからリスクを取った。

自分が女だと信じて疑わなかった。そんな世の中のトランス像に当てはまるような感情もなかった。

ただ、自分のやりたい些細なことや本当に望むことは女性性にし

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ともだち-2。

「自分なんて探したって見つからないよ。」

わたしは最近女性ホルモンを始めた友人に軽口を叩く。

彼女は一人旅が好き。そして一人遊びが上手。

たまにTwitterにおセンチな短文を呟く。そしてここ数年、毎日きちんとブログを更新している。

その度にわたしは彼女の書き記したものを覗きに行く。

わたしは彼女の不器用で一生懸命なところがとても好きだ。

それ以外にもたくさん好きなところがある。

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けっこんしき。

昨日、弟の結婚式に参列してまいりました。

わたくし、3人兄弟の長男でして…結婚するのは末っ子。

とってもおめでたい日なのですが、家族にカミングアウトしていないわたしとしてはハードルの高い行事なわけです。

先ずメンズのスーツが似合わない。

同居人の子からするとメンズスーツを着ているスッピンの女の人にしか見えないとの事。

そしてわたしはメンズのスーツを着たくない気持ちが(なんなんでしょね。フ

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おんなをはじめたとか簡単に書いているけど。4

最近Twitterで「ヴァギナを持つ男」という凄まじくバカパク(バカインパクト/ボキャブラ世代にしか通用しない…)な異名を持つ方がタイムラインに流れてきました。

まぁ「ヴァギナを持つ男」は私の周りにもまあまあ居るもので。すぐにどういう事かというのは理解出来たのですが。

いわゆるFtM(Female to Male/男から女/おなべ)と言われる方です。

あ。申し遅れましたが…わたしのようないわ

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おんなをはじめたとか簡単に書いているけど。3

ほんの少しの可能性。それを選んだわたし。

あれから1年半くらいは経つけれど。一体どうなんでしょう?

友人たちは随分変わったよ!って言います。

わたしもある程度は期待していました。

お世辞にもよく女性化しようと思ったわね...って思ってしまったくらいには女らしくない白人男性が見事に女性化していく動画などを見て…

「うん。この人でこれくらいになれるならイケるっしょ!」なんて。

でもねー。実

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