手紙

とても内気で、でも笑顔が印象に残るお客様でした。

ある日、お見送りに出たわたしに。

「これ。受け取ってください。」それはうすむらさき色の便箋でした。

男の方からお手紙を頂いたのは初めてでした。

美しい文字とは言えませんでしたが、わたしの事を考え思い出しながら筆を進めて下さったと思うと心が温かくなりました。

筆圧高くちょっと歪んだ文字も朴訥な人柄そのものでとても嬉しく思いました。

メールでも同じ内容は書けるでしょう。むしろ今の時代、そちらの方が早い。

でも、その一手間や直接会って渡しに来て頂けるお心遣いが尊いものです。


わたしはその気持ちにその方が望む形ではお応え出来ませんでした。

もっと誠実に、もっと真心を込めてご対応させて頂けたはず。

後悔が残っております。


この文章はあなたには届きません。

男の人から頂く手紙という貴重な経験を下さったあなたのことは一生忘れません。

いつかどこかで、またあなたの笑顔に出会えたら。それだけは伝えたいと思いました。




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