【読書・演劇】神(シーラッハ)
2024年7月22日(月)、下北沢の駅前劇場で、劇団ワンツーワークスの舞台『神[GOTT]』を鑑賞しました。記録を残します。
■観劇・読書したきっかけ
(1)私の問題意識
『神』は、ドイツの作家、フェルディナンド・フォン・シーラッハによる作品です。安楽死を扱っています。
「政治」と「文学」の関係(接点)というのも難しい問題ですが、例えば、様々な時代の政治状況の下、どのような文学作品が生み出されてきたのか、Aという作家はどのような政治思想を持っていたのか、など、まだ議論の糸口が掴めそうな気がします。扉がいくつか並んでいるとすると、個人的には、「宗教」「政治」「演劇」「文学」などは、近い位置にある気がするのです。
他方、「法」と「文学」の関係(接点)というと、また一段、難しいような気がするのです。もちろん、刑法や刑事訴訟法に関連した推理小説や刑事小説はありますし、相続など民事法を扱った小説もあります。「法」は、紛争解決手段でもありますし、紛争事件をもとにした文学作品と言えましょうか。
もう少し違った観点で、「法」を扱った文学作品はないか、高校時代の友達に相談したところ、紹介してもらったのが、シーラッハでした。
(2)シーラッハとその作品について
シーラッハについて、調べてみました。Wikipediaによると、フェルディナンド・フォン・シーラッハはドイツの小説家で弁護士です。
祖父はナチ党全国青少年指導者バルドゥール・フォン・シーラッハとあります。この祖父の存在と、フェルディナンドに与えた影響については、また別の機会に、作品を読んだりしながら考えてみたいと思います。今回は、話がそれて行きそうなので、あまり深入りしないようにします。
作品については、東京創元社から酒寄進一さんの訳で出版されているのが多いようです。(全部、酒寄さんの訳でしょうか。)
今回の『神』は、ドイツでは2020年、日本では2023年に刊行された本のようです。
(3)ここまでの感想
まだ一冊しか手に取っていなくていなくて大変恐縮なのですが、「法」には、神の法・教え(宗教)も含まれ、あまり宗教に寄りかかりすぎず、現代において、「法」に対峙する人間の姿が描かれているようで、面白く思いました。
もっとも、「法」と「文学」を議論する上での切り口は、まだまだ他にもありそうな気がしていて、これからも追い続けてみたいテーマです。
■本作『神』について
(1)あらすじなど
(2)メモと感想
安楽死を扱った公開討論会です。本自体、戯曲形式になっていました。
そして、演劇では、観客が議論に参加する訳ではありませんが、公開討論会の最後に、「賛成」か「反対」か投票する流れとなっていました。参加型の演劇で面白かったです。
公演期間、各回の投票結果については、劇団ワンツーワークスのHPに公開されています(↓)。
結果に大きな傾向は見られますが、上演回の舞台の流れ(役者の方の演じ方)によって、結果も左右されるのでしょうか。俳優の皆さんの演技も、観客に訴えかけるような部分がありました。
また、今回は裁判ではありませんでしたが、公開討論会の様式性が、演劇の持つ様式性の部分に重なるような感じがして、面白かったです。(この点、まだ勉強不足なので、十分に理解したとは言えませんが。)
内容としては、「自己決定権」を扱っていました。どこまで自由に生きられるか、自分の死について自分で決められるのか、医学の観点や宗教の観点、共同体としての観点などから、どのような制約が及ぶのかなど。「パターナリズム」というのもあるのでしょうか。
また、技術は大きく進歩しています。「最近の技術の進歩はすごいなぁ。」と感慨にふける部分もありますが、別途、どのように行動していくのか、考えていかないといけない部分もあるような気がします。
■補記と最後に
今回、舞台で理解が及ばなかった点を中心に、シーラッハの本を読書してみました。そして、私が観劇した回は、酒寄進一さん(ドイツ文学者・翻訳家)と古城十忍さん(劇団ワンツーワークス主宰者)のアフタートークがありました。そこで私は、シーラッハがドイツで大変有名な劇作家であることを知りました。
裁判の話もあるようで、少しずつ他の作品も手にとってみたいと思います。
[補記]劇団ワンツーワークスの舞台を観るのは今回が初めてでした。同劇団のHPには「(主宰者の古城十忍さんは)これまで少年犯罪、不妊治療、在日差別、復讐の連鎖など、さまざまな社会問題をジャーナリスティックな視点から描いた作品を数多く発表。」とあります。今回の安楽死を扱った作品を上演されたのも、親和性がある気がしました。
冒頭の画像は、「十字架」で検索し、円衣めがねさんの画像を使用させて頂きました。ありがとうございました。
本日は以上です。
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