野党は「戦争法反対」の過去を清算できるか 参院選の最大テーマ
維新が「9条改憲」を主張
維新の馬場幹事長が14日の国会憲法審議会で、
「9条をめぐる議論に真剣に向きあうべきだ」
と発言した。
こんな事態の中でも、9条をストレートに問題にしない改憲論議に業を煮やした発言で、まさに正論である。
メディアは、これをそのまま報じるが怖かったのだろう。共産党の愚にもつかない「反論」を併載して「維新、共産が応酬」などとバランスを取ったつもりの「へっぴりごし」だ。
馬場はおおさか維新の幹事長時代から「9条改憲」を主張しており、一貫している。決して時流便乗ではない。
共産を支持する立憲、曖昧な国民
今のところ、他の野党から、馬場発言を支持する声は出ていない。
それどころか、それに先立ち立憲民主党は、泉代表が共産党の立場を支持する発言を出している。
国民民主党の榛葉幹事長は、共産党に疑問の声を挙げたが、維新の「9条改憲」発言を積極的に支持するには至っていない。
国防論議、「今」を逃すべきではない
今度の参院選は、日本の安全保障問題をテーマにすべき選挙だ。
ウクライナ紛争は年内続くだろう。そして、国政選挙は、参院選の後、当分ない。
れいわの山本太郎が鞍替え会見で、「参院選の後、空白期間ができる」と言ったとおりである。
衆院、参院とも、次の任期満了選挙は2025年になる。その前年2024年には米大統領選がある。
いま、この夏に、日本の安全保障問題を課題にしなければならない。
日本の政治家とメデイアには、それを国民的議論に発展させる義務がある。
「戦争法反対」を叫んだ過去
しかし、野党には、安全保障をテーマにしにくい事情がある。
ほとんどの野党が、2015年のいわゆる「平和安全法制」に反対し、その勢いで野党がまとまった過去があるからだ。
民主党政権が終わって以後、低迷していた野党が盛り返したのが、メディアと共に展開した、あの「戦争法反対」の大運動だった。
その勢いで、旧民主党と旧維新の会が一緒になり、民進党ができる。今の立憲と国民のルーツである。
2016年の民進党結成大会では、SEALDsの奥田愛基が来賓挨拶した。
だが、今から振り返れば、あの「平和安全法制」こそ、ウクライナ情勢でその必要が明らかになった「集団安全保障体制」である。
平和安全法制は、自民党と公明党の賛成だけで成立した。
その成立に真っ先に歓迎の意思を示したのがNATOだった。
そして、この成立に反対した国は世界中で3国だけ。
ロシア、中国、北朝鮮だった。
安倍晋三に「戦争屋」のレッテル張り
この野党の「戦争法反対」運動を完全サポートしたのが朝日・毎日をはじめとした左派メディアだった。
菅野完の「日本会議の研究」、青木理の「安倍三代」、望月衣塑子の「新聞記者」などの「反安倍」書籍をもてはやし、平和安全法制の安倍晋三と、60年安保の岸信介を重ね合わせて、「右翼」「戦争」イメージを強化した。
しかし、岸信介が日米安保継続で正しかったように、安全保障の方向性に関して安倍晋三は正しかったのである。
それなのにメデイアは、「戦争法反対」の余熱を絶やさないよう、その後もモリかけ桜で、「アベガー」のイメージ操作を持続した。
折しもトランプ大統領の登場で、知識人は「アメリカの専横こそが脅威」という認識に傾きがちであった。それもこうした状況を後押しした。
(「戦争法反対」は、ソ連・中国を含む「全面講和論」にこだわって日米安保に反対した戦後左派知識人の轍を踏むものだった)
結局、安倍と平和安全法制を攻撃し続けることで、メディアも、知識人層も、ロシア・中国・北朝鮮の側に協力していたのである。(いわゆる左派メディアだけでなく、文藝春秋も「反安倍」に唱和した。文春が安倍と菅野志桜里を排斥したことは記憶されていい)
安倍のロシア外交が失敗だったのは事実だとしても、プーチンをつけあがらせた者がいたとすれば、安倍ではなく野党やメディアだ。
アメリカが脅威、という見方こそロシアなどのプロパガンダだった。脅威はアメリカではなくロシアだった。それがはっきりしたのが、今回のロシアによるウクライナ侵攻である。
人びとが忘れているのをいいことに・・
野党が安全保障論議を避けたいのは、平和安全法制に反対した過去が後ろめたいからだ。
あのとき野党は、ロシア・中国・北朝鮮に協力したのである。
改憲論議にしても、それを蒸し返されることにつながるから、積極的になれない。
野党の中で、共産党だけは、いまだに「戦争法反対」のノリで行けると思っている。だから志位委員長の積極的発言が目立つ。今の党員が離れなければそれでいい、と考えているのだろう。
立憲が共産との共闘に固執するのも、「戦争法反対」時の盛り上がりの記憶があり、夢よ再び、と思っているのだろうが、ウクライナ紛争が長引くにつれて、不利を感じているはずだ。
立憲としては、「戦争法」に反対してロシアの味方をした過去については、国民は都合よく忘れているから、選挙が終わるまでは触れてほしくない。
国民が忘れているのは、その後、野党が何度も「党名ロンダリング」を経ているからだ。
あの時、せっかく「戦争法反対」でまとまった民進党だったが、選挙で勝てなかった。要するに、あれはメデイアが作った空騒ぎだったということだ。
都知事選で鳥越俊太郎が惨敗した後、選挙に勝った小池百合子の希望の党に合流し、党勢を回復しようとした。
希望の党は保守色が濃かったので、左派系を排除した。排除された左派が作ったのが立憲民主党であり、それが2017年衆院選で、判官びいきもあって意外な人気となった。
結局、希望の党は瓦解し、残った民進党メンバーが国民民主党になる。
ちなみに、今の日本維新の会は、旧維新が民進党に合流する前に別れた大阪系である。
だから日本維新の会は、「戦争法反対」に加わった過去がない、事実上唯一の野党だ。安全保障問題を遠慮なく論じられるのはそのためだ(政策上も平和安全法制に肯定的)。
国民民主党は安全保障で旗幟鮮明にせよ
もともと保守系が多い国民民主党は、維新とともに安全保障論議を進めたいところだろう。
京都選挙区で維新と選挙協力するニュースもあった。
しかし、略称問題に見られるとおり、いまだに立憲民主党との関係が気持ち悪いままだ。
連合から「あまり立憲と喧嘩しないように」とか言われているのかもしれないが、「戦争法反対」に加わってしまった過去も引きずっている。
今のところ玉木代表は、「トリガー」にこだわる「国民生活第一」的スタンスで、安全保障論議を前面に出せていない。
安保にあまり触れてほしくない立憲は、「安保よりも生活が第一」路線に、れいわなどとともにますます傾斜していくだろう。
だからなおさら国民民主党は、ここで「戦争法反対」の過去を素直に反省し、安全保障問題で共産党と親和的な立憲民主党を、はっきり批判すべきだ。
そして、集団的安全保障体制をより強固にすべきこと、そのためには9条改正が必要であることを、維新とともに主張してほしい。
両野党は、安全保障論議、9条改正論議で国民世論をリードし、保守系で大きな塊を作って、左派野党をさらに少数派に追い込むべきである。
まずは日本を守ることだ。政権交代は、そのあとの課題でいい。
維新も国民民主党も、安保論議を経てこそ、日本を任せられる、政権交代可能な野党だと人びとに認められる。
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