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井上達夫が語る「本当のリベラリズム」

昨日は、YouTube番組「8bitNews」に井上達夫(法哲学、東大名誉教授)が登場し、倉持麟太郎を相手に新著『ウクライナ戦争と向き合う』について話していました。


予定時間を超過したその番組の、最後の最後に、「これだけは言わせて」と、井上がリベラリズムについて短く語りました。

それが、含蓄があると思ったので、以下に太字で文字化しておきます(一部省略と簡約化を含む)。


リベラリズムは強い人間の思想だという人がいる。自立とか、自己決定とかは、強い人間にしかできない。人間は弱いんだから、えらい人が弱い人の面倒を見るべきだ、と。


しかし、その「人間は弱い」論にもとづき、自己決定や自立を否定して、パターナリズムでいいという人は、だれか例外的に強い人がいると思っている。


それはだれ? エリート? 専門家?


専門家は頼りになるのか。福島原発は危なかった。コロナ対策でも専門家内で意見が分かれる。私が憲法のことを言うと、憲法学者から、法哲学者が口を挟むなと言われる。今度のウクライナ問題でも、ロシア史の専門家から、素人が余計なことを言うなと言われる。


私はえらい人でもなんでもない。私は叩かれることは覚悟でやっている。でも、専門家に対して黙っちゃダメなんだ。


弱い人間だからこそ、言わなければならない。言って、間違っているなら、それを教えてください、と。みんなで議論をしましょうよ、と。


そして、決定していかなければらない。それは自分たちで決めたのだから、他に責任転嫁できない。間違っていたら、是正していく責任も引き受けましょう、と。


これが本当のリベラリズムの精神だと思っているんです。


弱い人間だからこそ、リベラルな自立も必要だし、民主的なシステムも必要なんだ、と。



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