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中国の巧妙な検閲 『三体』をめぐって

3月21日からNetflixで始まるSFドラマ「三体」。


きょう(3月8日)付けで、キービジュアルが解禁されました。


Netflix「三体」のメインビジュアル



わたしもけっこう楽しみにしていて、予習のため、中国人作家・劉慈欣(リウ・ツーシン)の原作『三体』を最近読みました(ただし、最初の1巻だけ)。

あの作品は、中国の文化大革命の印象的な描写から始まる。

そこで、思うわけです。

「中国人が、文化大革命をこんなふうに描いていいのか。中国も自由になったな」

と。


でも、事情はそう単純ではない、というのを大恵和実という人が書いていて、面白かった。

大恵和実「中国文学の最前線――躍進する中国SF④」(WEB『東方』2022年8月15日)


興味ある方は上記記事を読んでいただきたいですが、わたしなりに要約すれば、


・文革は、公式に当局が「誤り」だったと認めているので、それに触れるのはタブーではなかったが、天安門事件などは一貫してタブー。

・習近平体制は、最近「文革」もふくめて、規制を強めている。

・しかし、「三体」など、過去作品については黙認している。


中国政府は、その負の歴史を国民の目に触れさせないように、情報統制をすすめているのである。ただし、劉慈欣『三体』をはじめ文革を扱った過去の作品には特に手を触れていない点が巧妙である。表向き文革はタブーではないと喧伝しつつも、新作や海外SFの翻訳では文革がタブーという二重構造になっているからだ。
(大恵和実 前掲)


つまり、外にたいしては「中国には言論の自由がある」と見せかけて、内にたいしてはがっちり統制している。


中国は変わっていない。

中国は変わらないーー宇宙人でも攻めてこないかぎり。ということですね。


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