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怒りの自慰

きのうXに投稿されていたアメリカのニュースが私の目を惹いた。

ファストフード店に入店拒否された28歳男性、怒りの自慰行為…その後、駆けつけた警察官にハイキックを見舞い逮捕 米・フロリダ州
(ゼロ次郎 3月28日)


先週の21日、マイアミで起こった事件だ。

「ファストフード店に入店拒否され」とあるが、もと記事によれば、ファストフード店ではなく、「スロッピー・ジョーズ・バー」というバーである(ヘミングウェイも通ったという有名なバーらしい)。

真夜中の繁華街で、この元軍人の28歳の男は、すでにそうとう暴れていたようだ。

近隣の店から通報があり、警察が駆けつけてきたときは、男がバーへの入店を断られ、店の前で「怒りの自慰行為」を始めたところだった。バーの店内からも局部が見えたので、客はショックを受けた。

手錠をされたあと、警官にハイキックしたので、公然わいせつに、暴行と公務執行妨害の罪状がくわわった。


いっそう興味深かったのは、この投稿に付いた、以下のリポストだった。

10年前に、韓国で同じようなことがあったという投稿だ。



ソウル市内のある男女共学高等学校の教師が生徒をひどく殴った後も怒りを抑えきれなくなり、多くの生徒たちが見守る前でオナニーまで行ってショックを与えている。
ソウル・陽川(ヤンチョン)警察署では傷害と公然わいせつの疑いで、臨時教師のA容疑者(55歳)を書類送検したと17日に明らかにした。

(2013年4月17日 CBS)


怒りを抑えきれないと、人前で自慰行為をする男たちがいるらしい。

同じ男として、というか、私の生理的・生物学的センスでは、理解できない行為だ。


だって、腹が立つと、アタマに血が上るものだろう? なんで、下半身に血が行くんだ?

あ、そうか、血を下半身に移動させることで、アタマを冷やそうとしてるのか?

それにしても・・・。


私も、生まれてこのかた、まあ1回くらいは自慰行為をしたことがあるかもしれない(もっとしたかもしれない)。

でも、怒りとアレは、私のなかでは、まったく結びつかない。

性にまつわる事象は、不可解なことばかりだが、この「怒りの自慰行為」も不可解で、そのぶん興味深い。(もちろんガクモン的な意味で)


とくに、韓国文化の中で表象される自慰行為は、日本とは違うのではないか、ということは前にも書いた。

韓国の映画やドラマを見ていて、そう思ったのだ。


日本のドラマや映画では、あまり描かれない男の自慰行為が、韓国ではよく描かれている気がする。

若者の日常の1コマとして登場することもあれば、欲求不満の表現として登場することもある。

日本のドラマで、(元)ジャニーズのタレントとかが自慰行為をする場面が出てくるだろうか。

イケメン俳優でなくても、そういう場面がシナリオにあったら、拒否されるような気がする。(そんなこともない?) 

いずれにせよ、韓国の映画やドラマでは、わりに普通に出てくる。


印象的だったのは、2002年のヒット作「公共の敵」における、イ・ソンジェの自慰シーンだ。



初登場の場面で、彼は浴室で激しい自慰行為をしている。

そして、次の場面、ローブをまとって浴室から出たら、かけよってきた小さな子供を抱き上げて、美しい妻にキスをする。

その自慰は、美しい妻と、可愛い子供に囲まれた、幸福なはずの生活で、彼が満たされていないことを表現している。

実際、彼はそのあと、すぐに殺人事件を起こす。


この演出での自慰行為は、「怒りの自慰」に近いかもしれない。

こういう自慰行為の扱い方、というか、自慰行為の解釈が、日本にはないのかもしれない。

ヤクザ映画とかで、ちくしょー、アタマに来た、オナニーしてやる、みたいな流れには、ならないのではないか。

韓国で、そういう流れがあるとすれば、怒りと性欲が結びつきやすいということなのだろうか。


いや、こういう安易な文化比較は危険だろう。

日本にも「怒りの自慰」事件はあるのかもしれない。


私が「怒りの自慰」に興味を覚えるのは、いわゆる性暴力や、露出狂とは、ちょっとちがった意味の行為だと思うからだ。

暴力的露出というか・・しかし、露出そのものに快感を覚えているわけでもない気がする。

わたしは長年、心理学に関心をもち、たいがいの「変態」は読んだり見たりして、知っているつもりだが、「怒りの自慰」は、まだちゃんと研究されていないのではなかろうか。

罪状にしても、いまのところ「公然わいせつ」と言うしかないのが、なにか納得いかない。








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