「じいじ」「ばあば」はなぜ広まったのか
もうすぐ敬老の日だが、いつの間にか「おじいちゃん」を「じいじ」、「おばあちゃん」を「ばあば」と呼ぶ言い方が定着した。
いつから、なぜそうなったのか、まったく分からない。日本語大審問官の私は許可した覚えがない。私が子供を持たず、家庭なるものと無縁な人生を送ってきたから、何かを見逃したのか。気づいたら、広まっていた。
きのうの朝も、保育園の前で、母親が小さな息子に、
「さあ、じいじに、お見送りありがとう、って言って」
と促していた。
その横で、「じいじ」がニコニコしている。
私だったら、
「おい、娘よ。俺はそんな変な日本語を使うようにお前を育てた覚えはないぞ。おじいちゃんと呼ばせなさい!」
と説教しただろう。
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少なくとも私(60歳代)は、「おじいちゃん」「おばあちゃん」で育った。「じじい」「ばばあ」は知っているが、「じいじ」「ばあば」は子供の頃、聞いたことがない。
「じいじ」「ばあば」の起源について、ネットで調べたらすぐ答えが見つかるかもしれないが、それでは面白くないので、今回は一切、ネットで調べないで書く。
というのも、朝の光景を見て、答えがひらめいたからである。
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これは、あれだろう。「おとうさん」「おかあさん」ではなく、「パパ」「ママ」で育った世代が子供を持って、自分たちの両親を呼ばせる段になり、「おじいちゃん」「おばあちゃん」では整合性がないと気づいた。
そこで、「おじいちゃん」「おばあちゃん」の「パパ」「ママ」版として、「じいじ」「ばあば」を発明したのだろう。同じように短い言い方だ。
さすがに、「パパ」「ママ」に合わせて「グランパ」「グランマ」と呼ばせるわけにはいかないから。(といって、私が知らないだけで、呼ばせている家庭はあるかもしれないが)
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昭和世代の我々には、「パパ」「ママ」はまだ珍しかった。テレビのホームドラマでは使われていたが、周りではごく少数派だったと思う。
我々の世代は「おとうさん」「おかあさん」が正しいと教育された。今でもなくなったわけではないだろうが、「パパ」「ママ」派との比率は正確にどの程度になっているのだろう。
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「おとうさん」「おかあさん」が、明治時代にできた新語であることは、我々の世代も知っている。
江戸時代まで日本人は、「おとう」「おかあ」をはじめ、地方によって両親をさまざまに呼んでいた。それを明治になって統一するために、共通語として、それまで日本語になかった「おとうさん」「おかあさん」が発明されたのだ。
しかし結局、日本人はこの人造語に、馴染めなかったのかもしれない。「パパ」「ママ」は、異人の言葉ではあるが、少なくとも自然語である。だから、そちらに自然に移行していったのかもしれない。
その流れで「じいじ」「ばあば」となったのなら、それはそれで、納得できる。
それなら、「パパ」「ママ」もやめて、「おとう」「おかあ」に戻せば、もっとスッキリする、と思う。
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