kajicco

BL小説を書いています。イラストも描きます。

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ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」39【完】

筋肉を称賛する叫びがやまない。 みな喉をからして自分たちに感動を与えてくれた素晴らしい筋肉を褒め称えている。 ロックバンドのライブに勝る熱狂に包まれた表彰式を終えた藤は、ステージを降りたとたん、それまで貼り付けていた晴れやかな笑顔を消した。減量明けでのステージングはかなり辛い。 ステージ裏に戻ると他の選手から群がられたが、疲労困憊のところに寄ってこられても対応する余裕はない。無視して急いで着替え、「ふ、藤さぁぁぁん!」頬を上気させて駆けてきた尚太郎の手を掴んで、鍛え抜かれたカ

    • ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」38

      会場がシーンと静まった。BGMすら消えたような静寂のなか、その場にいる全員の視線が一斉に尚太郎に集まる。 (ぼ、僕は、何を……) 我に返った尚太郎は、みるみる顔を赤らめた。押さえた頬はとんでもなく熱い。頭が湯だったようにくらくらする。今すぐ逃げ出したいが、恥ずかしすぎて身体が動かない。 「くっ、あははははは!」 唐突に、爆笑が響いた。 ステージの上の藤が大きくのけぞって見事な腹筋を小刻みに震わせている。 「はははっはあああ! うっ! ぐはっ、ゲホッ、かは、はははっ、

      • ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」37

        叱られることを覚悟して近づくと、 「よくやった」 ふわっと抱きしめられた。 「ふ、藤さん……で、でも、僕、5位……」 「結果はもちろん大事だが、俺にとって何より大事なのは、おまえが精一杯挑んだことだ」 藤はよしよし、と尚太郎の頭を撫でて、 「尚太郎、楽しめよ。大会にでる緊張も、勝った嬉しさも、負けた悔しさも、全部ひっくるめて日々のトレーニングを楽しむんだ。……俺も昔はいろいろあったが、今、筋トレは楽しいと心底思う。だから、おまえも楽しめ」 「……でもっ、僕、悔し

        • ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」36

          ステージの入り口で整列を呼びかけるスタッフに従い、尚太郎も列に並んだ。 開会式が終わり、軽快な音楽が流れ出した。 番号を呼ばれた選手たちが、次々とステージへ出ていく。彼らは登場時に軽くポーズを取ってから、ステージの中央に横一列で並んでいく。 尚太郎もそれに倣って、ステージに進み出た。 ステージの正面には審査員席があり、7人の審査員が座っている。彼らの方こそステージに上がるべきマッチョ揃いだが、なかでも際立って存在感を放っているのは審査員長である楠木会長だ。スーツの上からでも

        ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」39【完】

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」35

          KBCでは、体重や身長などのクラス分けはなく、各部門の出場者全員が同じステージに立って審査される。 流れとしては、まず予選に出る12名がピックアップされ、予選、決勝へと進む。 ボディビル部門が終わったあと、フィジーク部門のピックアップ審査、予選、決勝が行われる。 年齢分けもされていないので、尚太郎の前で受付しているのは10代らしきピチピチマッチョで、後ろにいるのは50代らしきナイスミドルマッチョだ。 緊張しながら受付をして、数字が入った缶バッジを受け取った。65番。これが尚

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」35

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」34

          「……ろ、尚太郎、起きろ」 揺すられて、尚太郎はうっすら目を開けた。 (あれ、ここ……僕の部屋じゃない……って、あっ!) 昨夜の記憶が一気に蘇り、がばっと飛び起きる。 「ふ、藤さん、おはようございます!」 「はよ。そろそろ家に帰って荷物取ってこねぇと支度する時間がなくなっちまうぞ」 「あ、はい」 うなずいてベッドから降りると、脱衣所に置いていた昨日の服を手渡された。 スウェットを着た藤は、浄水器の水を飲んでいる。どうやら水抜きタイムは終了したらしい。 (なんか

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」34

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」33

          ※本話までR18指定です。18歳以下の方、そして男性同士の性的な表現に不快さを感じられる方はブラウザバックをお願いいたします。 ====================== 初めて入った他人の体内。温かい肉にすっぽり包まれる感覚はあまりにも気持ち良くて、すぐには出たくない。 (ごめんなさい、ごめんなさい、藤さん……!) 心の中で謝りながら、尚太郎はゆるゆると腰を動かしだす。本当はガンガン突きたいが、それはさすがに申し訳ないので、藤にあまり負担をかけないよう気遣いながら

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」33

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」32

          ※33話までR18指定です。18歳以下の方、そして男性同士の性的な表現に不快さを感じられる方はブラウザバックをお願いいたします。 ====================== 「さっさとタンニングローション洗い落として、ベッド行こうぜ」 藤に促されてシャワーを浴び、尚太郎は全裸のまま手を引かれてベッドルームに入った。 その部屋は、藤の体臭と同じ、甘くて落ち着きのある香りに満ちていた。どぎまぎする尚太郎に、藤はボディクリームのボトルを握らせてベッドに横になり、恥じらいも

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」32

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」31

          ※ここから数話はR18指定です。18歳以下の方、そして男性同士の性的な表現に不快さを感じられる方はブラウザバックをお願いいたします。 ====================== 「や、そ、そのっ、……ご、ごめんなさい……」 一度意識すると、藤と全裸でバスルームにいる状況がとてつもなく恥ずかしく思えてきた。短距離走を走ったあとのように心臓がバクバクする。そこから送り出された血液が頭部へ急上昇し、脳みそがグツグツゆだっていく。しんどい。だけど、ずっとこうしていたいとも思う

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」31

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」30

          ※ここから数話はR18指定です。18歳以下の方、そして男性同士の性的な表現に不快さを感じられる方はブラウザバックをお願いいたします。 ====================== いきなり局部をわし掴まれて、尚太郎はひっくり返った声を出した。 藤はセレブがワイングラスを回すかのように優雅に、デリケートなそれを手のひらの上で転がし、 「おいおい、なんだよこの規格外な逸品は。もはや凶器じゃねぇか。いっちょまえに剥けてるし」 「ふ、藤さん、やっ……」 「こんな立派なくせに

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」30

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」29

          トレーニング後の藤の手料理によって食の充足感を得た尚太郎は、モチベーションを維持したまま減量を続けた。 そして大会前日、とうとう体脂肪5%に到達した。 「ラインが出たな。87.5kg、筋肉量(FFMI)24.8ってとこか……大胸筋のペック(窪み)も出てるし、前鋸筋のカットも悪くない」 藤の言葉に、尚太郎はしょんぼりと返す。 「筋肉量は1も下がっちゃいましたけどね……」 「落ち込むな。言っただろ、減量すれば筋肉量はどうしても落ちるんだって。トレ歴長い俺だってFFMI 0

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」29

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」28

          そう決意したものの、カロリーを制限すると力が出ない。先日MAX200kgを叩き出したバーベルスクワットも、アップの150kgでふらついてしまう。 しかし藤は容赦なくメインに180kgを組んだ。 「筋量を落としたくなければ刺激を入れることを避けるな。1セットだけでいい。レップが減ってもいいから、これまでと同じ重量を扱うんだ」 「ぐぁぁ……」 「辛そうだな。だが、おまえの脚は『もっとだ、もっと俺に刺激をくれ!』と叫んでいるぞ」 「っ、さ、叫んで、ません……!」 「嘘を言

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」28

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」27

          トレーニングのメニューは日によって変わる。この日はスーパーセットを行なう。 スーパーセットとは、骨を挟んで対になっている拮抗筋(関節を伸ばす筋肉と、曲げる筋肉)を一度に鍛えるトレーニングだ。 まずはアームカールで、上腕二頭筋(肘を曲げる動きで働く)に刺激を入れる。 このときリラックス状態にある拮抗筋の上腕三頭筋を、次に行うトライセプスエクステンションの伸展動作によって刺激する。 これにより両方の筋肉を短時間で鍛えられる。 尚太郎は藤の指示で、アームカールからインターバルを

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」27

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」26

          3時の休憩でプロテインを飲み、退社前にもプロテインを飲んで、血液中のアミノ酸濃度を満たした状態で藤のマンションに向かい、トレーニングを行う。 それを繰り返してあっというまに2ヶ月が過ぎた。 藤は、体脂肪率8%になった尚太郎の身体をチェックして、うん、とうなずく。 「細かい弱点部位は多々あるが、土台は固まったな。セパレーション(筋肉と筋肉の境目)もだいぶはっきりしたし。あとは腹回りをもうちょっと……ん、どうした、尚太郎?」 藤に顔をのぞかれた尚太郎はしょんぼりとつぶやいた

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」26

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」25

          『人体を構成する筋肉の数は600を超える。そのほとんどを目視できる境目は、体脂肪率7%だ。大会に出るなら、せめてそこまでは身体を絞れ』 帰りがけに寄った24時間営業のスーパーマーケットで、尚太郎は買い物かごを片手に食材を選びながら藤の言葉を思い返した。 『おまえの現在の体脂肪は13%。それを3ヶ月足らずで6%落として7%にしなくてはならない。 これまで3ヶ月ごとに平均して8%ずつ落としてきたおまえには容易に思えるかもしれないが、体脂肪率2桁から1桁への移行は、これまで以上

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」25

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」24

          初めは、ただ痩せたいだけだった。 身体が変わって嬉しかった。鍛えるのが楽しくなった。 ……それで? その先は? この生活をただ続けるだけでいいのか。それで自分は満足できるのか。……こんなに強くて気高い彼の側に居続けることができるのか。 (藤さん……) 「……まぁ、こう思えるまでには結構時間がかかったがな」 藤はやや照れ臭そうに髪をかきあげた。 「理想うんぬんの前にやっぱり自立しねぇとカッコ悪いから、ジム通いを再開したあとKフィットネスのトレーナー面接を受けた。 あんな

          ダイエット&ボディビルBL「愛と筋」24