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デブオタと追慕という名の歌姫 #04



第2話 デブとヘタレの二人三脚 ②

「エメル、また肩と胸に力が入ってるぞ。上半身はリラックスリラックス。で、下半身はフラフラさせるなよ。お尻の位置が重要だからな。お腹の上に胸が乗っているっていう感覚で姿勢を作れ」
「は、はい」
「そうそう、それでいい。あと、お腹から声を出すって言うのはナンセンスだってよ。無駄に大きく息を吸うな」
「はい」
「よしよし、いいカンジだ」

 リアンゼルがエメルとデブオタを見つけたとき、二人は芝生の上にスタンドごと置いたタブレット型PCの動画を見ながら姿勢の矯正と腹式呼吸の練習をしているところだった。

「まだいたの? この間、不愉快だからさっさとイギリスから出て行けって言ったのに。聞こえてなかったの?」

 例によってリアンゼルは二人に向かって口汚く罵り始めた。
 彼女は昨日小さなオペラハウスのオーディションに挑戦していた。無論、この二人を見返すためである。
 しかし、審査員から合格者として名前を呼ばれることはなかった。またもや落選したのだ。
 やり切れないまま例によって公園に来てみればエメルとデブオタが児戯のような野外レッスンをしている。悔しさのやり場のない彼女には到底看過出来ない光景だった。
 だが、デブオタはリアンゼルをちらっと見ただけでエメルへ「下半身、下半身。意識を集中しろ」と声をかけた。

「呼吸の流れが自然に出来るようになったら歌うときに意識する必要がないからな。まずは少しずつ身体に覚えさせるんだ」
「わ、わかりました」
「聞こえてないの? ここから出て行けって言ってるの!」

 リアンゼルはエメルへも足を踏み鳴らして怒鳴ったが、彼女は怯えた視線をちらっと向けただけだった。

「私を無視するなんていい身分ね、エメル。学校に来たらどんな目に遭うか覚えてらっしゃい。今から腹式呼吸だなんて大した英才教育だこと。バカバカし……」
「エメル、雑音で気が散ってるみたいだな。ちょっと切り替えよう」

 エメルへしつこく絡むリアンゼルの罵倒を遮るように、デブオタが片手を上げた。

「雑音ですって? アンタの気持ち悪い口がよっぽど……!」

 カッとなって詰め寄りかかったリアンゼルだったが、例のロードワークにつきあったデブオタの汗が発する強烈な匂いに思わず顔をしかめた。日本のオタク特有の誇りっぽい匂いを嗅ぐのは初めてで、彼女はそれ以上近づくことが出来なかった。

「臭っ。生ゴミみたいな腐臭まで撒き散らして迷惑な。さっさと死になさいよ」
「歌は……そうだな」

 デブオタはいきり立っているリアンゼルなど眼中にないとばかりに「アニー・ローリーにしよう。エメル、声が低いとまた道路で例の特訓に逆戻りになるから思いっきり大声で頼むぜ」と言って豪快に笑うなり「ラララ~」と伴奏を歌いだした。

「そんな汚い歌声、ヘドが出るからやめ……」
「Max Welton's braes are bonnie Where early fa's the dew and 'twas there that Annie Laurie gave me her promise true.」
(おお、美しきマクスウェルトンの丘よ、朝露に濡れたあの丘でアニー・ローリーは私にくれた。真実の愛を……)

 リアンゼルの罵声を遮るようにエメルは歌い始めた。周囲の人々に聴こえるほどの大きな声で。

「ええっ!?」

 驚いたリアンゼルは罵るのを止めてしまった。
 それまで、蚊の鳴くような惨めな声しか聴いたことがなかったエメルが、人並み以上の声量でちゃんと歌っているのだ。
 傍にいるリアンゼルを気にしているので声が震え、歌の合間に不器用な息継ぎが入っている。音域が高くなると声が掠れ、お世辞にも上手と云うのにはまだ程遠い歌だった。
 大声で必死に歌っているので、ともすれば音程もズレてゆく。
 しかし、そのたびにデブオタがドラ声のコーラスで助けに入った。そしてエメルの音程を修正してくれる。
 すると、デブオタの助けに安心したせいでエメルの声から震えが消え、少しずつ伸びやかな歌に変わっていった。
 小さな、しかし聴いている者にハッキリと分かる成長がリアンゼルには不気味に思えてエメルの歌を貶さずにはいられなかった。

「そんな歌い方で、気持ち悪……」

 だが、そんな彼らの傍を何人もの人々が行き交っている。
 彼らはスコットランド民謡の名曲を懸命に歌うエメルとデブオタを微笑ましく見ながら通るので、リアンゼルは思うように罵声を浴びせることが出来なかった。

「……」

 歯軋りして睨みつけるリアンをよそに、歌い終わって何度も深呼吸するエメルをデブオタは「よし、邪魔が入っても声がちゃんと出ている」と、褒めた。

「いいぞいいぞ、それでこそオレ様の生命を削って特訓した甲斐があったってもんだ」
「ちょっと! こっちを見なさい! 邪魔だなんてよくもこの私を……」
「でも、やっぱり歌うときに硬くなってしまうな」

 デブオタは、相変わらずリアンゼルを無視したまま「と、言う訳で次のレッスンはこれだ」と、タブレット型PCで新しいアプリを起動させ、何やら嬉しそうにエメルを手招きした。

「ホワット? デイブ、これは……」
「日本のバーチャルアイドル育成ゲーム『ドリームアイドル・ライブステージ』だよ。三次元のCGアイドルがトップスターを目指してレッスンしたり、ステージで歌ったりするんだ」

 画面の中ではアニメキャラクター調のデザインで作られたCGの少女が音楽に合わせてステージの上を所狭しとばかりに踊りながら歌っている。CGとは思えないほど精緻に再現されたツインテールの髪が翻り、ステージの向こうにはこれもCGで出来た観客席から歓声が響いている。たくさんのサイリウムが風に靡く稲穂のように、歌に合わせて揺れていた。

「凄いだろ。雰囲気出てるだろ。このゲームのエディットモードは、曲を設定すれば自動で踊りの振り付けを作ってくれるし、それを自分の好みで編集も出来るんだぜ」

 デブオタはまるで自分がこのアイドル育成ゲームを作ったように自慢し、エメルは初めて見たハイスペックなゲームの世界に目を丸くした。

「今時のゲームってこんなにリアルなのね。初めて見ました。でもデイブ、これで何をするの?」
「この娘の動きを真似て踊りのレッスンをするんだ」
「ええっ! そんなこと出来るの?」

 風変わりな練習を告げられたエメルは驚きの余り、後ろで喚き立てているリアンの罵声も耳に入らなかった。デブオタの顔とタブレットの画面を交互に見つめる。

「もちろん、さっきみたいな歌とダンスをいきなりじゃさすがに無理だろ? 簡単な初心者モードのレベルから出来るから安心しな」
「私なんかに出来るのかしら……」

 心配そうにエメルがつぶやくと、デブオタはニヤリとした。

「慣れればこれくらいのことは出来るようになる」

 デブオタは慣れた手つきでタブレットの画面を何度かスライドしタップするとスピーカー代わりのラジカセにケーブルを繋いで芝生の上に置いた。
「久々にオレの十八番を打ってみるか」と、傍らのリュックサックからサイリウムを二本取り出す。
 序奏が始まると、いきなり真上へ放り投げた。そのまま回転しながら落下したサイリウムを背面に回した手で目もくれずにキャッチする。
 鮮やかな手並みにエメルとリアンゼルが眼を丸くする中、デブオタはそのままもう一度放り投げ、今度は空中で交差したサイリウムを平然とキャッチした。

「凄……」

 キャッチしたタイミングと同時に「チェケラッ」とドスの効いた掛け声が飛び、アップテンポのアニメソングが始まる。デブオタは盆踊りにも似た怪しげな振り付けで踊り始めた。
 アイドルオタ特有の動きでステージを盛り上げる、あの「オタ芸」である。
 エメルが慌ててタブレットの画面と見比べると、手の動き、ステップ、腰の捻り、そのモーションの全てがゲーム画面の少女の動きを正確にトレースしていた。その肥え太った身体を驚くほど機敏な動きで左右に滑らせ、巧みな手の動きでサイリウムの光に美しい軌跡を描かせる。
 三分ちょっとの曲に合わせたダンスはあっという間に終わり、エメルは思わず手を叩いた。思わず見とれてしまっていたリアンゼルは我に返って「そんな原始人みたいな踊り! ……」と喚き出したが、得意そうなデブオタと感心して目を輝かせるエメルのどちらも聞いてはいなかった。

「デイブ、凄い!」
「オレ様はこれでもアキバじゃオタ芸ダンスの達人として結構知られていたんだぜ」

 思わず鼻息を吹いて自慢したデブオタは、慌てて「音楽プロデューサーになる前の話だけどな」と付け加えた。

「私もそれくらい踊れるようになれる?」
「デブのオレ様でもこれだぜ。楽勝楽勝」

 汗びっしょりのデブオタは、腹を揺すって笑いながらタブレットの画面を操作して置き直した。

「最初はレベル一からだ。ほら、画面を見てみな」

 同じ音楽だったが、さっきの激しいダンスとは違って今度はCGの少女が前後左右に軽くステップを踏んでいる。それはエメルにも出来そうなくらいシンプルな動きだった。

「あ、これくらいだったら……」
「な? じゃあ一緒にやってみよう」

 エメルは彼と並んで一緒に踊り始めた。
 音楽に合わせて身体を動かす。エメルには初めての体験だった。

「どうだエメル、音楽に合わせて身体を動かすのって気持ちいいだろ」
「はい!」

 それは心が弾むようで楽しい体験だった。
 眼を輝かせ、タブレットの画面を見ながら一心不乱にステップを踏むエメルを横目で見てデブオタは嬉しくなった。

「おお、いい筋している。動きは悪くない。これがレベルアップすると少しずつ動きが複雑になってくるけど慣れてゆくからな。難しかったらそこを何度も繰り返して練習すればいい。そうすれば身体が自然に動きを覚えるんだ」
「はい」
「よし、じゃあ休憩しよう」

 曲が終わり、大きな息をつくとデブオタは芝生の上に座り込んで足を投げ出した。実はかなりのオーバーアクションで、もう膝が限界だったのだ。
 その横でエメルも彼にならって足を投げ出した。

「発声練習やロードワークばっかりだとしんどいからな。こういう練習も入れなきゃ。でも楽しいだろ?」
「はい」

 頷いたエメルは、ふと気が付いて振り返り「あれ?」という顔をした。

「リアン、いなくなってる。どこ行っちゃったのかしら?」
「何だ、忘れてたのか。あいつも気の毒なこった」

 デブオタは「エメルが練習に夢中で構ってくれないからプリプリしながら帰って行ったよ」と笑った。

「そう……」
「なんだ、いないと却って気になるのかよ?」

 苦笑したデブオタに恥ずかしそうに微笑むと、エメルはつぶやくように言った。

「ううん、違うの。何だかかわいそうだなって」
「おいおい」

 笑いながら「今までお前をあんなにいじめてた奴をかわいそうって……」と言いかけたデブオタは、ふいに真顔になった。
 胸を衝かれるような思い出にとらわれたのである。

(あの時、裏切られたオレ様を……オレ達ファンをそんな風に思ってくれたアイドルはいなかった)

 デブオタは、思わず自分の心臓のあたりを手で掴んだまま言葉を失った。

「……なあ、エメル。休憩ついでにちょっとつまらない話をする。暇つぶしに聞いていてくれ」
「はい」

 それまで笑いを含んでいたデブオタの言葉に真剣な声音が混じった。
 そうと気が付かないままエメルが前髪をかき上げながら顔を向けると、彼はゆっくりと噛み締めるように話し始めた。

「イギリスじゃどうか知らないがな、日本じゃアイドル歌手のファンはモテない男が多いんだ」
「えっ、どうして?」

 エメルには初めて聞く日本のアイドル事情だった。

「恋をしたくても出来ないからさ。日本の女性は顔の良し悪しで恋人を選ぶ奴が多いんだ。世界中どこでもそうなんだろうけどな。特に日本じゃ顔の作りが悪い男は『キモい』と蔑まれて、どんなに一生懸命に人を好きになっても相手にしてもらえない」
「そ、そうなんだ」
「女の子とおしゃべりなんてまともにさせてもらえないし、目が合っただけでも嫌がられる。そんな奴が恋をしたいならアニメやゲームのヒロインを好きになるか、アイドル歌手を好きになるか、どっちかしかないのさ。だけどそれは絶対に報われない」
「どうして?」
「本当の恋じゃないからな。偶像(アイドル)への擬似恋愛だから」

 エメルは言葉を失った。
 デブオタはため息をつくと自嘲っぽく続けた。

「アニメヒロインの声優やアイドル歌手は、ステージの上からファンに向かって私を応援してね、みんな大好きって言ってくれる。だからファンは、みんな彼女を自分の恋人のように思って応援するんだ。たくさんのCDを買って、高額なイベントや握手会のチケットを買って。でも本当の恋人じゃないからいつか必ずそんな夢が醒める時が来る。それもたいてい残酷な形で」
「残酷な?」

 デブオタはうなずいた。

「実は恋人がいました、今度結婚します、引退します、私たち幸せになります、今まで応援ありがとう、さようなら……たいていそんな格好で終わる。そして今までコンサートで盛り上げて貢いできたたくさんのファンはみんな置いてきぼりにされるんだ。気持ちのやり場がないファンのことを思いやってくれた人は今まで誰もいなかった。見捨てられたファン達は泣いて喚いて駄々を捏ねて諦めて……だけど他にどこにも行き場所はない」
「……」
「だからまた別のアイドルや声優を好きになるしかないのさ。そうやって今まで何度裏切られたことか。何度泣いたことか……」

 さっきのオタ芸もかつて日本のアイドルコンサートでファン達がイベントを盛り上げる為に始まったものだった。
 しかし、そんな芸も危険だから、見た目に気持ち悪いからという理由でやがて禁止されてしまった。ファンは何も出来なくなってしまったのだ。
 一方では大量のCDを購入して応募しなければ、コンサートチケットの抽選にも当たらない。そればかりか、握手権を手に入れてもほんの一言か二言会話出来るだけの時間しか与えられない。
 だが、まるで搾取されるように金を出して応援しても報われることはない。裏切られ、捨てられても……ファンには何も残らないのだ。

(養分が意見なんかするんじゃねえ、ましてやキモいオタ芸なんか見せるんじゃねえ。手前らは黙って金出して応援してりゃいいんだよ! 文句があるならファンなんかやめて今すぐ消え失せろ。手前らの代わりなんざ幾らでもいるんだよ!)

 ファンの抗議に対して叩き付けられたその言葉をデブオタから聞いたとき、エメルは思わず「酷い!」と、口に手を当てた。
 そこでデブオタは、急に我に返ったらしく「オレ様はプロデューサーをしているからさ。そんなファンの憤懣を聞いたんだよ」と慌てて言いつくろった。
 エメルは彼の狼狽を不審に思わなかった。
 そんなことよりも、報われない日本のアイドルファンへ同情で心がいっぱいになっていたのだ。

「日本のファンってかわいそう……あんまりです。人を使い捨てみたいに」
「エメル」
「はい」

 彼女の澄んだ瞳を見つめるデブオタの眼は、真っ直ぐで真剣だった。

「どんなに有名になっても、人の痛みや悲しみを思いやってあげられる、そんな歌手になってくれ」
「……」
「さっき、自分をいじめていたリアンゼルにもかわいそうって言えた、そんな気持ちをずっと忘れないでいてくれ」

 エメルはデブオタの一言一言をこくり、こくりと頷いて聞いていた。

「お前が歌手になった時、応援してくれる人の中にはもしかしたらエメルの歌を生きる支えにする人がいるかも知れない。バカにされたり嫌われたり……そんな辛いこともエメルの歌に励まされて耐えている人がいるかも知れない」
「……」
「だからエメル、お前は悲しい人や傷ついた人を歌で抱きしめてあげる……そんな優しい歌手になってくれ」

 真剣にそこまで話したデブオタは、しばらく沈黙すると自分が恥ずかしくなったのか急に立ち上がると「おお、オレ様チョー格好いいこと言ったぜ! さ、柄じゃないお説教はこれでおしまいな」と、照れたように笑った。
 頭を掻きながらジーンズの尻についた芝生の草をパタパタと手で叩き落とす。

「よし、じゃあ次の練習は……」

 だが、返事が返ってこない。
 デブオタが振り返ると、エメルが彼をじっと見つめていた。その瞳には大粒の涙が今にも零れそうなほど盛り上がっている。
 それを見たとき、デブオタの鼻の奥がツンと熱くなった。

「泣くなッ! 涙はスターになるその日の為にとっておけ!」
「はい!」

 自分の涙はこっそり引っ込め、デブオタはわざと渋面を作った。

「もう一度腹式呼吸の練習をしよう」
「は、はい」
「うんざりするかも知れないけど大切なことなんだ。エメル、息を吸ってみろ」

 デブオタの照れ隠しで講義が始まった。頷いたエメルは大きく息を吸い込む。

「自分の胸を触ってみな」

 エメルは言われたとおり、自分の胸にそっと手を触れた。

「胸の筋肉が堅くなっているだろ? 声を出す筋肉が堅くなるからスムーズに声が出せなくなるんだ。それで、そこより出来るだけ離れた場所で呼吸するようになればいい声が出せる。だから腹式呼吸が大切なんだ」

 それはネットで前もって調べていた知識の受け売りだったが、デブオタは熱心に説き、エメルは真剣に聞き入った。

「昨日も説明したけどな、腹式呼吸っていうのはここ」

 エメルの気を逸らしたデブオタはホッとしながら自分の肺の下を軽く叩いた。

「ここの横隔膜が伸びたり縮んだりする。だから腹回り全体を鍛えればいい声が出しやすくなるんだ。普通のアマチュア歌手は大抵そんなことを知らないからお腹の前だけ鍛えて満足する。だからお腹周りをきちんと鍛えて自然に腹式呼吸が出来るようになればライバルにグンと差を付けられるんだぜ。凄いだろ!」
「はい!」

 自信たっぷりに指導を始めたデブオタの横に並ぶと、エメルは懸命に彼の言葉通りに深呼吸し、身体を捻り、姿勢を正し、声を出した。

「うん、いいカンジだ。それとエメル、リラックスな? リラックス。緊張すると声も堅くなるから」
「はい!」

 元気な返事が返ってくる。
 蚊の鳴くような歌声の少女は少しずつ着実に成長している。デブオタは嬉しくなった。
 それは、彼が日本でアイドルを応援していた時やTVゲームの中のアイドルを育成していた時とは全く違う嬉しさ、初めて感じる喜びだった。
 だから、デブオタは気づかなかった。

 彼の話を聞いて練習に励むエメルの瞳には、さっきまでとは違う輝きが宿っている……


次回 第3話「見えない何かが変わり始めて ①」


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