佐々木 海真

沈殿物 https://www.tunecore.co.jp/artists?id…

記事一覧

2024/09/26

労働そのものが、ネガティブな感情を吸い込んだスポンジのようだ。発散される負のエネルギーは、労働に携わってきた人たちが内々に抱いてきたネガティブの累積で、いまやそ…

佐々木 海真
3週間前
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ニワトリも泣く

起床ラッパの役目を果たしていたニワトリを美味しく頂いた夜も明け方、消化ずみであるはずのそのニワトリのコケコッコーが耳をつんざき、目が覚めた。 それは3月で、朝方は…

佐々木 海真
2か月前
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2024/07/01

くぼんだ眼のむくろ ほどけたレースカーテン 海のにびいろ 純正の夏はもうこない よびだす淡紅色 クリオネが声を上げて 氷が溶けだす 海がながれだして ふいになみだする…

佐々木 海真
3か月前

Vanishing point

夜中の日付も回りそうな頃に、自室のキッチンに備えつけの白色蛍光灯だけを点けて、冷蔵庫のブーンという音だけが一番大きな音になる程の静寂の中では、孤独が透明になって…

佐々木 海真
4か月前
3

Lost and found

山の稜線が隙間なく林立する緑色した木々に沿っていた。 葉緑体が緑という色を呈しているのではなく、私たちの眼が葉緑体を緑と見るのか。いつまで経っても答えのでないよ…

佐々木 海真
4か月前
3

外部と内面世界 アリアの主題と変奏

私自身から離れていて尚且つ私に突き刺さった外部(仕事とか、家族とか、経歴や所属コミュニティなども)を何もかもを失ったとしても、生命が脅かされることでない限り、肉体…

佐々木 海真
4か月前
2

手記2024/04/18

ずっと前の、時間の概念を知らない脳の中では今朝のような出来事、はじめは些細な出来事が、聞き入れることを拒まれた、追いやられた心の片隅──そこが相応しいとみなされ…

佐々木 海真
6か月前
3

書評 重力と恩寵/シモーヌヴェーユ

要約 「知ること」と「全精神を打ち込んで知ること」の間に横たわる隔たりを知る人 われわれの魂のなかの恩寵は沈黙のうちにわれわれがふたたび神にあることを同意する日を…

佐々木 海真
6か月前
4

映像用音楽

歪んだ真珠のみる夢は 筋交いの欠けた家のよう 歪んだ真珠の眼には 打ち壊された生家が建つ その細い枝は無数につけた葉の重さにしなり、前景に垂れかかっている。中景で…

佐々木 海真
10か月前
3

2023/11/20

取ろうとしても離れてくれないひっつき虫が癒着してささくれのように痛む夏と秋の狭間、一日にも満たない季節のよろめきは、蝉のいない夏。きりぎりすの鳴かない秋。それら…

佐々木 海真
11か月前
3

生活の足音

「部屋」 水槽からエアレーションの泡が聞こえる。この音をリアルタイムで聴くものが私自身しかいないということに、呼応された孤独は振動して滲んだ。泡の音と同じに、いつ…

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内分泌

「転ばないようにね!」強く念を押す母親の声が、風を皮膚に感じるよりもずっと速く鼓膜に届く。 子供がアスファルトの上で走っていて、靴とアスファルトが接地する時、鈍…

6

壁 随想録

無関心を装うのはプライドの仕業で、その鎖は素直に喜ぶことも阻む、粘ついた壁のことを考える。嫌悪感と粘性の密接な関係。 自らが許せていない行動を、許している他者に…

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日記02/08

斜めから差す陽の作る影が、中学三年生から少しも伸びなかった背と対比するように長く伸びている。 どんどん度数の合わなくなるコンタクトでぼやけた、それでも裸眼よりは…

6

回想2023/02/07

一昨日、夜空を見上げたら今日の月が満月だって気付いた。 その時、前よりも夜空を見上げることが少なくなったようにおもえて、少し寂しくなった。前はもっと満月を見つけ…

4

代々木公園

枝葉のざわめきが通奏低音のように響き、その響きの内側から小鳥の囀りが聞かれる。所々でサックスのようなカラスの鳴き声が入る。 東京にもこんな自然公園があるのだな……

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2024/09/26

2024/09/26

労働そのものが、ネガティブな感情を吸い込んだスポンジのようだ。発散される負のエネルギーは、労働に携わってきた人たちが内々に抱いてきたネガティブの累積で、いまやそれらは労働という言葉に付随するイメージが自己生産している。
………とまで書いて、この考えはあくまで私個人の考えだと思う、楽しく働いている人もたくさんいるだろう。私は、労働のネガティブな側面に影響されることが多い。だが、そもそも現実が不満を与

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ニワトリも泣く

ニワトリも泣く

起床ラッパの役目を果たしていたニワトリを美味しく頂いた夜も明け方、消化ずみであるはずのそのニワトリのコケコッコーが耳をつんざき、目が覚めた。
それは3月で、朝方はいまだ深く冷え込み、私は毛布を肩まで寄せると、鶏鳴をいぶかしく思う間にも眠気が、深い霧のように覆いかぶさり、また眠り込んでしまう。
そうして9時になった。晴れの日には、鋭い陽光が差し込む窓辺では、ねずみ色の陽光が間接光のようにおぼろげに差

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2024/07/01

2024/07/01

くぼんだ眼のむくろ
ほどけたレースカーテン
海のにびいろ
純正の夏はもうこない

よびだす淡紅色
クリオネが声を上げて
氷が溶けだす

海がながれだして
ふいになみだする
理由もしらないまま

月がよって、さがって
つられて海も
引いていくなみだの
あとかたも消えていく

Vanishing point

Vanishing point

夜中の日付も回りそうな頃に、自室のキッチンに備えつけの白色蛍光灯だけを点けて、冷蔵庫のブーンという音だけが一番大きな音になる程の静寂の中では、孤独が透明になっていくような心地良さを感じる。
一秒、二秒、三秒と数えて経る十分は長いのに、SNSをスクロールしながら経る十分の短さ。
時間は伸びたり、縮んだりするように感じられることについて随分昔から不思議がってきたけれど、未だ確かな回答を得られず。この真

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Lost and found

Lost and found

山の稜線が隙間なく林立する緑色した木々に沿っていた。
葉緑体が緑という色を呈しているのではなく、私たちの眼が葉緑体を緑と見るのか。いつまで経っても答えのでないような膠着状態を私は心底気に入る。

十代の頃は、苦しみや努力の意味がいつか分かるのだと、なんとなくそんな風に考えていた。その後、考えていた期待は木っ端微塵に破砕したり、形を少し変えて叶ったりした。
私の見る世界は私固有の色眼鏡を通しているが

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外部と内面世界 アリアの主題と変奏

外部と内面世界 アリアの主題と変奏

私自身から離れていて尚且つ私に突き刺さった外部(仕事とか、家族とか、経歴や所属コミュニティなども)を何もかもを失ったとしても、生命が脅かされることでない限り、肉体は生き続ける。私自身も。それを改めて不思議だと思う。私と繋がりあう外部は私内部の価値基準と一緒くたになっていて、外部が失われることが、自身の内面の一部を失うことと同義のように感じられる。
起きたこと、その事実に一喜一憂する。しかし起きてし

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手記2024/04/18

手記2024/04/18

ずっと前の、時間の概念を知らない脳の中では今朝のような出来事、はじめは些細な出来事が、聞き入れることを拒まれた、追いやられた心の片隅──そこが相応しいとみなされた居場所──で谺して、繰り返すうちに大きくなっていく。
つまり、些細な出来事は、些細な事だと見なした出来事であり、自分自身にとって些細であるとは限らないこと、その答えは、自分自身しか知るよしがなく、その時私は、自分自身の声をどれだけ蔑ろにし

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書評 重力と恩寵/シモーヌヴェーユ

要約
「知ること」と「全精神を打ち込んで知ること」の間に横たわる隔たりを知る人
われわれの魂のなかの恩寵は沈黙のうちにわれわれがふたたび神にあることを同意する日を待つ。重力は創造の法則であるから、恩寵の働きはわれわれを遡創造することに存する。われわれが「なにもの」かになれるように、神は愛によって「なにもかも」でなくなることに同意した。紙がふたたび「なにもかも」になれるように、われわれもまた愛によっ

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映像用音楽

映像用音楽

歪んだ真珠のみる夢は
筋交いの欠けた家のよう
歪んだ真珠の眼には
打ち壊された生家が建つ

その細い枝は無数につけた葉の重さにしなり、前景に垂れかかっている。中景では川面が陽光に反射し、不規則で小さな無数の閃光が眼に煌めき、雲ひとつないために青のカーテンを掛けたような空が後景を覆っている。

自転車の車輪、部活動の掛け声、風、風に押された木々、芒の葉の擦れ、昆虫類の羽音、真鴨の鳴き声、親子の会話、

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2023/11/20

2023/11/20

取ろうとしても離れてくれないひっつき虫が癒着してささくれのように痛む夏と秋の狭間、一日にも満たない季節のよろめきは、蝉のいない夏。きりぎりすの鳴かない秋。それらが同時に過ぎるような無時間性が頬を緩めるのをみた。見たことも聞いたこともないようで、聞いたことも見たこともあったような刹那。「私はそれを幼い頃に見ていたような気がする」
もう見ることの出来ないもの。それでいて記憶の先ではいつでも戻ることの出

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生活の足音

生活の足音

「部屋」
水槽からエアレーションの泡が聞こえる。この音をリアルタイムで聴くものが私自身しかいないということに、呼応された孤独は振動して滲んだ。泡の音と同じに、いつでもここで鳴っている。(感応してお互いの振動はより鮮明になる)

一人きりの部屋(その部屋は私の精神世界に似てきてしまっている) それゆえ、私は私でしかないと、至極真っ当な実感が、より鮮明になるのだ。自分自身が全くひとりきりで、生まれてき

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内分泌

内分泌

「転ばないようにね!」強く念を押す母親の声が、風を皮膚に感じるよりもずっと速く鼓膜に届く。
子供がアスファルトの上で走っていて、靴とアスファルトが接地する時、鈍い音が鳴る。僕がそれらを見て、聞いた時丁度、子供の体勢がよろめく。
素早く駆け寄った母親の声掛けよりも、子供の泣き声の方がずっと、自動車の轟きさえもかき消すほど大きい。アスファルトの上に陽光が差している、またその上から子供の頬から滴った涙が

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壁 随想録

壁 随想録

無関心を装うのはプライドの仕業で、その鎖は素直に喜ぶことも阻む、粘ついた壁のことを考える。嫌悪感と粘性の密接な関係。
自らが許せていない行動を、許している他者に出会う時、その相手に対して無関心のままではいられない、築かれた壁の内部には恐ろしい巨人が潜む?

彼、彼女は誰かがその壁を破壊することを強く願う。ただ、世界の条理は、自らが築き上げたものをそのままにするのも、破壊するのも、それは自らに委ねら

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日記02/08

斜めから差す陽の作る影が、中学三年生から少しも伸びなかった背と対比するように長く伸びている。
どんどん度数の合わなくなるコンタクトでぼやけた、それでも裸眼よりはずっとましな世界を見る。アスファルトの道路がおぼろの向こうまで続いている。
今の視力を測るのが億劫で、度数の合ったコンタクトレンズがどれなのか分からない。買い換えようと常々思う眼鏡も、眼鏡屋に行く時間が億劫でまだ買い換えていない。
花粉症の

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回想2023/02/07

回想2023/02/07

一昨日、夜空を見上げたら今日の月が満月だって気付いた。
その時、前よりも夜空を見上げることが少なくなったようにおもえて、少し寂しくなった。前はもっと満月を見つけていたような気がした。
周りの環境よりも目の前の狭い液晶の中や、生活の些細なことにばかり気を取られて、周りの今いる場所のことを広い目線で眺めることを怠ると、失われていくものがあると知っている。知っていながら僕の瞳は狭い隙間の中に吸い込まれて

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代々木公園

代々木公園

枝葉のざわめきが通奏低音のように響き、その響きの内側から小鳥の囀りが聞かれる。所々でサックスのようなカラスの鳴き声が入る。
東京にもこんな自然公園があるのだな………
木々の間からすり抜けて地面に刺す陽光は、屈折なくそこまで届く、その光は瑞々しく感じられる。
こんな自然をみるのはいつぶりだろう……
最近新しく下ろした革靴の底が地面を打楽器にして鳴る。その打音の鳴る間隔は短い。
公園へ来たのは、この自

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