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2024/07/01
くぼんだ眼のむくろ
ほどけたレースカーテン
海のにびいろ
純正の夏はもうこない
よびだす淡紅色
クリオネが声を上げて
氷が溶けだす
海がながれだして
ふいになみだする
理由もしらないまま
月がよって、さがって
つられて海も
引いていくなみだの
あとかたも消えていく
Vanishing point
夜中の日付も回りそうな頃に、自室のキッチンに備えつけの白色蛍光灯だけを点けて、冷蔵庫のブーンという音だけが一番大きな音になる程の静寂の中では、孤独が透明になっていくような心地良さを感じる。
一秒、二秒、三秒と数えて経る十分は長いのに、SNSをスクロールしながら経る十分の短さ。
時間は伸びたり、縮んだりするように感じられることについて随分昔から不思議がってきたけれど、未だ確かな回答を得られず。この真
Lost and found
山の稜線が隙間なく林立する緑色した木々に沿っていた。
葉緑体が緑という色を呈しているのではなく、私たちの眼が葉緑体を緑と見るのか。いつまで経っても答えのでないような膠着状態を私は心底気に入る。
十代の頃は、苦しみや努力の意味がいつか分かるのだと、なんとなくそんな風に考えていた。その後、考えていた期待は木っ端微塵に破砕したり、形を少し変えて叶ったりした。
私の見る世界は私固有の色眼鏡を通しているが
外部と内面世界 アリアの主題と変奏
私自身から離れていて尚且つ私に突き刺さった外部(仕事とか、家族とか、経歴や所属コミュニティなども)を何もかもを失ったとしても、生命が脅かされることでない限り、肉体は生き続ける。私自身も。それを改めて不思議だと思う。私と繋がりあう外部は私内部の価値基準と一緒くたになっていて、外部が失われることが、自身の内面の一部を失うことと同義のように感じられる。
起きたこと、その事実に一喜一憂する。しかし起きてし
手記2024/04/18
ずっと前の、時間の概念を知らない脳の中では今朝のような出来事、はじめは些細な出来事が、聞き入れることを拒まれた、追いやられた心の片隅──そこが相応しいとみなされた居場所──で谺して、繰り返すうちに大きくなっていく。
つまり、些細な出来事は、些細な事だと見なした出来事であり、自分自身にとって些細であるとは限らないこと、その答えは、自分自身しか知るよしがなく、その時私は、自分自身の声をどれだけ蔑ろにし
書評 重力と恩寵/シモーヌヴェーユ
要約
「知ること」と「全精神を打ち込んで知ること」の間に横たわる隔たりを知る人
われわれの魂のなかの恩寵は沈黙のうちにわれわれがふたたび神にあることを同意する日を待つ。重力は創造の法則であるから、恩寵の働きはわれわれを遡創造することに存する。われわれが「なにもの」かになれるように、神は愛によって「なにもかも」でなくなることに同意した。紙がふたたび「なにもかも」になれるように、われわれもまた愛によっ
2023/11/20
取ろうとしても離れてくれないひっつき虫が癒着してささくれのように痛む夏と秋の狭間、一日にも満たない季節のよろめきは、蝉のいない夏。きりぎりすの鳴かない秋。それらが同時に過ぎるような無時間性が頬を緩めるのをみた。見たことも聞いたこともないようで、聞いたことも見たこともあったような刹那。「私はそれを幼い頃に見ていたような気がする」
もう見ることの出来ないもの。それでいて記憶の先ではいつでも戻ることの出
回想2023/02/07
一昨日、夜空を見上げたら今日の月が満月だって気付いた。
その時、前よりも夜空を見上げることが少なくなったようにおもえて、少し寂しくなった。前はもっと満月を見つけていたような気がした。
周りの環境よりも目の前の狭い液晶の中や、生活の些細なことにばかり気を取られて、周りの今いる場所のことを広い目線で眺めることを怠ると、失われていくものがあると知っている。知っていながら僕の瞳は狭い隙間の中に吸い込まれて