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Vanishing point

夜中の日付も回りそうな頃に、自室のキッチンに備えつけの白色蛍光灯だけを点けて、冷蔵庫のブーンという音だけが一番大きな音になる程の静寂の中では、孤独が透明になっていくような心地良さを感じる。
一秒、二秒、三秒と数えて経る十分は長いのに、SNSをスクロールしながら経る十分の短さ。
時間は伸びたり、縮んだりするように感じられることについて随分昔から不思議がってきたけれど、未だ確かな回答を得られず。この真夜中には、一秒、一秒、を零してしまいたくないというだけの尊さを、時間に感じる孤独があり、それは日頃、浪費する時間のことを省みるきっかけでもある。

鼠色の雲に覆われて6月は、鈍く、淀んだ通奏低音を奏でるのに並行して、湿った熱を空気に含ませていく。
最も鬱蒼とした季節のただ中を、舗装された灰色の道を進む。立ち止まって考えると、平坦な道というのは、異様なほど不自然だ。
舗装されていないごつごつとした歩きづらい道を恋しく思う。不自然な道を、同じように不自然な私が歩いている。
   

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