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仕事に活かせる?意識低い系のための「好きにしろ&必要ならやれ」式英語トレーニング法

私は北米の(実質)ローカルメーカーに駐在したり、外資系メーカーで働いた経験のある工場系技術屋兼中間管理職だ。現職でも、コロナ前までは月に1,2回海外出張で、うち半分以上は日本人駐在がいない海外拠点だった。こういった仕事では、残念ながら日本語を一切分かってくれない現地の工場系技術屋や経営者、現場社員と仕事をしないといけない。私は決して「英語が出来る人」ではないが、彼らとの仕事を通じて、仕事でsurviveするために体得してきたものも多少は持っているつもりである。日本の製造業の復権を目指す工場系技術屋兼中間管理職としては、未来のある優秀な技術屋諸兄は英語は絶対に出来ないとダメだと考える。勿論口頭でも文章でも通訳を介することでコミュニケーションは可能だが、自分の考えや思いを100とすると、通訳後には50になったり150にもなることはあっても、100のまま伝わることは絶対にないからだ。自分の確たる考えや思いがあるなら自分で伝えろ、他人やAIに頼るな、なのである。

とは言え、私は「如何に努力しないかについてのみ努力する」性格であり、意識高い系の考え方とは対極にいる人間である。意識高い系の皆様が仰る以下のようなコメントには、カッコ内のつぶやきをしてしまう。「夢に向かって頑張って人知れず努力してます!(ふーん。で、成果は?)」「自己投資しまくりです!(経済回してくれてありがとう)」「TOEIC満点目指して勉強してます!(でも実戦で使う方が全然うまくなるし、取るべきは点数じゃなくて日本語分からないヒトとのコミュニケーションでしょ)」「留学したいんです!(いいことだ、頑張れ。でも現地で日本人とつるんで終了なら時間と金の無駄よ)」。

そもそも、私は仕事もあるし、本も読みたいし、家族との時間もあるし、ファミコンもしたいし(←未だに稼働中)、noteもやりたいし(←いつまで続くか知らないが)で、要は好きにしていたいので、必要でない限り意識高い系のアプローチは体質的にも物理的にも不可能なのである。ということで本稿では、私が実践している英語に関する「意識低い系」のためのトレーニング法について述べたい。私のような、全国の「意識低い系」の皆さんの参考になれば幸いである。尚、本稿のタイトル向けに一応「トレーニング法」としたが、本人にはストイックにトレーニングしている自覚は全くなく、単なるダラダラした日常の一部なんですが…。

0.前提条件

本稿で述べるトレーニング法の前提条件は以下のとおりである。

工場系技術屋の仕事の範疇で相手とコミュニケーションが取れればOK。日本から来た日本人なんて、英語をアメリカ人と同じように喋れるなんてことは決してないと理解している人が仕事相手。外資系の海外拠点で偉くなりたいと言う奇特な人には一切向きません。エグゼクティブとしてのきちんとしたビジネス英語を身につけてください。

②本稿内最後の「4.参考:私の恥ずかしい英語歴」に載せた経歴・環境の人がやっている。好きかつ必要だからやっているだけで、どこまで効果が上がっているかは分からない。まして読者の皆様の役に立つかは全く分からない。あなたには他にもっとよいトレーニング法があるはずです。

1.はじめに:「好き&必要」

教材を買ってきたり、学校に通って勉強する。素晴らしい努力だと思う。ご多分に漏れず、私も社会人になった頃TOEIC対策本とかやろうとしましたよ。でも、そのTOEIC本って好きか?必要か?と問われると本当に微妙である。そもそも日本語訳を読むと自分には何の関係もないバカみたいな文章がダラダラ並んでいるだけの内容で、読みたいとかやりたいと思えるシロモノではないし(架空の誰かと誰かの中身のない会話とか業務メールの内容を読まされて、その上正しいものを選べと言われても心底どうでもいい。問題作成者が勝手に選んでくれ、俺は知らんとすら思ってしまう)、TOEIC◎点取らないとおやつ禁止・飲み会禁止とか即解雇など、その本をやらないと困ることって何もない。かつて私が買ったTOEIC対策本なんて大抵購入から3日程度でブックオフ行きの段ボールへひっそりと送り込まれていた。そして思慮の浅い若者だった私は、それを繰り返していたのである。

マズローの欲求5段階説ではないが、私はヒトの脳は欲求が働かない限りただの肉の塊だと思っている。好きか?と問われてYesなのは「知りたい、やりたい⇒その結果快感が得られる」と思えることだろうし、必要か?と問われてYesなのは「やらないと大変なことになってしまう、或いはやれば何かすごくイイことがある⇒その結果生存出来る」と思えることだろう。逆に言うと、それらがNoであればどれだけ努力しても脳には残らないのである。

私程度の能力の人間では、「TOEIC必須単語3000!」みたいな本なんて所詮「好き」でもなければ「必要」でもないのだから、どれだけ読んでも脳に残る訳がない。逆に、駐在時代にペースは遅いながらもそれなりに現地の人達と仕事が出来るようになっていったのは、「好き」=「何だかこの人達凄くいい人達だし面白いし、現地のことや彼らの様々な考え方をもっと知りたい、仲良くなりたい、自分のことも理解してほしい」と強烈に思えたからであり、また「必要」=「そうしないと仕事が余りにも回らず、気が狂いそう」になっていたからである。だから、若い頃TOEIC対策本を新品同様で何冊もブックオフ送りにしていた私は、今では「好き」で「必要」なことでしか英語に触れないようにしているのである。その2条件が揃わないと習得効率が著しく低下し、ただの時間の浪費になるのだ。これを”意識低い系のための「好きにしろ&必要ならやれ」式トレーニング法”と名付けたい。

2.意識低い系のための「好きにしろ&必要ならやれ」式トレーニング法

前置きが長くなってすみません。やっと本題です。

①好きで必要な情報にしか触れない

私は「好き」=知りたいが、「必要」=日本語では入手できない情報のみ、英語で触れている。また、基本的にソースは土地勘のあるカナダかアメリカの報道に絞っている。全然知らないし興味もない国のニュースを観たり聴いたり読んだりしたところで、寝落ちするだけ=好きでもないし必要でもないからである。特にカナダだと英語が聴き取りやすいので、ストレスが余りない(アメリカより遥かにオープンな移民国家である上に英仏2語が公用語であるためか、公共放送で流れる英語はアメリカより聴き取りやすい気がする)。

【其の1 ラジオ番組】

今は在宅勤務だが、満員電車での通勤時にポッドキャストで以下のラジオ番組をよく聴いている。他にも現地の情報番組や政治番組も聴くが、ここでは割愛する。

”Spark from CBC Radio"(カナダ):IT技術関連の情報を、専門家へのインタビュー形式で一般向けに分かりやすく解説。技術に寄り過ぎておらず、マーケティングとの絡みもあったりするバランスがよい。また、たまに「えっ、そんな有名人連れてきたの?」と言う回もある。

"Quirks and Quarks from CBC Radio"(カナダ):科学全般の情報を、これまた専門家ヘのインタビュー形式で一般向けに分かりやすく解説。理系の人なら全般的についていきやすいジャンル。こちらも当年のノーベル賞受賞者が平気でゲストに出てきたりするので面白い。コロナ関係の解説も多い。

いずれも「好き」=「知りたい」が、「必要」=「日本では情報が入手できないので仕方なく」聴いているものである。

【其の2 テレビ番組】

コロナ以降日本のマスコミの報道姿勢に心底辟易しているので、このところYouTubeで海外の報道を観ている。この場合「好き」=コロナ情報や海外の対応状況を知りたい、「必要」=日本の報道から自分を切り離す、である。

YouTubeのいいところは、字幕が出るので知らない単語が出てきてもすぐに調べられることである。COVID-19関連でも知らない専門用語がどうしても出てくるので、字幕が音声と完全に同期していれば非常に楽だ。また、個人的に下記リンク先の番組のアンカーVassy Kapelosが滅茶苦茶好みで大好きなので、英語とかコロナ情報というより単に彼女が話すのを観るために毎日アクセスしている(下記②にも通じるが…)。因みに、我が子にはいつも「今の若者にはこういう恵まれた環境があるのだから、これで英語が出来るようにならないはずがない」と言うが、彼らは興味なさそうである。時代は繰り返すのである。

”Power & Politics (CBC news)”(カナダ)

https://www.youtube.com/watch?v=QtNIzO5FhTA

カナダの国営放送が流しているCBCニュースの1コーナー。アンカーによる解説、インタビューなど。他にも字幕は音声に同期しないが、日本のニュースウォッチ9に当たる「CBC The National」や、女性ウケしそうな「世界を代表する若手イケメン首相」Justin Trudeauによる国民への30分程度のコロナ関連スピーチ&質疑応答が現在毎日日本時間午前0時過ぎから拝める「CBC News」も分かりやすくお勧め。

また、技術関係の番組も興味本位で色々観ているが、こちらもお勧めです(これも字幕が同期していて楽)。

”CNBC”のTechnologyカテゴリ(アメリカ)

https://www.youtube.com/watch?v=VUvtuKUP-M0

②外国人のお姉さんのいる飲み屋でお喋りする

女性の読者の方、申し訳ありません。しかし、ふざけているわけではない。マジである。男性限定で恐縮だが、個人的には喋りを鍛える最善手は心の底からこれしかないと思っている(彼女や奥さんが外国人というリア充の方を除く)。外国人(日本人でも)のお姉さんのいる飲み屋が「好き」、かつ職場や友人とのお付き合い上「必要」という工場系技術屋の男性は多いはずである。ご多分に漏れず、私もそうである。

もう何年も行っていないが、私は若い頃は工場の現場の人との2次会、3次会の隅の方でいつも外国人のお姉さんにマンツーマン、もしくは1対2程度の英会話教室をしてもらっていた(もちろん、同時に現場の人とのコミュニケーションも取ってましたよ)。と言っても、お互いにひたすら英語で飲み屋の馬鹿話をするだけである。酔っぱらっているので、喋れない・聴けない羞恥心が薄れること、時間の許す限りお姉さんと楽しく話したい&ウケたいという強烈なモチベーションが働くことで、下手な英会話教室やらスカイプ会話よりも余程コスパが良い。田舎のせいか英語で一生懸命話そうとする日本人客は珍しいようで、お姉さんたちも面白がってくれていた。恥ずかしながら不肖私が生まれて初めて「俺、日本語と同じ感覚で、英語で普通に会話できてしまった」と実感し自信が持てたのは、駐在時代初期、出張先のマンハッタンで訪れた飲み屋でのことでした。夜が明けてみると一夜限りの儚い夢だったが、真面目な話、錯覚でもいいので絶対的な自信が持てるかどうかということは非常に大事だと思う。「あの感覚で相手と話すぞ!」と言うイメージが明確に出来るので

(※追記:これを読んだ意識低い系のワカモノの人へ。「そうか、飲み会で外人のお姉さんと話せばいいのか!」と早合点し、留学生等の「飲み屋のお姉さんではない普通のお姉さん」に上記のノリで飲み会で絡むのは決してお勧めしない。彼女とキミのお友達としての関係が終わり、翌日以降目も合わせてくれなくなるのがオチである。飲み屋のお姉さんがキミのくだらない話に付き合ってくれるのはキミに好意を持っているからではなく、単に仕事だからという鉄則を決して忘れてはいけない。)

以上、”意識低い系のための「好きにしろ&必要ならやれ」式トレーニング法”でした。

3.まとめ

語学はあくまでも語学であり、学問でもなければ苦行でもない。ヒトが言語を習得するのは根本は生来の生物としての能力によるものであるが、幼児の言語習得の過程を観ていると、脳の発達に合わせながら正に「好き」&「必要」だからどんどん言語を吸収し、自分のものにしていることを痛感する。大人になっても、語学を習得するというのは結局はそれと同じなのではないか。幼児と違い、脳は発達どころか、アルコールによる劣化が進行している可能性はあるが(私は自覚あります)

本稿に記載した方法があなたにも効果があると言うことはきっとないと思うが、それはあなたが目指すところが私よりも遥かに上であるためか、好きでも必要でもないことをやっているためかもしれない。

4.参考:私の恥ずかしい英語歴

私の英語歴を記載しておく。この程度の奴はこの記事程度のレベルにしかなれないんだな、と言う参考にしてください。興味ないと思いますが、併せて一応自己紹介も貼っておきます。


①幼少期~学生時代 

・田舎だったので、外国人なんてテレビとシーズン中の広島市民球場のグラウンドでしか見たことなかった(広島育ちなので、カープの試合を観に行ったときに外国人選手を観て「レーシッチ(←中日・ゲーリーの兄。84年にカープに在籍)、ぶち(すごく)でかいわ」などとビビっていた)。中2の春か夏(?)に学校で受けさせられて英検3級を取った。その後も受験英語は得意だったがリスニングはダメ。大学入試でもリスニングがあったが、配点が低いのでほぼ捨てていた。院試も英語は筆記だけだったので結構できて、教授に褒められた記憶がある。

・生まれて初めてまともに外国人と英語で会話したのは修士1年のとき。研究室に留学生が来たため。でもその留学生はあっという間に日本語が分かるようになってしまい、以降ろくに英語で会話せず。共同研究でUCバークレーの先生が2カ月位いたこともあったが、ビビってろくに会話せず。英語のペーパーを出すこともなく寂しく卒業。

②社会人時代 

・就職してから8年間は、英文の文献を読むようなことも外国人との接点もなく、日本語ばかりがうまくなる。会社推奨でTOEICを入社1年目と2年目に嫌々、合計2回だけ受けた(リーディングで稼いで750点位だった。今なら流石にもっと取れるはず。好きでも必要でもないので絶対受けないですけど)。「英語を忘れてはならない」と思い一時TIME誌を定期購読したが(←意識高いなあ~)、あっという間に封を切ることもなく廃品回収に回るようになった。そう言えば1回だけ外国人の工場見学をしどろもどろで担当した。

・新婚旅行で生まれて初めて海外(アメリカ、カナダ)に行った。現地人が何を言っているのか分からないので、ほぼほぼテレパシーで会話した。

・北米に駐在することになる。最初半年はほぼ仕事にならず。自分が運転する帰りの車でほぼ毎日泣く。そのうち段々話が通じるようになってくる。3年後、帰国する頃には公私とも全くストレスを感じなくなる(日本語のようにはいかないことに慣れただけとも言う)。

・日本語の本が読みたいのに当然本屋や図書館では日本語の本は手に入らず、仕方がないので「本を読む」行為のために原書をそこらへんの本屋で買って暇つぶしに読み始めたのも駐在時代。生まれて初めて通読できた洋書はジャック=ウェルチの「WINNING」。当時はまだ意識高い系だったらしい。以降、ジム=コリンズやらヘンリー=ミンツバーグ、クレイトン=クリステンセンと言った日本でも鉄板の経営学者の原書や、トヨタ関係の書籍をよく読んだ。「好き」かつ「必要」だったから読んだだけだが、今思うと余程暇だったのだろう。

・外資系企業に転職し、月1程度外国人の工場見学、会議の対応をする。グローバル本社から流れてくる連絡や資料は全て英語。自分が作る資料もたまに英語。6年間在籍。

・日系企業に転職し、月1,2回海外出張。英文資料も日常的に作成したり読んだりする。外資系に比べると、英語の面では正直かなり楽である。

・現在は仕事で(嫌でも)英語に触れることがあるのを除き、本稿に記載したトレーニング法以外で英語に絡むことは殆どない。日本に外国人の友達がいるとか、英会話教室に行く金と時間があるといった恵まれた立場ではないし、今後英語のためだけにそういうことをする気も一切ない。正に意識低い系。【了】

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