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ニッポンのアンティークしおり

ニッポンのアンティークしおり

豊嶋利雄

アンティークやレトロと呼ばれるものはついつい手にしてしまう。
今は目にすることができない書体や
今のほうが多色を表現できるのに、カラフルだと感じる鮮やかさ
手書きがベースになっている線の強弱、
手が込んでいるのにどこか手抜きに見えてしまうことも。

こんなにしおりがあったなんて知らなかった。
時代背景や企業宣伝、国や自治体の方針で作られたもの。
池田ムヒ(P32)の「まあ良く蚊に好かれ

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月と散文

月と散文

又吉直樹

いつからこんなに引き込まれているのだろう。

「劇場」、「人間」の生々しさが遠くでゆらゆらしていてこの本を見つけた。(火花は、読んでいない。又吉さんの言葉を借りるなら、恥ずかしいから)

恥の多い人生を送ってきました。を彷彿とさせる冒頭。「はじめに」ではなくて、ここからはじまっている。自分が存在していることが他者とのつながりができることで認知され、恥ずかしくなる。自分のためにちょっと大

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母という呪縛 娘という牢獄

母という呪縛 娘という牢獄

斎藤 彩

これは実話だ。
ドラマ手前の現実にいる。

まじか・・・まさか・・・うそでしょ・・・
話が進んでいくにつれて自分が小説を読んでいる、と錯覚してしまう。

娘の人物像が、母の呪縛を浮き彫りにしている。
字が綺麗、落ち着いている。
両親の不仲からの離婚。周囲の理解不足と、母の虚言癖。暴力。
母の詳細な人生については書かれていなかったが、華々しい生活をしている人(祖父母)がいることで劣等感は

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きみはだれかのどうでもいい人

きみはだれかのどうでもいい人

伊藤朱里

きみはだれかにとってどうでもいい
ー(だからあなたも自由になっていいんだよ)
ー(だから酷いことをしてくる人もいるんだよ)

キキララの彼女は、「実はイタいタイプだ」と感じた。過去の自分の姿がいくつか重なる。うまく立ち回ろうとし、出来てしまうが故に自分の中の幼稚な部分が追い付いてこない。幼少時代に「良い子」だったタイプにはこの傾向があると思う。失敗経験が少ない、親から怒られたり衝突する

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クねずみ

クねずみ

動物が主人公なのが、宮沢賢治らしいと思う。

エヘンエヘン。
クねずみは、他の生意気な奴が気に入らない。自分が一番だ。

むつかしい言葉が出てくると、エヘンエヘン。
相手も驚いて、しまいには逃げ出してしまう。
その高慢さから、みんなの目の前で暗殺されることが決められてしまう。
猫大将からもらった家庭教師のチャンスも・・・

エヘンエヘン。

ネットでも読むことができるこの話。
宮沢賢治が生きた時代

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金平糖の降るところ

金平糖の降るところ

こんぺいとう。食べる機会が少ないお菓子だ。
江國さんの本が読みたい、と思っていた私はその可愛らしい表紙と題名、図書館の目立つ場所に置いてあるという理由で手に取った。

2011年10月に出版されたという。東日本大震災が起きた年、いつから書き始めていたのかはわからないが生命力を強く意識させる一冊だった。

スペイン語が出てきて、懐かしさと日系社会が出てくる小説があったんだと衝撃を受けた。姉妹の幼少期

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成瀬は天下を取りに行く

成瀬は天下を取りに行く

なんといっても、この表紙がいい。
少女の口元が見えない分、目元が強調されて意志が強い人なんだろうと思う。この少女が主人公なのだろうか、ライオンズのユニフォームを着ているということは、成瀬という人物が野球選手になる物語なのだろうか…黄色と青の鮮やかさが(初)夏の話なのだろうと思わせてくる。

成瀬は、まっすぐだ。不器用ではないのに危うくて、もろい。
そのもろさを支えるのが大の大人ではなくて良かった。

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