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書物巡礼

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小説、漫画、エッセイ、絵本。 読んで感銘した本たちについて綴っています。 この文章を通して、アナタの新しい書物との出逢いやきもちの高鳴りに繋がったら嬉しいです。 #本 #読書
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記事一覧

「うるわしの宵の月」やまもり三香⁡

「うるわしの宵の月」やまもり三香⁡

書物巡礼
2022.3.8


「ひょろりと伸びた体躯
やや低めの声
親譲の男顔
瀧口宵 高校1年 性別、女。」

「べつに女子がみんな淑やかである必要なくね?たまには王子っぽい女の子がいたっていいでしょ
実際さっきのアレ、めちゃくちゃトキめいたし、オレ」

「んだこれ
心臓やっべぇ」

「私、先輩にちゃんと好きになってほしいって思ってる」


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ルックバック/藤本タツキ

ルックバック/藤本タツキ

書物巡礼
2022.1.23
藤本タツキ
「ルックバック」

「描いててよかったって思えた
藤野ちゃん、部屋から出してくれてありがとう」

「じゃあ私ももっと絵ウマくなるね!藤野ちゃんみたいに!」
「おー京本も私の背中みて成長するんだなー」

「私のせいだ....
私があの時漫画描いたせいで.....」

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誰かの人生を巻き込んでしてしまうのは、生きている限り誰にでも起こりう

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きらきらひかる/江國香織

きらきらひかる/江國香織

書物巡礼
「きらきらひかる」
江國香織


「あいつと結婚するなんて、水を抱くようなものだろう」

「さっきまであんなに気丈だった横顔が、もうたよりなくゆがんでいる。白くて、小さくて弱々しい。彼女をおいつめているのは僕なのだ、と思った。ひどくせつなかった。」

「どうしてこんなにこじれてしまったんだろう。私は睦月と二人の生活を守りたいだけなのだ。失うものなんて何もないはずだった、私たちの結

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書物巡礼展 開催のお知らせ

書物巡礼展 開催のお知らせ

11/1(月)-11/21(日) LOFT9 Shibuyaにて
コラボ企画展「書物巡礼展」を行います。📚

書き下ろし含めた10作の巡礼文、巡礼な私を撮影したポートレート10作からなる書籍『書物巡礼本』を製作。
各席に展示し、ドリンクやデザートに舌鼓しながらマイペースに作品鑑賞していただけるスタイルとなります。
本は紙選びから行い、一つ一つ手作業で製本します。初めての挑戦に四苦八苦でしたが良い

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書物巡礼  川上弘美「神様」「草上の昼食」

書物巡礼 川上弘美「神様」「草上の昼食」



「くまは、雄の成熟したくまで、だからとても大きい。三つ隣の305号室に、つい最近越してきた。
ちかごろの引越しには珍しく、引越し蕎麦を同じ階の住人にふるまい、葉書を10枚ずつ渡してまわってきた。
ずいぶんな気の遣いようだと思ったが、くまであるから、やはりいろいろとまわりに対する配慮が必要なのだろう。」

「「失礼、つい手づかみで食べてしまいまいした。ぼんやりしていて。」
いいのに。いつも

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書物巡礼番外編 2021.9.3

書物巡礼番外編 2021.9.3

「幸せな孤独」
スザンネ・ピエール

19年経ってようやく「あ、そういうことだったのか」と思った。
本当の意味が掴みとれないまま頭の片隅に存在し、折に触れて心の書棚から引っ張り出し眺めていた自分の中の疑問。
その疑問に先日ようやくケリがついたのだ。

私がこの映画に出会ったのは高校生に成り立ての初々しい時期で、今思うとかなり背伸びをしたチョイスなのだが、たまたま目にした予告動画に惹かれ、クラス

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書物巡礼 2021.6.11

書物巡礼 2021.6.11


「ムーンライト・シャドウ」


「恋人を亡くしたのは長い人生、と言っても20年かそこらだが、のうちで初めての体験で私は息の根が止まるかと思うくらい苦しんだ。」

「思い出が思い出としてちゃんと見えるところまで、1日もはやく逃げ切りたかった。でも、走っても走ってもその道のりは遠く、先のことを考えるとぞっとするくらい淋しかった。」

「別れも死も辛い。でもそれが最後だと思えない程度の恋なん

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書物巡礼 2021.7.1

書物巡礼 2021.7.1

「ハリーポッター」シリーズ全7巻
J.K.ローリング

「死とは長い一日の終わりに眠りにつくようなものだ。
結局、きちんと整理された心を持つ者にとっては死は大いなる冒険に過ぎないのじゃ。」

「心は書物ではない。好きな時に開いたり、暇なときに調べたりするものではない。思考とは、侵入者が誰彼なく一読できるように、頭蓋骨の内側に刻み込まれているようなものではない。心とは、複雑で重層的なものだ」

『ス

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書物巡礼 2021.6.13

書物巡礼 2021.6.13

「女の園の星」

「今日お昼購買ダッシュね」
「おっけ〜」

「ね〜、次の授業誰だっけ?」
「えーっと…..。ポロシャツアンバサダー」
「ああ大使か」「ダル」


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高校生活はたのしかった。
それなりに揉め事もあったけど、総じてたのしかった。
特に思い出深いのは1年生のクラス。
いつも一緒にギャアギャア騒いでいたお馴染みのメンバーとは今だに連絡を取り

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書物巡礼

書物巡礼

『コンビニ人間』

「なぜコンビニストアでないといけないのか、普通の就職先ではだめなのか、私にもわからなかった。ただ、完璧なマニュアルがあって、「店員」になることはできても、マニュアルの外ではどうすれば普通の人間になれるのか、やはりさっぱりわからないままなのだった。」
「眠れない夜は、今も蠢(うごめ)いているあの透き通ったガラスの箱のことを思う。
清潔な水槽の中で、機械仕掛けのように、今も

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書物巡礼 2021.5.26

書物巡礼 2021.5.26

『コジコジ』



「正月君、飛べない時はゆっくり休めば良いじゃん。
仕方ないよ、飛べないんだから。」

「でももう、あなたのことで泣いてばっかりの自分より、もっと自分自身のことで喜べる人生を歩みたいと思ったの。
……..今までありがとう。」

多くの方々が惹かれる要素であるように、私も、”ギャップ”というものが大好物だ。”ギャップ萌え”という感情には、”多面性があるものに魅力

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書物巡礼 4.9

書物巡礼 4.9

『赤目四十八瀧心中未遂』
車谷長吉


「「生島さん、うちを連れて逃げて。」
「えッ。」
アヤちゃんは下唇を噛んで、私を見ていた。
「どこへ。」
「この世の外へ。」」



小学生の時、友達にプロフィールを書いてもらいファイリングして集める、というのが流行っていた。(今もあるのだろうか。)
生年月日、血液型、得意科目、趣味、やっている習い事、など色々ある中に”好きなタイプ

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書物巡礼 1.23

書物巡礼 1.23

『脱サラ41歳のマンガ家再挑戦
王様ランキングがバズるまで』


「ただ、マンガを描いて貯金を切り崩す生活を一年半続けている。全ては自分の絵だけで食べていけるようになるため。40歳過ぎ独身男の一大決心なのである」

「ずっと靄がかかった世界.....
オレはこれから先ずっとそうなんだろうか....
何も楽しめなくてずっと1人....
モヤモヤするよりワクワクして生きたい!」


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書物巡礼 12.19

書物巡礼 12.19

『パリの砂漠、東京の蜃気楼』
金原ひとみ

「逃げられない日常がいつも目の前にあって、日常は怖がる私をまた被膜になって覆う。恐怖と日常のミルフィーユは何重にも重なり、生きれば生きるほど、何も見えなくなっていくように感じる。」
「まるでもう長いこと、自分は全くもって生きていないような気がしている。生きているのか死んでいるのかも分からないまま、助けてという言葉の行く宛もなく苦しいだけの毎日が拷

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