忘れていたのは私(HANAちゃんストーリー第10話)
朝起きて家事をして、子供たちを送り出し、会社へ出勤。
仕事が終わり、子供たちを迎えに行き宿題の確認、夕食準備。
後片付けをして、また家事をする。
これが私のライフサイクル。
しんどい。
毎日がくたくたで、1日をこなすことで精いっぱい。
こんな毎日がいつまで続くのかな。
くたくたになった夜、やっと自分の時間が取れるとリビングでテレビをつけ寝転がった。
疲れていたのだろう。ウトウトしてしまって、気付いた時には楽しみにしていたドラマはとっくに終わっていた。
「あ~また見逃した」
何度もこの見逃しをしている。
自分の時間は睡眠時間を削って捻出している。
何のための自分時間なのだろう。
リビングで気が付くと12時を回っていた。ずいぶん寝てしまった。
起き上がろうとした時、なんだか足元に暖かいものが当たっているのに気が付いた。
なんだろう。このフワフワで温かい感じ。
体を起こし足元に目をやると、フワフワの犬が丸くなって寝ているではないか。
うちはペット禁止だし、どこからか入ったのかな。いや、ここは4階。勝手に入ってくるわけもない。
これは夢なのか。まだ夢の中なのかも。
私の思考はフル回転した。
しかし、すぐに思考は停止した。
「なーふぃー?どうしたの?」
と、その犬は目をこすりながらこちらに話しかけてきた。
夢が現実が分からなくなった私は、この流れに逆らわない事にした。
「えっと・・・うっかり寝ちゃって」
と答えると
「疲れてるんだね。毎日忙しいものね」
と優しく答えてくれた。
「うん。毎日くたくた。最近、何の為にこんなに頑張っているのか分からなくなっちゃった」
私はいつになく素直に言葉が出てきたことに驚いた。
「何のためだと思うの?」
「ん~。家計のため、家族のため、会社のため、親のため、子供のため・・・かな」
「そうね、そんなにみんなのために頑張っているならクタクタになるわよ」
「もう一つ忘れていない?」
「もう一つ?」
なんだろうと考えてみるけど、全く思いつかなかった。
「もう一つって何?」
「あなたのためよ。自分のため、を忘れているわ」
ニッコリ微笑んだその犬はとても可愛かった。
「私のため・・・?」
「そう、【自分のため】も仲間に入れてあげて。あなたにとって、貴方はとっても大事な人でしょう?大事にしていいのよ。自分を大事にしていいの」
私はそう言ってくれる可愛らしい姿の犬にそっと抱き着いた。
「ありがとう」
珍しく視界が滲んできた。
こんなに泣いたのはいつぶりだろう。
泣き疲れてすっかり私は寝てしまっていた。
目を覚ますと、その犬はいなくなっていた。
夢だったのかな。
でも、はっきりと覚えている。あの暖かくフワフワとした感触。
そして、私が忘れていたものを思い出させてくれた言葉を。
「あなたにとって、貴方はとっても大事な人でしょう?大事にしていいのよ。自分を大事にしていいの」
今日から私も大事にしてあげよう!!
終わり
読んでくださりありがとうございます!!