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第4章 金色の街エルムハース 第7話

第7話 オークション


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セリーナ嬢

「レイラさんのそのドレス姿、セリーナ嬢にも勝るとも劣らない美しさですわ。」

「セリーナ嬢とは?」

 サラにアイザックが尋ねる。

「そうか、アイザック君はまだご存じなかったのね。
 セリーナ・レイヴンスクロフト様と言ってね、この町の貴族のお嬢様で私のお客様なの。
 艶やかな黒髪に、青い瞳が美しい方よ。なんでも剣の腕も立つとか。
 ただ、あれだけ綺麗な方なのに浮いた噂が一つもないところが不思議なのだけど。」

 貴族の娘でありながら、剣の腕も立つとは珍しいことだとアイザックは感心した。

「オークションに参加するなら、会場で会えるかもしれないわね。でも最近、なんでも呪いをかけられ、お屋敷にこもっていることが多いとのうわさを聞いたわ。心配ね。」

 一緒に聞いていたレイラも呪いという言葉を聞いて、不安気持ちになった。

「そうだ、アイザック君、神様から祝福を授かったんですって?お父様がおっしゃっていたわ。もしセリーナ嬢に会えたら何とかならないかしら。」

 父ジョナサンが祝福についていろいろな人に話していることに、アイザックは苦笑いしつつも、苦しむ人がいるのであれば、放っておけないとも考えた。

「私たちができることを考えましょう。人が呪いに苦しむのは悲しいことですから。」

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 夕焼けの空の下、エルムハーストの中心に位置するオークション会場の華やかな外観は行き交う人々の視線を釘付けにし、その中心にあるオークション会場へと誘い込んでいた。

 アイザックが大きなドアを開け、私は彼の後を追うように会場へと足を踏み入れる。

 一歩中に入ると、それまでの外界とは異なる世界が広がっていた。
 中に広がるのは、華麗なシャンデリアが天井から吊り下げられ、高級感漂う空間だった。

 私の手を引いて、アイザックは多種多様な出品物が展示されている奥へと進んでいく。多種多様な種族が豪華な衣装をまとい、煌びやかなジュエリーを身につけ、さまざまな物腰で会話を楽しんでいた。

 その中にいる一人、なめらかな黒髪に濃く蒼い瞳をした女性に視線を奪われた。彼女はセリーナ・レイヴンスクロフト。サラさんが話していた貴族のお嬢さんだとすぐに分かった。
 優雅な立ち居振る舞いと美しい容姿で周囲の注目を集めていたが、呪いのせいか、目元には疲れと憂いが宿っているように見える。

 話しかけた方が良いのかなと迷いつつ彼女を見つめていると視線が合い彼女が微かに笑みを浮かべるのが見えた。
 私たちの方に歩み寄ってきた彼女の声は優雅で品のあった。

「初めまして、セリーナ・レイヴンスクロフトと申します。あなたたちは?」

 アイザックは礼儀正しく頭を下げ、私を紹介する。

「私はフェリウッド商会のアイザックと申します。本日は父ジョナサンの代理として参加しました。そして、こちらは私の大切な恋人、レイラです。」

セリーナは微笑みながら、レイラをじっと見つめた。

「あなたはとても美しいわね、レイラ。そしてアイザック、あなたもとても幸運ね。
 ・・・フェリウッド商会のご子息でハーフエルフということは、、、もしかしてあなた、祝福を受けたと噂の方かしら?」

 ・・・ジョナサンさん、ちょっと方々に言い過ぎなのでは、、、

 彼女の言葉に、私たちは微笑みを返した。しかし、セリーナの瞳の奥には、何か秘密めいた闇が宿っていて、それが私の心をくすぐった。

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 オークションが始まる前、倒れたグラスの水をこぼれないよう水の精霊をにお願いしてなんとかしてもらう機会があり、それが彼女の興味を引いたようだった。

「あなたのその水の精霊の使い方、実に興味深いわ。まるでお友達にお願いしているみたい。それについて教えてくださる?」

 と、彼女が温かい口調で話しかけてくれたのでうれしくなった。
 そして、オークションが進む中、アイザックとの旅の話をしていると、彼女は私に一つの秘密を打ち明けてくれた。

「世界を見て回る旅、素敵ね。私もあなたたちみたいな冒険をしてみたいわ。
 本当は私、剣が得意なの。貴族の娘何におかしいわよね。他の方には内緒よ。」

 彼女の瞳は誇らしげに輝いていて、その一言で、彼女との距離が縮まった気がした。私たちは、それぞれの秘密を共有し、深い絆で結ばれていく。

 そして、オークションの目玉でありエロティア様のシンボルが出品された。
 二つの心のシンボル。
 それは鋭角のハート形状で、一つは赤色、もう一つは金色で、互いに融合しながら回転していた。
 その動きはまるで二つの心が交錯し、絆で結ばれているかのようだった。

 全ての視線がシンボルに釘付けになる中、セリーナを見jjると。彼女の瞳が大きく見開かれ、息を呑んでいた。

「あ、あのシンボルは、、、夢じゃなかった、のね、、、」

 と彼女はつぶやくと、その表情が安堵へと変わり、その場に崩れ落ちた。

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 窓の外が白く開け始める中、
 疲れ果てた私セリーナは、寝台の上で動けずにいた。

 魔獣によって精神がむしり取られ、身も心も空っぽにされてしまった。
 意識は膜がおおったままだ。

――― 眠るのが怖い
――― 眠りの中、あの魔獣に襲われるのが怖い

 いつまでこれは続くのか――― 

 そうを考えると、感情を失いかけた瞳から、涙が頬を伝った。

「これは惨いことをするものじゃ」

 ふと、耳に柔らかな音色が届いた。そ
 れは少女のような、純粋さに満ちた声だった。
 その声は、私の心に静けさをもたらし、暗闇を照らす一筋の光のようだった。
 鈴の音のように繊細で温かみのあるその声に、最後の力を振り絞って目を遣る。

 12歳前後であろうか
 朝日に金髪をきらめかせ、エメラルドのような深い緑の瞳をした美しい少女が窓辺に佇んでいた。

「これこれ、酷い目にあって疲れておろうに、そのままでよいぞ。
 ・・・さてと、まずは活を入れてやろう」

 そう言うと彼女は私の前髪をかき上げ、額に口づけをした。
 春の花のような香りがした。
 彼女の薔薇のような唇は柔らかく、そしてそこからぬくもりが伝わってくると
 枯れた果てた精気が徐々に回復してくるの感じた。

「わらわは性と愛の女神、エロティアじゃ。最近わらわの司る性の力を用い、不埒な呪いなんぞにする輩がおると聞いてやってきたのじゃが、なんとまぁ、酷いことをするものじゃ。
 じゃがわらわが来たからには安心せい!なんとかして進ぜようぞ。」

 彼女の指先が空中をなぞると、二つの心のシンボルが現れた。それは鋭角のハート形状で、一つは赤色、もう一つは金色で、互いに融合しながら回転していた。
 その動きはまるで二つの心が交錯し、絆で結ばれているかのようだった

「これがわらわのシンボルじゃ。中々かわいいじゃろう?
 明日おぬしはオークション会場へと行き、このシンボルを探すのじゃ。
 さすれば新たな出会いが、主をその苦しみから救ってくれようぞ。」

 それだけ告げると、少女の姿が朝の光にとけて消えていく

「・・・そうそう、から、楽しみにしておくことじゃ」

 去り行く少女から、不敵に笑うような気配がした。

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トップイラストはセリーナ嬢です。
そうです、四章冒頭で襲われていたお嬢さんです。


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