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異語り〜コトガタリ〜

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【現代怪談】 日常に紛れ込んだ微かな異の物語を綴っていきます。(毎週木曜日更新)
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2021年3月の記事一覧

異語り 035 罠

異語り 035 罠

コトガタリ 035 トラップ

子供の頃住んでいたところは京都市の南。南端近くの区だった。
都会ではないが、田舎でもない静かでいい街だった。

住んでいたのは国道沿いのマンションで、大阪から京都へ抜ける賑やかな国道沿い。
その近くには大きな団地が三つあり(今はUR賃貸住宅というのだろうか)友達もたくさん住んでいた。
今は綺麗に建て直された団地が多くなってきたが、自分が子供の頃は『鉄筋コンクリートの

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異語り 034 海底十里

異語り 034 海底十里

コトガタリ 034 カイテイジュウマイル

先日の新聞で『海底で熟成させると酒がうまくなる』との記事を見つけた。
記事を読んでいると、昔祖母が聞かせてくれた話を思い出した。

私はまだ外国に行ったことはないが、祖父母はあちこち旅行していた。
幼い頃の私は祖父母の家に並ぶ珍しい土産物が好きだった。
でもそれ以上に祖母が話してくれる外国の話が大好きだった。
その中で祖母が何度も話してくれたのは、私が生

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異語り 033 出目金

異語り 033 出目金

コトガタリ 033 デメキン

中学生の頃だったと思う。
夜1人で入浴していると、視界の隅に黒い影がよぎった。

ギクリと体がこわばる。

影はゆらゆらと右肩越しに私の背後へ消えていった。

まだ湯船に腰を下ろしたばかりだったので、縁に背中を付けていなかった。

得体の知れない何かが
今自分の背後にいる。

ざわざわと全身に鳥肌が立つ。

とてつもなく不安だが、振り返り確認する度胸もない。
じりじ

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異語り 032 来訪者

異語り 032 来訪者

コトガタリ 032 ライホウシャ

冬の間、家の庭は雪に埋まる。
我が家の庭は裏に作ったので、周囲も家に囲まれ家族以外が歩くことはまずない。
一年の内4ヶ月ほど出られなくなる庭だが、時々何かの足跡が残っていたりして結構楽しい。
それも雪が降るたびに真っ白にリセットされるので楽しみも持続する。

ある時は、庭を横断していった猫の足跡。
また別の日にはバタバタと羽の後まで残していったカラスたちの遊び跡

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異語り 031 ひなまつり

コトガタリ 031 ヒナマツリ

小学生の頃、毎年雛祭りの日にSちゃんの家におよばれしていた。
Sちゃんの家のお雛様はとても立派で、当時の私の身長より大きなひな壇に、たくさんの人形や家具、そしてお菓子が飾られていた。

学校が終わってからの会でも、まずはちらし寿司から始まり、さくら餅、ひなあられ、白酒とフルコースが並べられる。
Sちゃんも併せて五名程の女の子だけが呼ばれていた。みんなでおしゃべりし

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