ゆうれい貸屋&鵜の殿様八月納涼歌舞伎第一部観劇レポ かぶきDOUアフタートーク其の72
いつもかぶきDOUをお聴き頂きありがとうございます!今回も歌舞伎座八月納涼歌舞伎のかぶきDOU観劇レポートをお届けしました。
八月納涼歌舞伎のはじまり
十世坂東三津五郎さんと十八世中村勘三郎さんが中心となって1990(平成2)年から八月納涼歌舞伎は始まりました。
様々な層のお客様が足を運びやすい様にと3部制を設け、料金設定をリーズナブルにして演目も挑戦的なものを積極的に上演し、歌舞伎座の夏の風物詩として定番となりました。
近年では十八世勘三郎さんや十世三津五郎さんが勤められた人気演目をご子息が勤められ話題となっています。今回の第一部ゆうれい貸屋もその一つです。
ゆうれい貸屋 歌舞伎座での初演
ゆうれい貸屋は時代小説で有名な山本周五郎の原作です。初演は1959(昭和34)年9月明治座でした。歌舞伎座で初めて上演されたのは2007(平成19)年の八月納涼歌舞伎でした。当時の筋書よりご紹介いたします…
十世坂東三津五郎さんは山本周五郎作品のゆうれい貸屋の上演の機会をうかがっていたそうです。「自分が弥六をやりたいというより、幽霊の人材派遣というテーマに現代性がありますし、納涼歌舞伎に幽霊の話はもってこいですから。それに福助さんは染次にピッタリでしょ」とコメントされています。
十八世中村勘三郎さんは「台本読んだらセリフが多くてびっくり。でも新しいものに挑戦するのは面白い。一所懸命やります」とコメントされていました。
当時の主な配役は
◯桶職弥六(やろく)
坂東三津五郎
◯女房お兼
片岡孝太郎
◯家主平作(へいさく)
坂東彌十郎
◯爺の幽霊 友八(ともはち)
山崎権一
◯婆の幽霊 お時
坂東玉之助
◯娘の幽霊 お千代
中村七之助
◯芸者の幽霊 染次(そめじ)
中村福助
◯屑屋の幽霊 又蔵(またぞう)
中村勘三郎
…でした
十世三津五郎さんは2012(平成24)年5月の大阪松竹座でも、ゆうれい貸屋の弥六を勤められています。
芸者の幽霊 染次は
当時の5代目中村時蔵さん
屑屋の幽霊又蔵を
片岡市蔵さん
が勤められました。
今回の2024(令和6年)八月納涼歌舞伎でゆうれい貸屋が歌舞伎座で17年の時を経て再演となりました。
今回は中村福助さんが監修を勤められています。
桶職弥六を十世三津五郎さんのご子息 坂東巳之助さん
芸者の幽霊 染次を中村福助さんのご子息 中村児太郎さんが勤められます。
そして屑屋の幽霊又蔵を十八世勘三郎さんのご長男 中村勘九郎さん。
さらに家主平作を17年前と同じく坂東彌十郎さんが勤められています。
ゆうれい貸屋 かぶきDOU観劇レポ
腕の良い桶職人ながら、酒浸りで働かない弥六(坂東巳之助)を懸命に支える妻 お兼(坂東新悟)です。
弥六は父親に続いて母親を亡くして以来、酒浸りで仕事に身が入りません。
夫婦が住む長屋の家主 平作(坂東彌十郎)もお兼が健気に夫を支える姿を見守っています。
注文した桶を受け取りに来る伊勢屋の番頭役を勤めるのが、この度名題に昇進されました坂東彌風 改め坂東彌三郎(やさぶろう)さんです。
ストーリーに絡めてこのような名題昇進のおめでたいご報告があるのも歌舞伎の醍醐味です!
弥六はせっかく来た仕事の納期も守れない始末で、夫の不手際をお兼が謝罪します。
酒に酔った弥六が花道から帰ってきました。「私がいるからダメなのでは…」とお兼は実家に戻ることを決意し家主もそれに賛同します。弥六は長屋に戻るとすぐに寝てしまいました。
芸者の幽霊 染次
弥六が目を覚ますと辺りは真っ暗です。家には誰もおらず、幽霊が現れます。芸者の染次(中村児太郎)です。弥六の街中での振る舞いに一目惚れしたのでした。
染次は色気があって美しく、サバサバとしたキップの良さが魅力ですが、ものすごく嫉妬深い性分です。
弥六はその美しさに見惚れて、お兼のことをうやむやにして染次を招き入れます。
ゆうれいあるある
弥六とのやりとりの中で染次は「ゆうれいあるある」を度々面白おかしく披露します。観客をグッと惹きつける児太郎さんの話術が素晴らしいです!
「ゆうれいあるある」の一つがこの物語の鍵にもなります。
弥六という男は尽くす系の女性にモテる何か放っておけない魅力があるんですね…
頼りない感じの弥六を巳之助さんが好演されています。
同じ長屋のお隣に住む魚屋の女房のお勘(市川青虎)も弥六の世話を焼きます。魚屋の亭主(中村福之助)がその様子に嫉妬してすぐお勘を呼び戻すほどです。
染次も弥六のために甲斐甲斐しく世話をしますが、幽霊が働かない男の生活を支えるにも限界があります。
そこで染次は「幽霊の復讐代行ビジネス」を弥六に提案します。
自分が働かなくともお金が入るという夢のようなシステムに弥六は鼻息を荒くして賛同します。
個性豊かな幽霊たち
染次がスカウトしてきた幽霊が個性的な面々です。
◯爺の幽霊友八
現役最高齢94歳!の市川寿猿
◯婆の幽霊お時
市川喜太郎(きたろう)
澤瀉屋コンビです!ヒュル〜ッとお二人並んで登場される様が本当に愉快です♪
◯若い娘の幽霊お千代
中村鶴松
◯気弱そうな幽霊 屑屋の又蔵
中村勘九郎
弥六が窓口となって「幽霊の復讐代行」を始めます。なかなか強気な値段設定でしたが依頼が多く舞い込みます。
ビジネスは好調かと思われましたが屑屋の幽霊又蔵から退職の申し出が。「生きているうちにやるべきことがある」ことを又蔵から念押しされる弥六です。
爺の幽霊と婆の幽霊からも辞職の申し出があります。
このあたりの幽霊達と弥六のやりとりが非常に面白かったです。
長屋に戻ると、早上がりしたはずの幽霊お千代の姿がありました。
嫉妬深い染次は「あの子にだけは気をつけておくれ!」と事あるごとに弥六に念を押すのが滑稽で笑いが客席から起こりますが、さすが染次 女の勘です! お千代は弥六を誘惑するのでした…
激怒した染次は怨霊となって弥六に襲いかかりてんやわんやの大騒ぎとなります。
染次が成仏する「ゆうれいあるある」を思い出した弥六は、長屋の人々に「あるお願い」をします。このタイミングで長屋にお兼も帰ってきます。
そして無事に弥六達は朝を迎えます。しんみりと終わるかと思いきや、仏壇の鐘の音が絶妙なタイミングで鳴り響き、客席からの笑いの中で人情噺ゆうれい貸屋は幕となりました。
坂東巳之助さんは34歳、
中村児太郎さん30歳です。
歌舞伎役者として脂が乗ってきましたね✨
幽霊役の皆様も神出鬼没でのご登場で、幽霊らしい力の抜け加減が本当に面白いです♪
監修の中村福助さんが公式インスタグラムで「怖くて?楽しい!お芝居です」とコメントされていましたが、まさにその通りの演目と思いました☆☆☆
ここまで第一部ゆうれい貸屋のかぶきDOU観劇レポートをお届けしました。
鵜の殿様かぶきDOU観劇レポ
第一部もう一つの演目は鵜の殿様です。今年2月に博多座で歌舞伎の舞踊劇として初上演され、かぶきDOUでも観劇レポをお届けいたしました。
およそ半年という異例のスピードで歌舞伎座での上演となりました!私の大先輩であります元NHKアナウンサー山川静夫さん原案、名古屋西川流の三世西川右近さん作・振付です。
初演の2月博多座との違いも含めかぶきDOU解説していきます。
幕開きは殿様が暑さを忘れるために腰元達と賑やかに踊っている様子から始まります。緞帳が上がりますと演奏の賑やかさがバージョンアップしておりました。
背景は2月博多座ではこんもりとした立派な松でしたが、今回の歌舞伎座では涼しげな松と金のグラデーションが季節柄とても爽やかなデザインとなっていました。
今回の上演が猛暑の8月ですので「暑い暑い」とありとあらゆるところを腰元達に仰いで風を送ってもらう市川染五郎さん勤める殿様に心から共感しましたね!
殿様に支える腰元 撫子を今回は市川笑也さんが勤められています。笑也さんは昨年12月新橋演舞場流白浪燦星(ルパンサンセイ)で峰不二子を勤められ大変話題となりました。
腰元 浮草は澤村宗之助さん、
腰元 菖蒲は市川高麗蔵さんです。おニ方とも2月博多座から引き続き勤められています。
せめて気分でも涼しくなろうと、水遊びの話題となり太郎冠者の故郷の長良川で鵜飼というものがあるということで殿様は早速呼び出します。
松本幸四郎さん勤める太郎冠者が横暴な上司にストレスを溜める部下の気持ちをうまく表現され
花道の出から客席の笑いを誘っておりました。
太郎冠者からそそのかされて鵜の役をすることになった殿様。
鵜匠に扮した太郎冠者がパントマイムで殿様の首に縄をかけます。
容赦なく鵜の首を引っ張る太郎冠者です。その度に殿様の体が吹っ飛んでしまうのですが、染五郎さんの滞空時間がさらに長くなっている気がしました!
騙されていることに気づいた殿様は隙をついて太郎冠者に縄をかけて、今度は殿様が鵜匠となって太郎冠者にやり返します。
2月博多座ではアクション満載の乱歩歌舞伎 江戸闇怪鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)の後が鵜の殿様でしたので、お二人のスタミナは本当にすごいと感動しました。
今回の八月納涼歌舞伎では第ニ部 第三部にもご出演の幸四郎さん染五郎さんがひっぱりひっぱられてバッタバッタと歌舞伎座の床に倒れ込みます!
ドタバタのうちに幕となりますが今回も幸四郎さんのムーンウォークをバッチリお楽しみいただけます♪
幸四郎さん染五郎さん親子だからこそのイキのあった振り切った笑える舞踊劇となっております☆
第一部はどちらも笑える演目となっているのでおすすめです。夏休みの思い出に歌舞伎デビューはいかがでしょうか?
歌舞伎座八月納涼歌舞伎は8/25が千穐楽です!
縁の一曲〜2代目松本白鸚さん〜
続いて歌舞伎役者さんにゆかりの曲をお届けする縁の一曲のコーナーです。今回は2代目松本白鸚さん 高麗屋です。
8/19に松本白鸚さんは82歳のお誕生日を迎えられました!おめでとうございます✨
先月は半年ぶりに歌舞伎座の舞台夜の部裏表太閤記にご出演され、松本幸四郎さん市川染五郎さんと 高麗屋三代で初役を勤められました。
かぶきDOUリスナーの方はお分かりと思いますが実は白鸚さんは歌手としてレコードを出されているのをご存知でしょうか?
1970年12月21日にアルバム「市川染五郎」をリリースされています。
今回はそのアルバムより S.O.S.(サウンド・オブ・ソメゴロー) をお届けしました♪
公演かわら版
今年10月に上演されます博多座 スーパー歌舞伎ヤマトタケルのチケット販売がスタートしております!
配役が日にちで異なりますので博多座HPでご確認の上お買い求めください。
この公演は文化庁劇場・音楽堂等の子供鑑賞体験支援事業で18歳以下のお子様を対象に無料ご招待します!詳しくは博多座HPをご確認ください
そして8/19発表がありましたが
新作歌舞伎 刀剣乱舞の第二弾の上演が決定しました!
今回の公演では2025年7月東京・新橋演舞場に加え来年8月に博多座と南座でも上演されます!
演出は尾上菊之丞さんと尾上松也さん、脚本は松岡亮さんです。
初演同様のスタッフ陣で新たなオリジナルストーリーとなるそうです。また新しい情報が入りましたらかぶきDOUでもご紹介いたします!
めでてえなぁ8/14-8/20
お誕生日を迎えられます歌舞伎役者さんをご紹介するめでてえなあのコーナーです。8/14から8/20がお誕生日の皆さまです。お名前と所属 屋号をご紹介します。
五十音順となっておりますのでご了承ください。
8/15市川猿弥さん
澤瀉屋
8/19 中村京由さん
中村雀右衛門一門
8/19松本白鸚さん
高麗屋
今回は3名の皆様でした。お誕生日おめでとうございます!
8/20アーカイブはこちらからどうぞ
※スタジオには麻布十番 麻の葉さんの手ぬぐい 隈取五種(博多座限定)を飾らせていただいております♪次回は8/27(火)午前10時〜FM77.7Mhzで25分生放送です!権利の関係でYou Tubeには音楽BGMが入っておりませんのでご了承ください
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