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最期を支える人々  −母余命2ヶ月の日々−

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#ケアマネ

2015.8.7 「望みが絶たれた。」

 リクライニング型の車いすごと乗り込める患者送迎車で病院に向かった。暑い日で、小さな車の冷房がほとんど効かず、汗が流れおちた。

 血液検査などを済ませた後、看護師から問診を受けた。事前に病院のソーシャルワーカーが処置室のベッドを確保してくださったので、母は横になって待ち時間を過ごすことができた。

 外科医はベッドサイドに来るなり、母に「抗がん剤は始められません。」とはっきり告げた。通院がこれだ

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2015.8.12 「安心のために」

 母から「口から血がでてきた」と携帯メッセージが届いた。驚いた私は緊急通報のボタンを押すようにと電話をして実家に向かった。

 私の到着前に、ヘルパーが駆けつけ、ケアマネジャー経由で訪問看護師にも連絡が届いた。

 血を見ると不安が増幅する。母はうろたえていた。主治医に確認すると、大量の吐血は考えにくいが、じわじわとした出血は続くという。「24時間看護師が傍にいる」という環境が必要なタイミングが迫

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2015.8.14 「もう一度お願いします」

 2ヶ月前に初めての要介護認定を受けて要支援2だった母は、入院中に区分変更申請をしていた。その結果が届き、要介護2だった。目の前の母の状態とはかけ離れた認定結果だった。

 がん末期の患者に対する要介護認定調査には倫理的にも、評価の妥当性からも疑問を感じていた。回復しないことを漸く受け入れた人に「できますか」「していますか」と質問を投げ続ける。そこに意味があるのだろうか。今日できることが、明日はで

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2015.8.18 「体に力が入らない」

ベッドから食卓まで歩行器で移動していたが、3日前の朝、「体に力が入らない」と訴えた。機転の効くヘルパーがベッドから椅子に母を移し、椅子ごと食卓まで運んでくださった。

 2日前には、ポータブルトイレの蓋を開けられなくなり、開けっ放しにしてほしいと言った。

 薬を飲み込むのが負担になって、服用せずに残すことが増えてきた。寝返りがおっくうになり、同じ姿勢で寝ている時間が増えた。

 こうして、毎日

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