2015.8.7 「望みが絶たれた。」

 リクライニング型の車いすごと乗り込める患者送迎車で病院に向かった。暑い日で、小さな車の冷房がほとんど効かず、汗が流れおちた。

 血液検査などを済ませた後、看護師から問診を受けた。事前に病院のソーシャルワーカーが処置室のベッドを確保してくださったので、母は横になって待ち時間を過ごすことができた。

 外科医はベッドサイドに来るなり、母に「抗がん剤は始められません。」とはっきり告げた。通院がこれだけしんどく感じること、食事量から見て、抗がん剤には耐えられないという。

 それを聞いたとき、私は、(ああ、外科医はスキルス胃がん告知の日から無理だと判断していたのだろうな。その上で、私たちに自宅で暮らす時間と、抗がん剤を諦めるまでのステップを用意してくださったのかな。)と思った。辛いことだが、受け入れるしかなかった。

 だが、母本人にしてみれば、そう簡単に受けとめられることではない。自宅に帰ると「望みが絶たれた」と吐き出すようにつぶやいた。