2015.8.12 「安心のために」

 母から「口から血がでてきた」と携帯メッセージが届いた。驚いた私は緊急通報のボタンを押すようにと電話をして実家に向かった。

 私の到着前に、ヘルパーが駆けつけ、ケアマネジャー経由で訪問看護師にも連絡が届いた。

 血を見ると不安が増幅する。母はうろたえていた。主治医に確認すると、大量の吐血は考えにくいが、じわじわとした出血は続くという。「24時間看護師が傍にいる」という環境が必要なタイミングが迫ってきたと感じていた。

 私は母に緩和ケア病棟への入院を申し込もうと提案した。嫌そうな顔をした母に、駆けつけた看護師が声をかける。「安心のために申込みだけしておくという手もありますよ。」

 母や私を取り巻く環境を理解していた主治医と看護師は、退院直後から緩和ケア病棟への申込みを勧めてくださっていた。しかし申込みには本人の承諾が必要なので、先送りしていたのだった。その日、母のしぶしぶながらの承諾を得て、二つの病院への申込み手続きを始めた。

その日まで29日。