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おもてなし幻想 ~「顧客体験の足し算」よりも「顧客努力の引き算」~

こんにちは。たけぶち(@k_takebuchii)です。

最近読んだ「おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係」について共有します!!


本書のテーマ

本書のテーマは顧客努力を減らしてディスロイヤルティを緩和することです。

本書における「ロイヤルティ」「顧客努力」の定義は以下の通り。

ロイヤルティ(p.33)
①再購入(顧客があなたの会社から引き続き購入すること)
②顧客内シェア(時間の経過とともに顧客があなたから購入する割合が増えること)
③アドボカシー(顧客が家族や友人、同僚、見知らぬ人までにあなたの会社をほめること)
顧客努力(p.81)
問題を解決するために、顧客に課される作業量。情報の繰り返しや再問い合わせの必要性、チャネル転換、転送、画一的な対応など。

ではなぜ、顧客努力を減らしてディスロイヤルティを緩和することが重要なのか?

97000人あまりの顧客の回答を分析してわかったのは、期待以上のサービスを受けた顧客と期待が満たされただけの顧客のロイヤルティには事実上差がまったくないということだ。「右肩上がり」でロイヤルティが飛躍的に上昇するのではなく、期待が満たされれば、その後のロイヤルティの伸びはむしろ横ばいになる。
⇔企業は顧客の期待を上回ることから得られるロイヤルティのメリットをたいそう過大評価する傾向がある。(p.44)
私たちは製品を理由に企業を選びながら、サービスの失敗のせいでその企業から離反することがたびたびあるのだ。
カスタマーサービスの役割は、顧客の期待を上回ることでロイヤルティを向上させることではなく、顧客努力を減らして顧客のディスロイヤルティを緩和することだ(p.59)

本書は、以上の点を前提として、顧客努力を減らしてディスロイヤルティを緩和するための様々な手法を紹介しています!!


NPSとCESの関連性

以前の記事で、株式会社オズビジョンはネット・プロモーター・スコア(NPS)を重視していると書きました。

本書の第6章では、ネット・プロモーター・スコア(NPS)顧客努力指標(CES)の関連性について言及しているので、まとめておきたいと思います。

CESとは、問題を解決してもらうために顧客がとらなければならなかった行動を、顧客がどの程度大変に感じたかを測定する指標です。

CES V1.0
「問題を解決してもらうのに、どのような努力をしなければなりませんでしたか?」という質問を投げかけ、「ほとんど努力をしてない(1)~大変な努力を要した(5)」で回答してもらう。
知見①: CESはいわゆる「逆方向」の指標であるため、誤った答えを引き出す傾向がある。低いスコアが「悪い」、高いスコアが「良い」と捉えれてしまう。
知見② :サービスエクスペリエンスの特定の要素がどれほど好きか嫌いかについて質問された後で、突然顧客自身の努力について質問されると、顧客がとまどってしまう。

CES V2.0
「会社のおかげで問題の対処が容易になったことに、どの程度同意しますか?」という質問を投げかけ、「全く同意しない(1)~強く同意する(5)」で回答してもらう。
知見①:この質問は顧客ロイヤルティと極めて相関性が高く、顧客の再購入の意思、口コミ、顧客内シェアの3分の1が説明できた。
知見②:CESは、顧客関係の総体的な状況の測定(=NPS)を目的としているのではなく、ディスロイヤルティの最も重大な要因、つまりサービスインタラクションでの顧客努力の1回の取引ごとの評価を目的としている。(p.295~p.297)

CESは、特定のカスタマーサービスイベントという「ミクロの経験」を評価する指標であるのに対し、NPSは企業に対する総体的なマインド(ブランド、製品、チャネル、その他のあらゆる接点とカスタマーインタラクション全体)という「マクロの経験」を評価する指標です。


個人的考察

これからの差別化のポイントは「顧客体験の足し算」よりも「顧客努力の引き算」にあるんだな、というのが個人的な見解です。

もう既に世の中は情報で溢れすぎてるし、これ以上「顧客体験の足し算」を押し付けられても、時間が有限である以上、顧客は処理しきれません。

であるとすれば、顧客としては、時間を無駄遣いしなくて済む「顧客努力の引き算」がなされたサービスを求めるでしょう。

その一方で、企業からしてみれば「顧客体験の足し算」は「目に見える進歩」「新しい挑戦」と捉えやすいし、それを促進することがロイヤルティの向上に繋がると信じたい部分があるのかもしれません。

企業と顧客の間のこうしたギャップは、差別化のチャンスになりうるなーと思いました。


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