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社労士の仕事って結局、企業にかかるコストの削減なんじゃない?と思った話

おはようございます。
社労士の生地です(  ´-`)zzZ

皆さん社労士の仕事についてどんなイメージがあるでしょうか??

例えば、以下のようなものが代表的かと思います!

1.労働保険や社会保険の手続き業務
2.給与計算業務
3.就業規則の作成業務
4.助成金申請業務
5.労務相談業務

その中でも今回は「5.労務相談業務」について最近思ったことを話したいと思います。

最近ニュースでは労働者と会社とのトラブル(労使紛争)をよく目にします。

ですので、必然的にぼくの仕事でも労使紛争トラブルに関する相談が増えてきました。
これは会社の規模に関わらず増えてきております・・・。

最近よくある労使紛争の相談内容としては、
1.未払い賃金に関するトラブル
2.ハラスメントに関するトラブル
3.勤務不良社員に関するトラブル
4.解雇に関するトラブル

そして、これらの労使紛争が起きた場合、大概の会社は不利な立場に立たされます…。

理由としては、労働基準法や労働契約法をはじめとする労働関連の法律自体が労働者有利なものになっていることや、日々本業で忙しい会社にとって現場の労務管理まで目が届かず、対応が不十分になったり、コミュニケーションが足りなかったり様々と要因があります。

社労士として就業規則の整備や企業の労務管理をしっかりと行い、労使紛争が起きないように未然に防止することが肝要だ!
という言葉をよく耳にしますが、

はっきり言ってそれは不可能!

だなと思います。

就業規則をどんな厳格に規定しても、かならず穴があるものです。
また、就業規則で定めに違反した場合の処分が全て有効になるかといえば、そうではありません。
最後はその処分が社会通念上相当であるか
つまり、世間一般の常識的に正しいかどうかで処分の有効性が判断されます。
つまり、就業規則は【魔法の杖】ではないのです!

ハラスメントの問題についても、正社員についてはハラスメントに関する教育や研修を行っていたとしても、その他の契約社員やアルバイト社員には行き届いておらず、本社の目が届かない各地の現場でハラスメント問題が発生していたなんてことも良くあります・・・。
その際、会社に対しては使用者責任安全配慮義務違反などの不法行為責任が問われる事態に発展しかねません。
また、しっかりと事実調査を行わず被害者とされる者の意見だけを聴いて、加害者とされる者を処分なんかしたりすると「名誉棄損」で逆に会社が訴えられる可能性もあります。

また、解雇の問題でよくある例として「やる気のない社員」、「協調性のない社員」や「勤務不良の社員」をやめさせたいという相談を受けることがあります。
解雇については
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法16条)
とされており、じゃあこの客観的合理的な理由だったり、社会通念上相当とは一体何なんだ?となります。
解雇が有効かどうかの最終的な判断は裁判所で行われますが、
その際に、最も重要なものが解雇に至った理由となる「証拠」なのです。

しかし、会社に解雇する証拠があるのかどうかよくよく尋ねると、「ただ、なんとなく他の社員さんとのそりが合わない」とか「仕事はできるんだけど態度が生意気」とか「周りの人達から嫌われているから辞めさせたい」という理由が多いです・・・。

「生地先生!解雇日の30日前に予告すれば、解雇できるんでしょ?」
と労基法をかじったことのある社長さんはよくこんなことを言いますが、労基法はあくまでも手続き違反を罰する法律です。
たしかに解雇の手続きとして「解雇日の30日前の予告(もしくは解雇予告手当の支払い)」することとあり、これを行えば解雇の手続きとして有効です。
が、『解雇そのもの』が有効かどうかは労働契約法によって判断されます。
※お前はバカだから解雇だ!と解雇日の30日前に告げれば手続きとしては問題ないですが、解雇の理由としては問題大有りです。

おそらく上記に挙げたような理由でも解雇の理由としては証拠不十分で客観的な合理的な理由を欠いているため解雇権濫用とされて解雇は無効となるでしょう。

加えて、先ほども言った通り、労働法は労働者有利となっており、労働者側の相談であれば勝ち目が高い(和解の場合でもいくらかのお金がもらえる)ため、弁護士も仕事としては受けたがります。

逆に会社側は法律上不利であることに加えて、会社の対応や証拠が不十分であることが多い、そもそも会社は被告側に回ることが多いので、たとえ勝ったとしても損害賠償による「マイナスを0にする」もしくは「マイナスを減らす」という結果になります。労働事件では裁判に勝ったとしても会社にプラスの金銭が発生することはないので弁護士報酬も低くなることが予想されます。※「成功報酬の〇%」という請求が立てにくい

このように労働事件は長期にわたり手間もかかる割に、対して儲からないので弁護士も会社側の労働事件を進んでやりたがる人は少ないのです。

弁護士にも生活がありますからコスパの悪い仕事はしたくないはずです。

こうした理由から労働事件や労働法に詳しい会社側の弁護士が少なくなるのも必然かもしれません。※正直、勉強しても儲からないから

しかし、労働者側の弁護士であれば、初めから有利に立ち回れます。なんなら証拠不十分でも言ったもん勝ちで、和解交渉で会社からいくらかのお金を持っていくケースもあります。
東京都だけでも弁護士の人数が20,000人を超えていることや、弁護士に仕事を依頼するハードルが低くなっていること、労働者自身がインターネットなどで労働法に関する知識を身に付け始めたことににより、労使対等の時代は終わり、労働者圧倒的有利の時代となっている感じがします。

労働者側の案件を受けたがる弁護士 VS 会社側の案件を受けたがらない労働法に詳しくない弁護士
戦えば結果はわかるはずです・・・。

このように、いくら就業規則を厳格に定めていても、会社の実態がそれに伴っていなかったり、本業が忙しく労務管理の面まで手が回らなかったりすると、いざ紛争になった際に、損害賠償を支払う羽目になったり、和解であっても何らかの落ち度をあると判断されれば幾ばくかのお金を支払うことになります。

じゃあ、完璧な会社をつくればいいじゃない!
それは理想であって、現実は法律通りではなかなかうまくいかないことのほうがほとんどです。人間関係や信頼関係が把握できるうちは大丈夫でも、会社の規模が大きくなり、会社の方針に合わない人も出てくる確率も高くなります。
会社の規模10人のうちは管理職の人も全社員に目が行き届いていたかもしれないですが、100人、1000人、10000人と増えていったときに、全員社員を把握できている会社が果たしていくつあるでしょうか?
また、全社員についてその日、その現場で何をしていたかを認識できている会社がいくつあるでしょうか?

どんなに完璧な体制を整えたと思っても零れ落ちてしまう問題は必ず起こるものです。

最近ぼくが思ったことは「完璧にこれらの問題ついて未然に防止することは不可能だ」ということでした。

しかし、

それでも就業規則の整備や日々の労務管理は大切

です。

でも会社で起こるトラブルは防ぎきれない・・・。
そうであるのならば、トラブルは起こる前提で初めから「必要経費」と考えるのはどうかと?

労働事件が起きた際に会社は幾ばくかのお金を支払うことをはやむを得ない。どうせお金を払うことになるのであれば、金銭的コストや時間的コストをいかに抑えるかを説得した方がよいのではないか?

もちろん時として、身を削る覚悟を持ってでも立ち向かわないといけないこともあるかと思います。

しかし、長丁場が予想されるのであれば、いつまでもそこに執着するよりも無駄な時間やお金を使わせずに早く本業に集中させてあげた方がよいのではないか?
と舵を切り替えてあげるのも大切なのではないかと思います。

会社は「従業員を雇う」ということは給与だけではなく、万が一、解雇した際もコストも勘案して人件費と考えるべきではないかと。

社労士はそのコストいかに低く抑えるかが仕事でないかと。

労働事件の相談が増えていき、いつしかこのようなことを思うようになってしまった、やさぐれ社労士の生地でした(  ´-`)zzZ

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