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今ならいわゆる濃厚接触。目次に戻ります。20年でお引き渡しした210件のお客様とのお話。⑤

マニュアル車は本当に忙しかったでした。
地図の確認、さらにタバコは吸わないといけない(吸わなくても良いのですが。笑)

ラジオから流れるのはAM放送だけ。ほぼ車内で私は踊っていた状態でした。笑
当時はまだユルイ時代でしたから多少の自損事故は申告する必要も無かったので

結構営業車は凹んだまま、擦った傷のまま乗っていても平気でした。踊りながら運転していますから事故も多かったと思います。

この法務局調査と役所調査は毎月1件だけでは無いのです。多い時は10件やりました。かなり鍛えられました。ただ全員がこんな地道な事を徹底してやっていたか

と言えば後で分かったのですが、そうでは無いのです。なんせ地道で契約するかどうかも分からないお客様の調査ですから、先輩社員、後輩社員もここを結構手

を抜くのです。でもこの調査を手を抜くか、緻密にやるかで後々の力のつき方に大きな差が出る事も後で分かりました。まず手を抜くと水道管のやりかえ工事の

見積もりが後で大きく変わる、下水方法も適当に調べると合併浄化槽と単独浄化槽では値段が全然違うのです。これでクレームまみれになっている多くの先輩社

員も見てきました。その他では敷地が道路より高かったりすると道路斜線の建築基準法に引っかかりやすくなりせっかく作った図面が敷地には建築基準法違反に

なり作り直しになったりします。道路斜線は1:1.25の割合で斜めの斜線を出すやり方なのですが、ここでも改めて数学の三平方の定理がこんな時に使われるのか!

サインコサインタンジェントはこの為にあったのか!!と改めて学校の勉強は大切なんだと再認識しました。次に敷地の高低差があると

車庫を作る時に「スキトリ」という工事をしないといけないのです。最初にこの言葉を聞いた時は誰と誰が好き同士なのかと思いました。笑

これは車庫を作る為に敷地から土を削り取る事を言います。こんなの知る訳がありませんよね。でもK様宅ではこのスキトリが必要でこれだけで30万円ぐらい予

算が上がってしまうのです。これも弱い営業は契約する事を優先してしまうので、契約時は隠して契約後に説明して追加工事をもらうやり方をする先輩営業も

多かったでした。

今から考えると思うことがあります。契約を優先して、本来はお客様に伝えてしっかりお金を頂かないといけない場面が多々あります。営業として試される場面

がそれは住宅営業に関わらずどんな営業にも訪れます。よく私は部下にも言っていました。

「数に負けるな!数字に負けるな!」と数字に負ける営業は様々な場面で嘘をつき始めます。それはお客様にも会社にも、上司にも嘘をつくのです。

私も営業をしていて数字に負けそうになる場面はよくありました。例えば手付け金の入金手続きが間に合わず自分のお金を一旦入金手続きしてしまいそうになっ

たり。。。これは手付け金の誘引行為と言われて、宅建業法的にはコンプライアンス違反です。これに違いことをやってしまい会社を退職去っていった人間も見

てきました。私の最初の店長はこの数字に負ける事の愚かさを最初から教えてくれました。

役所調査、法務局調査の重要性を暑苦しいくらいに教えてくれました。これも後で考えればこの仕事の本質を教えてくれたのだと感謝しています。

今も思いますが新入社員の時に出会う直属の上司、先輩は本当に大切だと思います。その新入社員の人生を決めると言っても過言ではないです。

この最初の店長からそうでしたがある1人の上司を除いては良い先輩、良い上司についてもらった事も私がこの会社で同じ仕事をやり続けた理由の1つだとこの文

章を作りながら振り返れました。そんなこんなで最初の1棟目の契約を終える事が出来たのです。今でも覚えているのはそのK様が

「私達が契約したら最初のお客になるのですか? でしたら契約します。とても熱心に仕事をしてくれたので」

と言って頂いたのです。30年前の記憶ですがこの言葉は今も鮮明に覚えています。そんなに住宅営業はやりたくなかった。

むしろ住宅メーカーは1社も受けていなかった私の1棟目のお客様になって頂ける。

なんとも不思議な感覚でした。この最初のお客様から私の長い長い210件目のお客様までの長い物語が始まったのです。

次回へつづく

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