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ビリー
2022年4月12日 12:01
絶望まで死んでしまった街にいる、煤まみれで灰黒まだらに染まってしまって、影に見紛う猫が街路を横切った、年端も行かぬが外れの農家に残った羊を盗めないかと耳打ちしてる、引き千切れたネックレスが紛いの真珠をばら撒いていた、アスファルトのひびに落ちた一粒が、数日ぶりの陽光を跳ね光線を打つ、煙と霧が混ざって白から灰へグラデーションする空と地が、何処かで焦げたにおいがしたら、薬漬けが火を放ったん
2022年4月10日 11:25
……またふたりきりだね。その呼びかけに彼は応えない。応えることができない。しかしそのレンズには寄り添う「彼」が映り込んでいる。砂にまみれて傷つき、風雨に晒され錆が浮いてはいるが、その奥は微かに点滅している。まだ消えてはいない。 風が、鳴る。 彼と彼の間を抜けてゆく、ふたりの目には捉えきれないほどの小さな砂塵を混じらせた風が鳴る。 錆びた鉄と鉄が擦れる、無人の公園の忘れ去られたブランコ
2022年4月15日 12:27
ポルノスターが真昼に夢を見ているころ、彼女に恋する一人の男は彼女の住んでるアパートメントに火をつけようとしていた。 しかし、ポルノスターが眠っているのはそのアパートメントではなく、若くハンサムだが才能のない映画スターのキャンピング・バンの細く狭いベッドの上だった。 シーツは甘い香水が流されたらしく淡い紫色が海図のなかの大陸のように広がる、しかし、残念ながら人は生き物だった、腐敗と絶命へひた