旅にでたいオートバイ

年に一度の旅乗りを楽しみにしているララライダーの思い出話

旅にでたいオートバイ

年に一度の旅乗りを楽しみにしているララライダーの思い出話

最近の記事

雨宿りのアンパン

遠くで雷の音がした。 重たい雲の下、シールドに雨粒を感じながら高山市から41号線を下がり、下呂温泉の看板が見えた頃にとうとう空が号泣し始めた。 せっかくの下呂温泉だが雨宿りできそうなところもわからないし、夜になる前に関西のアパートに着きたい。 走りながらカッパを着られそうなスペースを探していると、前に大きな橋が見えて、なんとかパンツまで濡らす前に橋の下に滑り込んだ。 橋の下には先客がいた。カワサキのゼファー。40代後半風の男性だった。 ヘルメットを脱ぐと、どちらからですか?

    • 給油キャップとコーヒーと民族大移動

      お盆の休みに出かけたのだから、おそらくその日の朝は萎えるほどは暑くなかったんだと思う。 海が見たいという、なんともおセンチメンタルな理由で何故か鹿島を目指して走った。 鹿島といえば茨城と千葉の境で関東の東の端だ。ある意味秘境。当然土地勘もないので地図でリサーチして道を調べ、あとはツーリングマップルを見ながら走った。。なんだか行きづらいところだなと思いながら走ったのを覚えている。 目的の鹿島神宮に着いてお参りし、門前でそばを食ってから浜に行って海を眺めた。なんか野良犬が多かった

      • そのベンチ

        どのベンチなのかというと、“あのベンチ“なのだそうだ。 近くに住んでいた頃はそんなに有名じゃなかったのに、SNSでバズって“映えスポット“と言われるようになってしまったそこは、琵琶湖に向かってただ木製のベンチがあるだけのところだ。 でもかえってそういうところがウケているんじゃないかな。 知らんけど。 そこに到着するとベンチ手前の未舗装のスペースに車とオートバイが数台停まっていた。一応ベンチに写り込まないようにみんな少し離れて停めている感じ。さすが日本人の気遣。 その近くに

        • 天邪鬼の巡礼

          旅なら数日かけてじっくり楽しみたいけれど、日帰りだったらそんなに遠くまで行きたくない。 そんな天邪鬼を満たす場所として目をつけたのが秩父札所34霊場だ。 これならば一度に3~4箇所ずつ回って数回に分けて楽しむことができそうだ。 本来ならしっかりと歩いて回り、それぞれでお経を唱えて(奉納して)行くものだそうで、事実、何度か現役のお坊さんと思しき人がお経を唱えているのに出会ったことがあった。そんなときはそっと後ろでお経が終わるまで(便乗して)合掌していた。 卸もその年は12年

        雨宿りのアンパン

          ありえな~い

          関西に単身赴任していたある年の春、福井の三方五湖のあたりを走っていた。 たまたま道の駅に寄っていたところに同じ町内の奥さんからLINEが入ってきた。 “😠え~❗️❓️ 体育祭に来ないなんてありえな~い!😠” 彼女は家族ぐるみで仲良くしてもらっているママ友で、とても朗らかで明るい素敵な女性だ。 今日は子どもたちの体育祭。しかしツーリングイベントと重なってしまい、参加費も払っていたためこちらに参加していた。 “今、福井の海岸沿いを気持ちよく走っております🏍️”と送ると、 “

          青春ラプソデイ。

          明石海峡大橋を越えて淡路島に入り、ひと休みした後はそのまま高速道路で淡路島を駆け抜けて徳島を一気に目指した。 徳島は学生の頃に初めて一人旅をした場所だ。 高校生だったあの夏休み、バイト代をはたいてフェリーで旅をした。 ネットもない時代、家にあった全国ロードマップの写真を頼りに鳴門へ行き、観潮船にのって渦潮を見に行った。 まだ鳴門大橋は工事中だった。 淡路島側からいよいよ鳴門大橋に入った。海を見下ろすと今日も潮が渦巻いていて、観潮船がみえる。 運転しながら肩のあたりに鳥肌が

          たかが橋というなかれ

          オートバイに乗っていてきれいな景色に出会ったことはいくらでもあったけれど、“圧倒された“ことは今までなかったと思う。 明石海峡大橋はそれぐらいインパクトがあった。 レインボーブリッジでさえオートバイでは走ったことがないけれど、イメージの中では “まあ あんな感じ?”って思っていた。 ところが。 実際に走ってみると “圧倒”された。というかやられた。 橋梁の高さ、ワイヤーの太さ、橋から見下ろす景色。上を見ても前を見ても、下の海や町並みを見ても、バックミラーで後ろを見ても、とに

          たかが橋というなかれ

          ねのW

          これもSSTRの途中の話(SSTRが何かは検索すれば出てくる) 松本から大町を抜けて白馬まできて道の駅に入った。 さて一服しようと喫煙場所に行くと、ICOSの試供イベントをやっていた。 といっても、45過ぎぐらいのニコニコした優しそうな男性が一人ポツンと立っていて喫煙者に声を書ける程度のもので、もちろん試し吸いもさせてくれる。 平日の午前、道の駅は人もそれほど多くなく、彼も暇そうにしていた。そこに入っていったものだから早速声をかけられた。 「こんちは。あーgloですか。今日

          “また会いましょう”

          たぶん現行車ではないがそれほど古くないオフ車が駐車場の端に停まっていた。 最近のSUVにありそうなカーキっぽい色とカモフラ柄が目を引いたのだが、もっと気になったのは横に立つライダーだった。 そのライダーは年配の男性だった。 「いい色ですね。」と声をかけると 「一番軽いやつって言ったらこれだって言うんで買ったんだよ。いま中古高いね。」 失礼ながら想像に反してしっかりとした声だった。年齢を伺うと86だと言う。 多分、周りからはそろそろ止めろと言われていてもおかしくはない齢。 自

          “また会いましょう”

          ゲストハウス 2:43AM 

          人のイビキで夜中に目を覚ますなんていつ以来だろうか。 イビキの主は衝立の向こう側の年配の男性。昼間に見かけたときは頭にタオルを巻いていた人だ。 距離で言えば1mと離れていないところに音源があるので仕方がない。ここはそういう宿だ。 今までに泊まったゲストハウスはどこもベッドだったのだが、ここは違う。 六畳の和室が衝立で4つに区切られていて、それぞれに布団を敷いて寝る。2段ベッドのようにカーテンを閉めれば個室感覚と言う感じではない。貴重品は抱いて寝るか階下のコインロッカーにいれ

          ゲストハウス 2:43AM 

          好きな街で生きること

          長野でのサッカー観戦を終えて、さあ今夜の宿に向かおうとスマホのメールを見返して心臓が止まった。 楽天の予約日は明日の日付になっている。 そこからは祈るような気持ちで宿に電話をかけた。電話口でこちらの事情を話すと、今夜も空きがあると言う。 胸をなでおろし、何度もお礼を言って宿に向かった。 「今年で9年目なんだけど、実質稼働6年かな。」 宿の女主人は笑いながら言った。 今夜の宿もゲストハウス。この女主人はこの場所が好きでわざわざ県内の別の場所から移り住んできた方。 築120年の

          好きな街で生きること

          彼女のオートバイ

          彼女がオートバイの免許を取ったのは19歳だった。 高校を出て自動車部品会社に就職した彼女は営業部に事務員として配属された。 当然というべきか会社には車いじりが好きな人が多くて、草レースに出ている人たちに誘われてサーキットに行ったりもしたが、彼女に刺さったのはなぜかオートバイだった。 やがて彼女はニ輪の教習所に通い始めた。当時女性がオートバイ免許といえばまず小型自動ニ輪免許からステップアップすることをを勧められることが多く、彼女も小型自動二輪の免許を取得した。 「小型で練習し

          安宿とイケオジと瓶ビール

          珍しく近所の仲間とSSTRに参加したときのこと。 例によって17時に金沢市内の某コンビニ集合という400km先の現地集合方式のツーリングにしながらも、実は早めに着いて金沢の回転寿司屋に行くという裏テーマを達成し(七尾のアジ最高)、余裕の表情で合流したあと無事に千里浜にゴールし、その夜の宿がある和倉温泉へ向かった。 あの有名は和倉温泉である。「和倉温泉に安宿など無い」と言い切る貴兄には申し訳ないが、ちゃんとベッドに寝られて2800円の宿がある。貧乏ライーダーにとっては最高だ。

          安宿とイケオジと瓶ビール

          陽が落ちるまで80km

          その日の晩は輪島に宿を取っていた。 夜明け前から600kmぐらい走って、さあもう一踏ん張りと海岸線に別れを告げ、のと里山道路を目指して走リ始めたのだが、ふと太陽がまだ意外に高いところにあるのに気がついた。 いまから海岸線に出れば海に沈む夕日を見ながら走れるじゃないか。山の中のバイパス走るのと比べたら断然エモい。 そう思ったらすぐに路肩に停まってナビをリルートした。なんだあと80km。2時間だから20時すぎに輪島ならば文句はない。 海岸線に出るまで少し時間がかかった(少し迷った

          狐のタコ焼き

          どこのまちにもありそうな夕方のバイパス渋滞をやっと抜け、横道に入ったら急に日が落ちた気がして、コンビニの灯りが少し眩しく思えた。ナビのマップがここだと言っている場所は細い路地で、そこは年季の入った寿司屋だった。 薄いガラスの引き戸の奥は真っ暗で、こりゃあGoogle先生にやられたかと思っていると、後ろから「今夜ご予約の方ですか?」と声がした。 オートバイに跨ったまま慌てて振り返ると小柄な女性がエプロン姿で立っていた。狐かと思った。 よくよく見ると道の反対側に町家風の民家があ

          彼のオートバイ

          人と走るよりオートバイは一人がいい いつもどこへでも気ままに走って、休んで、コンビニで缶コーヒーを片手にタバコ吸いたい “ああ、今日タバコ多いな”って反省して吸うの我慢しながら走りたい 知らない場所でよそ者の顔して地元の人の言葉に“あ、そうなんですか“って言いたい “飯どうすっかな“ってその土地のどローカルな店に入ってチャーハン食いたい この道いいじゃんって感動して誰にも見せない自撮り写真撮りたい ぷらっと入ったお店の人と話し込んじゃってそこで仕方なく土産買って帰りたい ここ