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Netflix版「今際の国のアリス」の実写化が原作を超えてる件

『今際の国のアリス』は週刊少年サンデーで連載されていたマンガです。2020年の12月にNetflixで実写ドラマが解禁になったんです。今をときめく山崎賢人くんと土屋太鳳ちゃんが主役で。

「実写化決定(バァーン!)」となったとき「はい爆死フラグいっちょあがり!」と正直思ってて。これたぶん「神様の言うとおり」みたいになるやろな、と思ってました。いやしかし蓋を開けてみると超おもしろくて、世論も大絶賛の嵐ですよ。今回は(ちょっといつもの記事と趣旨が違うけど)Netflix版・今際の国のアリスを見ての感想を書きます。

「少年マンガ誌のサバイバルホラー」という謎のブーム

「急にわけわかんない密室に連れてこられて殺し合いをさせられる系」とか「急に日常に化け物がやってきて逃げ惑う系」のいわゆる「サバイバルホラー」って少年マンガ誌のブームだと思うんです。「魔法少女オブジエンド」とか出てきたとき「ついにここまできたか……」と。漫画界のラグナロクだろこれ、と。

で「今際の国のアリス」もタイトルだけは聞いてて実写化が決定したときは先述したように「ダメそうやな……」と思ってたら、友だちから電話かかってきて「おい、今際のマンガこれ意外とおもろいぞこれ!」と。で、翌日に満喫行って読んだらおもしろくて一気読みしちゃったという……。意外と古くて連載開始が2010年なんですよね。

サバイバルホラーって、人がバァーっと殺されるシーンが肝じゃないですよね。そのシーンってあくまでフックで、どっちかというとコミュニティができて宗教が生まれて「人間怖い!」って感じとか「親しい人と自分とどっちの命を取るか」的な行動心理学的なの話をいかに濃く書くかが肝要だと思うんです。喧嘩するシーンとか暗いので嫌なんですけど。でも、それがシーンのグロテスクさに拍車をかけるわけです。

今際の国のアリスはサバイバルゲーム(本編中ではげぇむ)の設定がうまくて、あんま違和感がないんですよね。絵が過度に派手でもない。主人公が綺麗事を喋っても冷めないので、一気読みできたのでは? と分析してみました。

ただ実写化はもう100パー失敗するだろうと思っていた

ただ漫画の実写化って超むずいと思うんです。ここには「どうあがいても原作厨が悪いとこを見つけてしまう」という罠が潜んでいるわけです。絵を超える演技がまずむずい。これがアニメ化していない場合は「イメージと違う。役者を変えてくれ」となる。これがアニメ→実写だったらなおむずい。「声が違う。子安を出せ」という暴論が勃発するわけだ。とにかく頭のなかでイメージが肥大化するので、実写にすると、めちゃめちゃ大変なのである。

しかもここに「制作費の回収」というビジネスが絡んでくる。作品性を追求すると、客が離れるわけだ。しかしエンタメに振ると原作厨の怒りに火を注ぐことになる。

そのうえに「プロダクションによる起用俳優の推薦」やら「スポンサーの顔を立てなきゃ」やらが乗っかってきて、もうがんじがらめになった結果、なんかすこぶる中途半端な作品になりやすいという……なんか「手札5枚ともトラップカード」みたいな難しさがあるのだ。亜人も東京喰種も、無惨に転がったのはもうしょうがないのである。

Netflix版「今際の国のアリス」がおもろい3つの理由

でも今際の国のアリスはかなり好評だ。公開されて1ヶ月経つ現在でも、視聴数TOP10にいる。この実写化がなぜ成功したのかをガチで真剣に分析してみた。

完結作かつドラマ形式だったので無理矢理感がない

今作はそもそも制作前に完結していた、というのが勝因の1つなのは間違いない。完結してない作品の実写化あるある「なんか無理やりオチ付けて変な大団円感を醸し出す」を見事に回避しているのだ。

また同時に一作完結型の映画ではなく、ドラマというところも素晴らしい。連続して放映できるわけできっちり原作のストーリーを追えるのである。

有能監督のすんごいアクション&Netflixの資金力

今作でまずやばいのは渋谷が空っぽになる冒頭のシーンだ。しかしもっとやばいのはコレが栃木県にあるセットだということ。面積はなんと1万5000㎡。なんやそれ。街作るくらいのレベルでドラマ撮っとる。このセットを可能にしたNetflixは、収益の8割をオリジナル作品の制作費に充てるという、ものすごく思い切った戦略を取っている。素晴らしい。

そこにメガホンを取ったのは佐藤信介監督、主演は山崎賢人くんという「キングダムコンビ」である。スピード感のある演出が素晴らしい。先ほどの例でいうと佐藤信介監督は「GANTZ」「アイアムアヒーロー」なども成功させている。もう日本の暗い実写映画は佐藤信介、明るいのは福田雄一に任せちゃえばいい。

土屋太鳳の足が速い

これが最大の成功要因ですよ。土屋太鳳の足がむちゃくちゃ速い。脚力がもう……全盛期のジョイナーくらい速いから。土屋太鳳のふくらはぎのおかげで成功したといってもいい。

そもそも「うさぎ」というキャラは「登山好きでパルクールみたいな動きする小柄な女の子」という再現難しめな設定なんですけど、土屋太鳳は運動神経がエグすぎて完コピしてる。これが橋本環奈だったら正直キツかった。強いて言うならクルム伊達公子。クルムか土屋。それくらいのレベルで足速い。

ギャグ漫画日和以来の原作超えか

いやほんとに原作よりスピード感があっておもしろいのではないか。かつてギャグ漫画日和を観ていて「うわ、漫画よりおもしろい」と思った。このスピード感はアニメならではだと思ったわけだ。

Netflix版・今際の国のアリスは、ギャグ漫画日和以来の原作越え作品なのかもしれない。いや、それほどまでに迫力のある作品だ。まだ観てない人は是非とも見てほしい。

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