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【推薦図書】2023年を象徴する5冊をセレクトするなら?

そろそろ2023年も終わりですが、
どこかの大富豪から、
今年を象徴する本を
5冊セレクトして送ってくれ、
そんな依頼があったとします。

『万延元年のフットボール』
『ハンチバック』
『伝説の編集者 坂本一亀』

3冊まではすぐ浮かびました。
まず一冊めの
『万延元年のフットボール』は
大江健三郎の最高傑作です。
読み出したら、
いわゆる大江ワールドが
一気に読む人を包みます。
伊坂幸太郎なら『同時代ゲーム』だ
と言うでしょうけれど、
ちょっと難解なんですよね。
まあ、『万延元年の…』も
大江さん独特の文体は
難解だけど、慣れちゃいますよ。
 
ニ冊目は、春の芥川賞に輝いた
市川沙央さんの『ハンチバック』。
市川さんは重度障害に苦しみながら
とにかく作家になることが
悲願だった夢を見事に叶えました。
会見では、健常者の
無知さ無理解さに刺激的な
言葉をいくつも浴びせてくれた、
その言葉たちに私は毎回、
唸らされていました。

今年は、作曲家の坂本龍一が
亡くなりました。
当初は坂本龍一が書いた
『音楽は自由にする』とか
『ぼくはあと何回、満月を見る
だろう』が本屋さんでしっかり
並んていましたが、
案外、坂本龍一は文才は
並だったんですよね。
あ、亡くなった人の悪口は 
言っちゃいけませんね。
失礼しました。

でも、坂本龍一はそのお父さんが
スーパー編集者だったんですね。
まさにタイトル通り、
伝説の編集者だったんです。
三島由紀夫の『仮面の告白』の
編集担当だったのが
その坂本一亀さんで、
他にも、高橋和巳の『悲の器』も
坂本一亀さんが担当でした。

こうした文学の傑作が
どのような叱咤激励の中で
生まれていったか、
その熱血ぶりがよく分かる本です。

さて、
では4冊目は何かしら?
村上春樹の長編が刊行されたことも
今後まだ村上春樹があと何回、
長編を描いていけるか考えると
なかなか貴重な1年でしたが、
まあ、それはセレクトには
入れないでもいいでしょう。

今年は、
遠藤周作が生誕100年だったり、
司馬遼太郎も生誕100年だったり、
そんな大作家もそんなにオールドな
存在になっていたんだな、
そんな作家ばかり読んでると
ますます時代から置いてかれる?
という不安が強くなりました。

それでも、やはり
司馬さんや遠藤さんは、
何度読んでも面白い。

それで、最近ふと気づいたんです。
『竜馬がゆく』は
週刊少年ジャンプだ、と(笑)。

いつもは逆境にいて、
つねに大事な友人に助けられ、
もちろん自分自身は努力して、
最終的には勝利する坂本竜馬。
鼻垂れの弱むし小僧の竜馬は、
剣道に精進して、
江戸では剣の名手となり、
高杉晋作と仲良しになるまで
登りつめていく。
そうした《友情、努力、勝利》が
何度も何度も繰り返される。
本当に少年ジャンプみたい。

やはり売れる作品というのは、
小説も漫画も共通してるらしい。
司馬遼太郎は苦笑するだろうか。
4冊目は生誕100年となった
司馬遼太郎『竜馬がゆく』に。

さて、最後の5冊めはどうしよう?
あ、またまた生誕つながりですが、
今年2023年は、
ロシアのドストエフスキーが
生誕200年でした。 

ドストエフスキーなら、
何がいいでしょうか?
やはり、まだまだ、
人間の愚かさや正義については
彼ほど考え尽くした人もいないはず。
ならば、やはり『罪と罰』や
『カラマーゾフの兄弟』ですね?

現代人は、200年たっても、
またドストエフスキーが示した
テーマについて、
ほとんど進歩してないんだなあ。
というか、ドストエフスキーは
進歩なんてそう簡単には出来ない
深い深い問題に
取り組んでいたのかあ、と、
その思想的な射程距離の長さに
改めてビックリですね。

という訳で、
2023年を象徴する5冊は、
『万延元年のフットボール』
『ハンチバック』
『伝説の編集者 坂本一亀』
『竜馬がゆく』
『罪と罰』
『カラマーゾフの兄弟』
この5冊ということで、
いかがでしょうか。
あ、6冊になってる(笑)。

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