【ブックセレクト】死について考えさせてくれる本は?
相変わらず今日もやります、
妄想ブックセレクト。
今回は「生と死」について考えさせられる
本が読みたい、と一人の中年男性から
依頼があったという仮定です。
死に関する本と言われて
真っ先に思い浮かぶのは、
写真家・藤原新也『メメント・モリ』。
ラテン語で「死を想う」という言葉で、
ペストが蔓延した中世に
ヨーロッパで普及したんだかとか。
たしか、ミスチルの歌詞でも
桜井さんがこの本のファンで
「花」という歌の歌詞に
「メメントモリ」という言葉が。
この本の中身は本当に凄い。
強い刺激がダメな方はページを
開かない方がいいかもしれない。
藤原新也はインドやチベットを
旅してまわった人で、
死について生について
色々と考えさせられる小さな写真集。
写真一枚一枚にインパクトのある文章が
載せられていてカッコイイ。
インドの河原で人間の遺体の足を
犬が食いちぎってる写真には
「人間は犬に食われるほど自由だ」
というコピーをつけていた。
文字を味わう。写真を味わう。
二度おいしい本な訳です。
でも、観る人一人一人が
自分でアオリコピーをつけて、
楽しむのもいいですよね。
朝日新聞出版、1650円。
死について…どんな本があるかな?
ええと、ええと、あれ?
文学って案外、苦しい生は
たっぷり描かれてきたけど、
死について正面からは
意外とありそうでないのかな?
実用書では
『死とは何か』がすぐ浮かびますね。
去年ベストセラーになりました。
イェール大学の人気講義を
書籍にした分厚い本は
読んだ方が多そうだから、
セレクトからは外します。
死といっても、自分の死と
大切な人の死は随分ちがいますね。
家族や恋人の喪失は自分の死より
大きいかもしれません。
家族の死についてといわれて、
すぐに思いだすのは、宮沢賢治の詩
「永訣の朝」と「無声慟哭」。
愛する妹を亡くした時に詠んだ
『永訣の朝』には、こんな
リズミカルな言葉が何度もでてくる。
「あめゆじゆとてちてけんじや」
一度読んだら頭から消えなくなりません?
あ、ところで、意味は何だろう?
賢治は岩手の真っ白い雪の畑の
まんなかで、この歌を絶叫してたのか?
空恐ろしいパンクも感じる
「永訣の朝」は『宮沢賢治詩集』に収録。
新潮文庫、605円です。
最近のラノベ世界では、
生き返った人や死神が主人公に
なって人生の素晴らしさを描く
コメディタッチの小説がいっぱい。
でも、そうした作品は死より
生に関する感情が描かれている。
なかなか、死にまつわる本て
あれ?あれ?見当たらないなあ。
本木さんが主演した映画
『おくりびと』の発想の素になった
『納棺夫日記』は、
遺体のエンバーミング術や
遺体のケアから始まり、
お葬式の執り行いなど、
葬儀屋の仕事を描いた日記。
文春文庫、550円。
それを読むとなぜか、暗く気高い死を
思い浮かべてしまうのは、遠藤周作の
『深い河』。講談社文庫、792円。
心暗く悩める人々が日本から
愛や癒しを求め、インドの聖なる川・
ガンジスに向かい、
一体、何に出会うのか?
思うほど暗くもなく何度も読める
でも長編といえば長編の傑作。
読後感はじんわりとあったかい。
あれ?そういえば、
キリスト教作家の遠藤周作が
晩年に描いた傑作『深い河』では、
インド仏教の力が底に流れている…。
死の前に、仏教もキリスト教も
違いはなくなるのかもしれない。
そんな遠藤さんが書いた
死にまつわるエッセイ集があります。
小説はしんどいかな?という方も
読みやすい遠藤エッセイ。オススメです。
『死について考える』
光文社文庫、550円。
今回のブックセレクトはこんな感じで
いかがでしょうか?
『メメント・モリ』藤原新也
『納棺夫日記』青木新門
「永訣の朝」『宮沢賢治詩集」
『深い河』遠藤周作
『死について考える』遠藤周作
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